「東京タワーは地上デジタルテレビの受信環境を十分整えられる」――東京タワーを運営する日本電波塔は9月21日、2011年の地上デジタル放送完全移行後も、東京タワーをテレビ放送の電波塔として継続利用してもらえるよう、在京キー局5社とNHKに対して文書で要望したと発表した。
電波の到達範囲を広げるため、デジタルアンテナの取り付け位置を今よりも80〜100メートル高くするほか、放送局向けの新ビルを建設。費用は同社が全額負担した上で、賃料の値上げも行わないといった条件を提示し、各局の理解を求めていく。
高さ約333メートルの東京タワーは、「周辺のビルが電波を遮へいする」「耐震性が低い」などといった問題が指摘されてきた。在京キー局5社とNHKで構成する「在京6社新タワー推進プロジェクト」は、2011年のアナログ地上波の停波以降、墨田区に建設を予定している高さ約610メートルの「第2東京タワー」から地上デジタル放送波を送出する方向。昨年末には第2タワーのデザインも発表した(関連記事参照)。
だが「東京タワーは完全デジタル時代にも十分適合する能力がある」と日本電波塔の前田伸社長は言う。高さは現状でも十分としながらも、ビル陰などにも確実に電波を届けるため、アナログ放送終了後1年以内に、デジタルアンテナの取り付け位置を今よりも高くする計画だ。
現在デジタルアンテナは、高さ260〜280メートル部分に取り付けられている。アナログ停波後は、タワー先端部分のアナログアンテナを撤去してデジタルアンテナを取り付け直し、今より80メートル高い位置からデジタル波を送出できるようにする。さらに20メートル高くする案もあり、その場合はタワーの高さも約360メートルに伸びる。工事はアナログ停波後1年弱で完了するという。
耐震性については「タワーのある港区芝公園地区は、都内で最も地震危険度が低い上、タワーの構造設計の信頼性は専門家が証明している」(前田社長)ため問題ないという。
東京タワーを継続利用できれば、完全デジタル化時に視聴者がアンテナの方向を変える必要もなく「視聴者メリットもある」(前田社長)としている。
完全デジタル化以降、放送事業者専用の新送信所ビルも建設する計画。1局当たりの床面積は、現在の49平方メートルから215平方メートルと4倍になる上、セキュリティや耐震性も高めたビルにするという。
費用は、アンテナの高さを上げるために約40億円、新ビル建設に約35億円と計約75億円を見積もるが、日本電波塔が全額負担する。放送局が支払う賃料も「現行価格以下にする」という。
東京タワーの地上デジタル設備は、33億円を投じて02年までに設置完了。同社は04年から、東京タワーの継続利用を求めて各局に説明してきたという。アナログアンテナの取り付け位置を高くすることや、放送事業者用の新送信所ビル建設については、当時から提案してきた。「各局にはご理解いただいていると思う」(前田社長)
今年に入って新たに、アンテナ上伸・ビル建設費用の全額負担や、賃貸を値上げしない、といった費用負担面での条件を提示。各局の理解を得ようと努力している。
「東京タワーを継続利用すれば放送局はコストを抑えられる上、視聴者もアンテナ位置を変える必要がないなどメリットがある。当社にできることを提案していきたい」――前田社長は継続利用の可能性に望みを託す
ただ継続利用ができなくなっても、同社の健全経営は可能という。現在、東京タワーの収入は、観光収入が5割以上で、残りが放送局やテナントによる賃貸収入。「最近は観光事業も好調。放送局からの賃料収入がなくなっても、万全を期して経営していける」(前田社長)
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