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カリフォルニア州火災で緊急ダイヤルが活躍

» 2007年10月26日 15時08分 公開
[Chris Preimesberger,eWEEK]
eWEEK

 過去数日で50万人以上が避難した米カリフォルニア州南部の山火事は、緊急通信サービスの効果が実証される場ともなった。

 山火事の延焼ルート上の住民は、刻々と変わる状況の把握を、VoIPや携帯電話といった日常の通信サービスに頼ってきた。その結果、自宅や職場の緊急避難勧告を聞き逃した人もいた。

 サンディエゴ郡では、緊急電話システムに接続した比較的新しいサーバベースソフトを利用して、多数の人に安全に関する情報を知らせ、大きな成功を収めている。

 同郡では大きな被害を出した2004年のカリフォルニア州南部の山火事を受け、2005年にシステムを購入して保安官事務所に導入。50万人以上を対象に状況を告知し、避難勧告を出している。このシステムでは被害が予想される地域の特定数の住民を対象に警報を発令でき、コントロールは1カ所(この場合は保安官事務所)でできる。

 この自動電話システムは米PlantCMLが開発したもので、「リバース911」(911は米国の緊急通報番号)として知られる。ものの数秒で特定地域内の何万もの固定電話に電話をかけ、当局からの録音メッセージを発信できる。番号が電話帳に掲載されていてもいなくても、すべての固定電話に電話がかかる仕組みになっている。

 電話が話し中だった場合、誰か(留守番電話も含め)が応答するまでかけ続ける。

 PlantCML共同創業者のティム・フラーCEOは「このシステムで電話をかけられる件数に制限はない。対応する電話システムの規模次第だ。サーバに導入するかホスティング型にするかは導入する顧客が選択でき、使い方も非常に簡単だ」とeWEEKに語った。

 PlantCMLは約20年前、911に外からかかってくる電話を受信するアナログ電話センター向けシステム開発からスタートした。過去1年半でDialLogicとSigma Communicationsの2社を買収し、これが今回のリバース911システムに役に立った。フラー氏によると、メインエンジンはSigmaで開発されたものだという。

 「911受信システムは当社のレガシーシステムであり、長年の実績に誇りを持っている。電話を発信するリバース911システムは、まさに今、真価を発揮している」とフラー氏は胸を張る。

 自治体広報によれば、保安官事務所は30万ドル掛けてこのシステムを導入した。

 ただし限界もある。システムは従来型の固定電話対応には優れているが、携帯電話にはかけられない。頻繁に変わる携帯電話番号のデータベースにアクセスできないためだ。

 さらに10月24日には、VoIP電話の利用者、特にVonageの加入者には警報が届かなかったと報じられた。

 Vonageには245万人が加入しており、VoIPサービスでは米国最大手。

 サンディエゴ郡に住むスティーブ・コフスキーさんは、カリフォルニア州ビスタ地区の自宅から避難し、被災地から離れた牧場で家族とペット、馬とともに寝泊りしていた。

 コフスキーさんはこのほどeWEEKのエリック・ランドキスト編集長あてに次のようなメールを寄せた。「VoIP加入者への注意喚起:報道によれば、Vonage加入者は避難勧告の電話が受信できなかった。だがテレビ番組サービス業者が提供しているCATVベースの電話システムは受信できた。電話会社の確認を。電話サービスの選択が生死を分けるかもしれない」

 コフスキーさんの報告は真実であることが証明された。自宅でVonageを使っているキャシー・ゴメスさんは10月24日、サンディエゴ郡の避難所で地元テレビの取材に応え、地元当局から避難勧告の電話は受けていないと話した。

 「近所の人が荷物をまとめて出ていくのを見たので、自分も一緒に行った方がいいと思った」とゴメスさん。

 サンディエゴ警察もeWEEKの取材に対し、携帯電話しか持っていない人と、一部のVoIPサービス利用者が問題だったと認めている。

 これについて数人のVonage加入者が、独立サイトVonage-forum.comへの投稿で不満をつづったが、こうした投稿の多くはその日のうちに削除された。

 Vonage広報のチャールズ・サナー氏はeWEEKに対し、「従来型のアナログ固定電話、つまり旧式のAT&Tシステムに対応した設計になっている従来型の緊急通報システム」に関し、VoIP事業者各社が問題を抱えていることは、間違いなく認識していると語った。

 「こうしたシステム(リバース911を含む)は、携帯電話やVoIPのような『移動型』システムを想定していない。使っているのは古い固定電話のデータベースだ」とサナー氏は言い、次のように訴えた。

 「当社は以前から州や地元自治体と協力して、すべての人の条件を平等にするよう努力してきた。緊急システムの担当者は、世の中が携帯電話やVoIPといったサービスの方向に動いており、こうした番号も旧式の固定電話番号とともに網羅すべきだと認識する必要がある」

 これとは別に、Verizonは10月24日のプレスリリースで、山火事の被災者が避難先からも連絡を取り合えるよう、自動転送機能が付いた携帯電話による無料通話サービスを提供すると発表した。

 Verizon Foundationは山火事の被災者支援のため、米赤十字に6万ドルを寄付すると発表。この金額はロサンゼルス、サンバーナーディノ、サンディエゴ、リバーサイド郡の赤十字支部に均等に分配される。

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