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「ホワイトプラン」でも利益が出る理由──ソフトバンク中間期、携帯事業が好調

» 2007年11月06日 22時59分 公開
[ITmedia]
ソフトバンクの株価チャートソフトバンクの株価チャート(1年:縦軸の単位は円)

 ソフトバンクが11月6日発表した2007年9月中間期の連結決算で、移動体通信(携帯電話)事業の売上高・営業利益とも大幅に増加した。5カ月連続で純増シェアトップを維持し、加入者は1705万件と前年同期から170万件増えるなど、好調が続く。

 携帯事業の売上高は8145億円(前年同期比39.4%増)、営業利益は942億円(66.4%増)。ソフトバンクモバイルの業績が期初から反映されているのに加え、端末販売台数も大幅に増加した。

photo 「携帯電話事業を買収して良かったなと改めて思う」

 「MNPでソフトバンクは純減になるだろうという予想があり、われわれもその予想が当たるのでは、と思うユーザーアンケート結果もあった」と孫社長は振り返るが、4〜9月期の純増数は114万件となり、純増シェアは9月まで5カ月連続でトップになるなど、好調が続く。

 その原動力になっているのが、月額980円という「ホワイトプラン」。だが「ドコモやauくらいのシェアがあったら導入したかというと、私も疑問。ナンバーワンの会社がとるべき戦略ではない」と率直に認める。「未来永劫続けるかは検討が必要」というが、少なくとも現在の加入者に対しては「今後も思う存分使ってほしい」と、プランの存続を保証する。

 孫社長によると、格安プランでも利益が出るのは、(1)加入者全体に占めるソフトバンクのシェアが小さい分、他社ユーザーあてに電話をかける場合が多くなり、その場合は有料になる上、(2)最近は新規の6割が「Wホワイト」だが、こうしたユーザーは通話時間が多い上、他社着信のたびに接続料も入る。こうしたユーザーはパケット使用量も多く、ARPUが著しく高い──という顧客層が“お得意様”として顧客ミックス上、貢献している面もある。

 また割賦販売の導入で「0円端末」を次々に乗り換える──その都度インセンティブなどのコストが発生する──ユーザーが減って「健全化」した上、過去3%超あった解約率も1.05%(7〜9月期)にまで抑えるなど、「経営効率が改善した」点も格安プランを支える。

「と金」プログラム

 2台目としてトランシーバーのように使うユーザーの増加が負担になるのでは──という指摘に対しても「確かに社内でもそうしたユーザーを悪者扱いする空気があったが、よく調べると一番おいしいお客だということが分かった」という。

 孫社長によると、こうしたユーザーは「試しに使ってみよう」とソフトバンクに半信半疑で加入し、2〜3カ月、2台の端末を持ち歩く。しかし次第に2台の併用が面倒になり、どちらかに一本化しようと検討を始める。そうなると「高い方をキープするより、安く話せる方をポケットに残そう」となり、数カ月使って不安も解消したソフトバンクを選ぶ、という傾向があるのだという。

 これをソフトバンクモバイル社内用語で「と金プログラム」と呼んでいるという。「将棋の歩は金に化ける」(成金)に引っかけ、「1台契約してもらうと、これが『金』に化ける」として現在は歓迎。「まず試してメリットを感じてもらい、その後一本化してもらえれば。おおらかな気持ちで経営しております」

営業CFが「4億円」の背景

 同期の全体の売上高は1兆3647億円(21.8%増)、営業利益は1677億円(49.0%増)、経常利益は1111億円(77.3%増)、純利益は464億円(221.8%増)。期初から携帯電話事業の業績が反映されている分も売上高・利益を押し上げた。

 ただ、金の実際の流れをよく反映するとされる連結キャッシュフロー(CF)を見ると、営業活動によるCF(営業CF)が4億円の黒字にとどまっており、損益計算書ベースの利益と比べて極端に少ない。

photo 決算発表会資料より

 これはソフトバンクモバイルが導入した携帯端末の割賦販売が影響している。割賦債権を流動化した部分は売掛金として計上するなどしているため、営業CFでは割賦債権の増加分として1730億円を控除しているのが大きい。

 一方で割賦債権の流動化による収入1530億円は借入金として計上した結果、財務活動によるCF(財務CF)は3035億円の黒字になっている。

 孫社長は「財務CFの1530億円を営業CFとして見たほうが実質に近いが、保守的な観点から処理した」と説明する。ファイナンス技術を駆使するソフトバンクの経営手法が、複雑な決算報告からもうかがえる。

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