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「iD」を中小規模店舗にも ドコモとカシオが合弁会社

» 2007年07月03日 18時18分 公開
[ITmedia]
photo カシオの樫尾常務(左)、合弁会社の社長に就任する尾平氏、ドコモの夏野氏。カシオ製端末のドコモ供給については「当面そういう話はない」(夏野氏)

 NTTドコモとカシオ計算機は7月3日、中小規模の店舗運営者向けに、携帯電話クレジットサービス「iD」とネット対応電子レジを組み合わせた支援サービスを展開する合弁会社を設立すると発表した。クレジット決済を代行処理し、売り上げ情報などはネット経由で集計し、オーナーに提供する。大規模店や大手チェーンが導入しているPOS(販売時点情報管理)レジと比べ、初期投資・運用コストが大幅に少なくて済むのが特徴だ。

 iDの普及を進めるドコモと、スタンドアローン型電子レジ国内最大手のカシオがリソースを持ち寄り、国内小売約300万店の3分の2を占める中小規模店舗に電子クレジット決済を普及させるのが狙い。NTTドコモ執行役員の夏野剛マルチメディアサービス部長は「流通業の本格的なIT革命に先べんをつける」と意気込んでいる。

 新会社「CXDネクスト」は9日に設立。資本金・資本準備金の合計は15億円で、カシオが60%、ドコモが40%を出資する。社長にはカシオの尾平泰一・開発本部システム統括部第一開発部事業開発室長が就任する。

 新会社のターゲットは、主に3〜5店舗を運営する中小規模の小売り業者や飲食店運営者など。カシオが販売するネット対応電子レジと組み合わせ、(1)iDと磁気クレジットカードを使った支払いの売り上げ処理代行などの電子決済関連サービスと、(2)レジの売り上げデータを約30分ごとに自動集計し、Web上で帳票やグラフを表示したり、携帯電話にメールで送信する店舗支援サービス──を展開する。

photo カシオのネット対応レジは、売り上げ情報などを約30分で集計し、Webで表示。「バッチ処理が主流のPOSよりも早い」

 カシオが8月1日に発売するネット対応レジ「TE-2500/TK-2500」は、実売10万円以下と単機能レジ並みの価格帯では業界で初めてネットに直接つなげる機能を備えた。VPNを内蔵して通信を安全に行え、電子決済端末「KT-10」と組み合わせることで、レジ作業を効率化できるとしている。

 料金などは「企画中」として明らかにしていないが、「初期投資はPOS導入と比べ5分の1から10分の1に抑えられるのでは。5年間運用してもPOSの3分の1から5分の1で十分運用できるようにする」(新会社の社長に就任する尾平氏)としている。

電子決済が次のフェーズに移るきっかけに──夏野氏

 カシオによると、国内の物販や飲食店舗約300万店のうち、大手チェーン、中小規模店、個人商店はそれぞれ約100万店舗。「決済手段が多様化し、店舗はIT化を必要としているが、POSを導入ほどではない店舗が大半」(カシオの樫尾彰常務)。POSレジは1台50万円程度する上、専用サーバなどを構築・維持する必要もあり、中小規模店舗ではコスト負担が難しいのが実情という。

 ドコモのiDはコンビニのローソンなどが導入。5月末時点で会員数は約294万人、決済端末は約16万台になり、決済件数は「月次で毎月3割増」(夏野氏)と利用が伸びている。今月には日本マクドナルドホールディングスと合弁会社を設立し、全国の店舗がiDに順次対応する予定だ(関連記事参照)

photo ネット対応レジと電子決済端末

 普及の加速には中小規模店舗への導入がカギになると見て、非POSレジ市場で約4割(8万台)のシェアを持つカシオと組み、店舗運営支援などの付加価値とセットにしてiDを導入してもらう作戦だ。夏野氏は「新会社は、電子決済が次のフェーズにつながるきっかけになる。大手ではない小売店のプラットフォームになっていく」と話す。

 カシオの樫尾常務は「今後業界が変化していっても、どれがメジャーになっていくのかを判断した」とドコモのiDと組んだ理由を説明。Edyなどプリペイド型電子マネーも対応する可能性はあるとした。おサイフケータイによる電子カード「トルカ」を活用したポイントサービスといったCRM機能の提供も検討する。

 ネット対応レジは年間2万台の生産を計画。新会社の業績目標などは明らかにしていないが、社長に就任する尾平氏は「センターの設備投資などで初年度黒字は難しいが、2年目以降は黒字を目指したい」とした。

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