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カラオケメーカー、ネットに活路 持ち歌SNSや「ガンダム採点」

» 2007年10月01日 11時04分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 カラオケ人口は右肩下がりの状況だ(カラオケ白書 2007より)

 そういえば最近、カラオケ行ってないな――そんな人は多いかもしれない。カラオケ人口は1994年以来減少が続き、2006年は4720万人とピーク時より約3割減った。

 「市場は飽和し、カラオケ機器はシェアの食い合いになっている」と、「JOYSOUND」で知られるカラオケ機器メーカー、エクシングの伊藤智也さんは言う。ピーク時の12社あった機器メーカーは、3社まで減少。楽曲数や音質を競う“スペック競争”も限界に来ている。

 各メーカーが人気復活の鍵を託すのは、機器のネット機能を活用した新たな付加価値サービスだ。

通信カラオケの“上り回線”活用

画像 DAMステーションはカメラも内蔵。その場で顔写真を撮って採点用プロフィール画像にしたり、紙にプリントしてプリクラのように楽しめる。USBメモリを挿して自分が歌ったデータを保存し、持ち帰ることも可能だ

 通信カラオケは、2003年ごろからブロードバンド化。大容量の映像などを配信できるようになったのに加え、空いている上り回線を利用し、ある程度の容量のデータを、カラオケルームからセンターサーバに送信できるようになった。

 第一興商が2003年に発売した「DAMステーション」は、上り回線をフルに使った高機能端末だ。店内のカラオケ機と無線LANで接続。楽曲検索・リクエストできる通常の「デンモク」(曲目検索機)としての機能に加え、歌った曲リストをサーバに送信してPCや携帯電話で閲覧したり、自分の歌をまるごと保存して着うたにしたり、帰宅後PCでダウンロードしたり――といったことも可能。それぞれ有料の機能だが、FeliCa機能を備えた会員カードやおサイフケータイでログインし、Edyで決済できる。

画像 歌唱戦士ガンダム

 「DAMステーションの多様な機能をもっと多くの人に知ってほしい」――10月1日に始まる「ガンダムSEED」をモチーフにした通信採点サービス「歌唱戦士ガンダム」(関連記事参照)は、DAMステーションの新機能。カラオケファンでない人にもカラオケに振り向いてもらいたいと開発された。

 DAMステーションで「歌唱戦士ガンダム」を選び、好みのモビルスーツと楽曲を選択すると、モビルスーツごとに異なる“出撃”ムービーを再生。歌っている最中はランキングの上下に応じてハロが画面を飛び回る。歌が終わると「すごいじゃない、キミ! また聴かせて欲しいな」「貴様それでも赤服かっ!こんな点数でいい気になるとは何事だーっ!」など名台詞をアレンジしたオリジナル音声で評価。「歌唱戦士S」など称号がもらえ、ランキングはPCや携帯電話からも確認できる。

画像 採点結果の例

 アニメはカラオケで歌われやすいジャンル。中でも親子2世代に親しまれ、楽曲数も多いガンダムを選んだ。定番のファーストではなくSEEDにしたのは、クールごとに主題歌を変えていたSEEDは曲数が多く、女性にも人気があるためだ。

 「DVDを全部見て、関連書籍も読んで人気の秘密を研究した」(同社の石倉知幸さん)結果、声優とキャラクターにスポットを当てたサービスが最も人気が出そうと判断。DAMの人気機能「ランキングバトル」と組み合わせ、キャラが声優のオリジナルボイスで採点してくれるサービスにした。

 音声は全てこのためだけに収録した“レアもの”。ファンの間で口コミで広まるのでは――と期待している。価格は1曲当たり100円、6曲500円。「年間1000億円といわれるガンダム市場で、数%でもシェアを取れれば大きい」(石倉さん)

予想外の大人気、カラオケSNS「うたスキ」

画像 うたスキ

 「こんなに利用してもらえるとは」――エクシングの伊藤さんは、自らが開発に参加した「うたスキ」の人気に驚いたという。うたスキは、自分の持ち歌を登録して他ユーザーと共有できるできるSNS。店舗のJOYSOUND端末と連動し、歌った履歴や採点時の点数も記録される。

 「カラオケに行くハードルを下げたかった」と伊藤さんは言う。「曲数が増えた最近のカラオケは、たいていの曲はそろっているはずなのに『歌いたい曲がなかなか見つからない』という声をよく聞く。思いついた時に歌いたい歌を登録できたり、他人の持ち歌が見られるサービスがあれば、カラオケに行って1曲目を選ぶのが楽になるだろう」

 同社は端末をカラオケ店に卸すBtoBビジネス専業で、エンドユーザー向けは初めてで「ニーズがあるか不安だった」というが、ふたを開けてみると予想をはるかに上回る人気。昨年11月のスタート以来、登録ユーザー数は約70万人まで増え、対応の新機種の販売数は、1年弱で1万台を突破。これまでの最速記録を更新したという。

 SNSを通して、カラオケ店経由ではないユーザーの生の声にも触れられるのも、同社にとっては新鮮な経験だ。「今後もユーザー目線でバージョンアップを続けていきたい。カラオケを離れた人が、カラオケに行く機会を少しでも増やしてくれれば」

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