量子コンピュータに近づく「原子のスクエアダンス」
米国標準技術局(NIST)は7月25日、量子コンピュータ実現に向けた大きな前進を発表した。
同局は、レーザー光線の格子の中で数千個の原子がペアを作って同時に「スピン」を交換する状態を作り出すことに成功した。スクエアダンスでパートナーと位置を交換するように、原子が繰り返しスピン状態を交換する動きが10ミリ秒続いたという。このスピンの交換を、いつか量子コンピュータの論理演算に利用できるかもしれないと同局は述べている。
この原子のダンスは、原子がペアになって(上向きあるいは下向きの)スピン状態を交換するスワップ演算に欠かせないという。上向きスピンを「1」、下向きスピンを「0」とすると、従来のコンピュータビットは1か0のどちらかの状態しか取れないが、量子ビットは両方の状態を同時に保持することもできる。この状態で、スピン交換は原子のペアの「もつれ」――原子同士が物理的には離れていても、その特性がリンクする現象――を生じさせる。量子もつれは、量子コンピュータの鍵になる現象とされている。
NISTはボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC:すべての原子が同じ量子状態になる特別な状態)した約6万個のラジウム原子で実験を行った。赤外線で3次元の格子を作り、格子のセルに1つずつ原子を配置した。1組の原子を1(上向きスピン)と0(下向きスピン)にすると、2個の原子は2つのセルを結合させて同じセルに入り、スピン状態を交換した。2個の同じ原子が同じ物理的位置に入れられると対称の状態になるため、2個の原子は1と0の状態の間で揺れ動く。原子はもつれたりほどけたりして、この「半スワップ」の状態ではスピン状態は不確定だという。
NISTは、現在の設定では同じスピン交換を並行してすべての原子ペアで行っているため、任意のコンピュータアーキテクチャーに直接拡大できるわけではないとしている。格子内の任意のペアを操作する方法を開発中という。さらに、原子を最初に格子内に完全に配置できるわけではないため、すべての原子ペアが交換プロセスに参加するわけではなく、交換が起きる確率は推定65%以上だったと同局は説明している。
NISTの研究チームは引き続き、各ステップの信頼性向上と、原子を相互作用後に分離して論理演算を完了させる方法に取り組むという。この実験は7月26日号のNature誌に掲載される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
豪雨被害の千葉で「通れた道マップ」トヨタが公開 直近3時間の通行実績が分かる
-
2
河川監視のライブカメラ水没か――千葉豪雨、村田川の映像が水中に 「こんなの初めて見た」
-
3
サービス終了した「Link!Like!ラブライブ!」開発元が破産 負債103億円超 東京商工リサーチ
-
4
悪酔いにチェイサーは効果なし? 日本酒4合+水1Lを飲ませ二日酔い調査 大分大などが研究
-
5
千葉の「通れた道」、JARTIC地図で確認可能に トヨタやホンダなど5社のデータを集約
-
6
千葉の豪雨、変電所の装置も水に浸かる……東電PG、現場写真を公開
-
7
熊本「通れた道」マップ、トヨタが公開 ホンダも「通行実績情報マップ」
-
8
千葉県の豪雨から一夜 2万軒超で停電続く 千葉市では2260人が避難
-
9
東京ガス子会社、社員が飲酒後にPCを紛失 個人情報約2万件を保存
-
10
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR