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Hotmail共同開発者の新興企業、Office競合製品をリリース

» 2007年11月27日 16時52分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 インドのバンガロールに拠点を置くInstaCollが11月21日、Microsoft OfficeやGoogle Appsの新たな競合製品として「Live Documents」をリリースした。

 InstaCollの幹部によると、Live DocumentsはMicrosoft Officeのワープロ、表計算、プレゼンテーションソフトウェアの完成度の高い各種の機能とGoogle Appsの各種のコラボレーションツールを1つのプラットフォームに統合したアプリケーションスイートであり、ユーザーはデスクトップからでもブラウザからでも自分の文書にアクセスできるという。

 WindowsやLinuxといったOSの種類やPCや携帯デバイスといったコンピュータデバイスの種類にかかわらず、Live Documentsでは、ユーザーはIEやFirefox、Operaなどの一般的なブラウザから文書の閲覧や編集を実行できる。

 InstaCollのスマント・ラガベンドラCEOがeWEEKの取材に応じて語ったところによると、まず同社の開発チームはMicrosoftの文書フォーマットを詳細に調べ、ブラウザフレンドリーなXML版の文書形式を開発したという。

 続いてInstaCollのプログラマーは、そうしたXML文書を処理するプログラムとして、FlashとFlexを用いたブラウザベースのアプリケーションセットを開発した。ユーザーは使い慣れたデスクトップアプリケーションと同様の方法で、ただしブラウザ内から、そうしたXML文書を扱える。

 だがLive Documentsには、Microsoft製品と真っ向から競合する可能性のある機能も備わっている。なぜなら、Live DocumentsはMicrosoft Officeのアプリケーションを「スタンドアロンの静的なソフトウェア」から「インターネットに接続されたスマートクライアント」へと転換させるためのデスクトップクライアントアプリケーションとしても利用できるからだ。

 Live DocumentsのプラグインはMicrosoft OfficeのWordやExcel、PowerPointにアスペクトレイヤを追加し、Office 2007でしか利用できない機能を提供する。例えば、Excel 2007で提供されているマクロやテーブル書式、データバーの条件付きの書式設定、あるいはPowerPoint 2007で提供されている変更点のライブプレビュー機能などだ。

 さらにLive Documentsでは、複数のユーザーが1つの文書を同時に編集できる。アクセスコントロールやセキュリティも提供され、ユーザーは特別なユーザーインタフェースを使う必要はない。

 例えば、ツールバーでは、文書にスレッドディスカッションを追加したり、その文書に加えられた改訂をライフサイクル全般にわたって閲覧したりするためのボタンが提供される。また同じ文書で作業中のユーザーがほかにもいる場合には、その旨が通知されるようになっており、ほかのユーザーが加えた変更を文書に反映するための更新ボタンが提供される。

 またLive Documentsでは、ユーザーはオフラインでも文書にアクセスでき、文書に加えられた変更はデスクトップとオンラインの双方間で自動的に同期化されるようになっている。既存のオンラインオフィスアプリケーションのほとんどは、こうした機能を備えていない。

 基本的には、Live Documentsプラグインの役割は、Google DocsやWikiといったブラウザベースのアプリケーションに搭載される各種のコラボレーション機能をMicrosoft Officeに追加することだ。

 「Live Documentsでは、ブラウザコンポーネントがデスクトップソフトウェアのプロダクティビティ機能を提供し、クライアントプラグインがデスクトップソフトウェアにコラボレーション機能を追加する」とラガベンドラ氏は説明している。

 Live Documentsはこうして新進のベンダー各社が提供するオンラインコラボレーション製品群の仲間入りを果たしたが、マーケティングの観点では、InstaCollは同ソフトウェアをMicrosoft OfficeとGoogle Appsの格好の代替選択肢として位置付けたい考えのようだ。

 Microsoftはソフトウェアとサービスの共存をうたう「Software plus Service」戦略を打ち出しているにもかかわらず、いまだOfficeアプリケーションを静的なオフラインの世界からWebの世界へと拡張していないことを批判されている。同社はOffice Live Workspaceを年内にリリースする予定だが、Googleは既にGoogle Appsでオンラインオフィス市場への参入を果たしている。ただし、Google Appsではオフラインの文書作業は行えない。

 InstaCollはMicrosoftとGoogle双方の戦略を取り入れ、Software plus Serviceならぬ「Service plus Software」戦略を推進しようということなのだろう。

 InstaCollには因縁めいた事情もある。InstaCollはいまや広く成功しているHotmail Webメールアプリケーションの共同開発者であるサビール・バティア氏が共同で創業した会社なのだ。Microsoftは1997年にHotmailを買収しており、その際の買収額は4億ドルとされている。

 InstaCollによると、既に一部の進取的な企業がLive Documentsのエンタープライズ版を社内に導入する方針を固めているという。Live Documentsのエンタープライズ版を最初に導入するのは、通信ソフトウェア企業の米Aricentになる見通し。同社の従業員数は6700人以上に上る。なお、InstaCollはプロセッサメーカーの米Intelのソフトウェアパートナープログラムのメンバーでもある。

 Live Documentsは現在、www.live-documents.comで提供されている。

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