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JotSpot買収から1年余、GoogleのWiki計画の行方は?

» 2007年11月14日 15時55分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 米GoogleのWikiソフトは、Google Appsの連携基盤の役割を果たし、DocsやSpreadsheetsなど同社の人気アプリケーションを相互接続する機能を提供するものになりそうだ。

 GoogleがWikiソフトウェアベンダーのJotSpotを2006年10月に買収してから1年余りが経過した今、一部の業界専門家はそうにらんでいる。

 企業向けWikiソフトウェアベンダーSocialtextの共同創業者で社長のロス・メイフィールド氏は、Googleはホスティング型アプリケーション市場のうち、小規模企業や個人ユーザーが対象のローエンド分野でコモディティー化を推進することになりそうだが、Socialtextが手掛けている中堅・大規模企業の市場は必ずしもターゲットにしないだろうと語った。

 「GoogleはJotSpot買収で、検索事業の実績もある2人の優れた経営者以外にも資産を獲得している。それを生かして、いずれはGoogle Wikiを提供するに違いない」とメイフィールド氏はeWEEKの取材に対し、皮肉を込めて語った。

 TeamPage Wikiを提供するTraction Softwareのマーケティング担当副社長ジョーダン・フランク氏は、GoogleのWikiソフトはホスティング型アプリケーションのGoogle Appsに統合されるだろうとの見通しを示した。

 こうしたアプローチは、消費者や企業向けの新しいコラボレーションレイヤーの追加により、Google Appsの魅力を大いに高めることになりそうだ。だが、JotSpotのコードを各種のGoogle Appsに対応させるには、アーキテクチャー的に厄介な作業が必要になると考えられる。GoogleのWikiソフトがまだ登場していないのはそのためだろう。

 フランク氏は、Googleアカウント所有者は膨大であり、消費者や企業ユーザーはGoogle Appsを使ってファイル共有や予定管理を簡単に行えるため、Wiki技術は、日々の情報管理にこの技術を使うことは思いもよらなかったような多くのユーザーを獲得するだろうと述べた。

 Googleはこうした観測について沈黙しているが、同社のWikiソフトとGoogle Appsの関連性を認めている。

 「Googleは、人々がオンラインでコラボレーション、共有、共同作業を行う手助けをするというJotSpotのビジョンを共有している。JotSpotのチームと技術は、Google AppsのようなGoogleの既存製品と非常にマッチしている」とGoogleの広報担当者はeWEEKに語った。

 アナリストは業界の動きに常に目を光らせているが、GoogleのWiki計画を探ることにはあまり成功していない。

 Forrester Researchのアナリスト、オリバー・ヤング氏はeWEEKの取材に対し、JotSpotについてGoogleに具体的に尋ねたところ、Wiki技術に関する大きな計画を持っているが、適切な統合を実現することに取り組んでおり、公表はまだ先だと言われたと語った。

 だが一方で、企業向けWikiをめぐる他社の発表が相次いでおり、Googleの話題のWiki製品に懐疑的な見方も出ている。

 例えば、Webコンテンツ管理ベンダーが10月29日にWikiソフトの専門企業Infostoriaを買収。Socialtextは11月5日に新CEOの就任と950万ドルの増資を発表している。Tractionは11月12日に企業向けブログおよびWikiソフトをアップグレードした。

 さらに、オープンソースWikiの専門企業MindTouchは、マッシュアップや複合型アプリケーションの作成に対応する新しいWikiホスティングサービスを近くリリースする予定だ。

 MindTouchの共同創業者アーロン・フルカーソン氏は、GoogleがJotSpotの資産を基にどのような取り組みを行うかについて見通しを明らかにしなかったが、オープンソース推進者としての立場から、プロプライエタリなWikiソリューションはあまり信頼できないと主張した。

 フルカーソン氏はeWEEKの取材に対し、最終的には、プロプライエタリなアプローチは、Googleも含め、Wikiベンダーにとって致命的なものであることが明らかになるだろうと語った。顧客はクローズドなコラボレーションシステムを使いたがらないというのが同氏の見方だ。

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