ITmedia NEWS > ネットの話題 >

ライブドア「Fastladder」がオープンソースに 「米国で目立ちたい」最速RSSリーダー

» 2008年02月07日 15時00分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 OSS版Fastladder提供サイトは、日本語版・英語版を用意した

 ライブドアは2月7日、Web型RSSリーダー英語版「Fastladder」のソースコードを公開した。サービスのオープンソース(OSS)化は同社初。自由にコードを変更してカスタマイズ・再配布したり、自前のサーバにインストールして企業内で使ったりできる。まずは英語のまま公開したが、日本語など多言語に対応していく予定だ。

 OSS化の一番の理由は「とにかく目立ちたい」。昨年秋、米国でFastladderをプレゼンして回った際、Fastladderには“売り”が足りないと痛感。「OSS化は売りになる」と考えた。

「想定外の競合」と戦うために

画像 Fastladder

 Fastladderは、Web型RSSリーダー「livedoor Reader」の英語版で、昨年7月に公開した。1000単位のRSSを高速に処理できる能力が特徴だ。

 livedoor Readerが半年で10万ユーザー集めた(2月現在、17万ユーザー)経験から、Fastladderも同じぐらいの速度で広がると期待していた。だがユーザー数は1万弱(1月末時点)にとどまっている。

 「競合が想定と違った」と、同社のコンシューマメディア部の佐々木大輔コンシューマメディアグループマネージャーは言う。当初競合と考えていたのは、Google ReaderやBloglinesといったWeb型RSSリーダー。だが米国のIT関係者にプレゼンしてみると、クライアントソフト型リーダーと比べられてしまった。

 「『Fastladderが速くて軽い』とアピールしても『クライアントソフト型のNetNewsWireはもっと速い』と言われてしまう」(佐々木さん)――米国は日本ほど高速ネット回線が普及していないこともあり、大量のRSSを処理したい人はクライアントソフト型を利用する傾向があるという。「Web型で早い」では、アピールとして弱い。

 「高速・軽快に動く」以外の売りはないか。OSS化はその答えだった。「米国のIT関係者も、4人に3人は『OSS化すればいい』と話していた。OSS化は競合他社にはできないだろうから」(佐々木さん)

 Web型RSSリーダーは、広告と連動させたり、自社の他サービスへの誘導口にしてビジネス化している企業が多いが、OSS化でサーバインストールも可能にしてしまうと、自社サービスへの誘導が難しくなる。

 だがFastladderに今必要なのはビジネス化ではなく、Web型RSSリーダーとして存在感を打ち出し、ユーザーに振り向いてもらうこと。OSS化で失うものはない。

「米国のスーツは分かってくれる」

 「むこうのスーツにRSSリーダーについて話すと、日本のスーツに話した時のフーン具合よりも、ギラついた感じで聞いてくれる」と同社の池邉智洋CTOは言う。

 米国の「スーツ」――スーツを着て現れるベンチャーキャピタリストなどは、コードも書ける技術屋上がりが多く、技術への知識も深い。「日本でいう小飼弾さんみたいな人がたくさんいる。米国では無名のライブドアとも会ってくれ、Web型RSSリーダーの可能性を感じてくれる」(池邊CTO)

 その一方で、RSSリーダー自体が米国でもまだそれほど普及していないという印象も持った。「RSSは『始まったな』という感じも『終わったな』という感じもない」(池邊CTO)

 RSSリーダーは、まだまだ認知も利用率も低い。ヘビーユーザーに特化して開発してきたFastladder・livedoor Readerだが、RSSリーダーそのもののすそ野を広げるため、ライトユーザーにも訴求していきたいという。「戦う土俵がすごく狭かった。RSS全体を盛り上げないといけない」(佐々木さん)

企業内イントラでも使えるように

 「会社でもlivedoor Readerを使いたいが、会社からはアクセスできないから家でしか使えない」――そんな声も寄せられていたという。OSS化すれば、外部ネットが利用できない企業内イントラや個人のサーバ内でも自由に利用してもらえ、RSSリーダーのすそ野拡大にもつながる。セキュリティコントロールも自由。IDやパスワードを入力させる認証付きRSSも利用できるようになる。

 「ネットから切り離されたガラパゴスのような社内イントラでも、社内ブログでフィードを吐いていることがある。そんな企業で入れてもらえれば、フィードの便利さも分かってもらえるのでは」(同社開発部システム開発グループの上田智さん)

 ソースコードは「Google Code」で公開。MITライセンスを選んだ。GPLライセンスなどと異なり、再配布や改変の際にソースコードを開示する必要がなく、商用サービスでも扱いやすいという。Greasemonkeyを使ってlivedoor Readerの付加機能を作っているユーザーもおり、OSS化はユーザーが作った新機能をFastladderやlivedoor Readerに導入する窓口にもなると期待している。

 OSS化に当たり、サーバサイドプログラムをRuby on Railsを使って書き直し、PCにインストールできるサイズに縮めた。「バックエンドをRailsにしたのも、目立ちたいから」(上田さん)と笑うが、PerlやPHPよりも導入してもらいやすいというメリットも。ワンクリックでWindows PCにインストールできるexeファイルも用意し、導入のハードルを下げた。

 開発陣は「OSS化はとにかく目立ちたいだけ」と笑い、利用数目標などは特に想定していない。「1年で1万人ぐらい入れてくれるといいかな」(佐々木さん)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.