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» 2007年07月26日 10時53分 UPDATE

量子コンピュータに近づく「原子のスクエアダンス」

いつか量子コンピュータの論理演算に利用できるかもしれない「原子のダンス」を米国標準技術局が実現した。

[ITmedia]

 米国標準技術局(NIST)は7月25日、量子コンピュータ実現に向けた大きな前進を発表した。

 同局は、レーザー光線の格子の中で数千個の原子がペアを作って同時に「スピン」を交換する状態を作り出すことに成功した。スクエアダンスでパートナーと位置を交換するように、原子が繰り返しスピン状態を交換する動きが10ミリ秒続いたという。このスピンの交換を、いつか量子コンピュータの論理演算に利用できるかもしれないと同局は述べている。

 この原子のダンスは、原子がペアになって(上向きあるいは下向きの)スピン状態を交換するスワップ演算に欠かせないという。上向きスピンを「1」、下向きスピンを「0」とすると、従来のコンピュータビットは1か0のどちらかの状態しか取れないが、量子ビットは両方の状態を同時に保持することもできる。この状態で、スピン交換は原子のペアの「もつれ」――原子同士が物理的には離れていても、その特性がリンクする現象――を生じさせる。量子もつれは、量子コンピュータの鍵になる現象とされている。

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 NISTはボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC:すべての原子が同じ量子状態になる特別な状態)した約6万個のラジウム原子で実験を行った。赤外線で3次元の格子を作り、格子のセルに1つずつ原子を配置した。1組の原子を1(上向きスピン)と0(下向きスピン)にすると、2個の原子は2つのセルを結合させて同じセルに入り、スピン状態を交換した。2個の同じ原子が同じ物理的位置に入れられると対称の状態になるため、2個の原子は1と0の状態の間で揺れ動く。原子はもつれたりほどけたりして、この「半スワップ」の状態ではスピン状態は不確定だという。

 NISTは、現在の設定では同じスピン交換を並行してすべての原子ペアで行っているため、任意のコンピュータアーキテクチャーに直接拡大できるわけではないとしている。格子内の任意のペアを操作する方法を開発中という。さらに、原子を最初に格子内に完全に配置できるわけではないため、すべての原子ペアが交換プロセスに参加するわけではなく、交換が起きる確率は推定65%以上だったと同局は説明している。

 NISTの研究チームは引き続き、各ステップの信頼性向上と、原子を相互作用後に分離して論理演算を完了させる方法に取り組むという。この実験は7月26日号のNature誌に掲載される。

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