ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >

「Google+AOL」は「Microsoft+Yahoo!」に対抗できるか

» 2008年02月08日 18時12分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 446億ドルを掛けたMicrosoftの米Yahoo!買収が実現した場合、インターネット業界の注目は、検索最大手Googleの反応に注がれるだろう。

 この状況でGoogleがライバルMicrosoftからの挑戦を受けて立つつもりなら、AOLは最善の選択かもしれない。Googleは既に10億ドルで同社の5%を取得し、検索・広告関連の提携で素晴らしいシナジー効果を出している。

 GoogleはAOLのために200億ドルを費やすことになるが、Googleには簡単に払える額であり、Yahoo!というもっと多くの技術資産を持つ企業に対してMicrosoftが払う額の半分以下だ。

 Time Warnerは2月6日、AOLのインターネット接続事業をWebポータルおよび広告事業から切り離すと発表した。これでAOLはGoogleにとって一層魅力が増したといえるかもしれない。つまり、Googleは必要としないインターネット接続事業の買い手を探す心配をせずに済むわけだ。

 AOLが2007年9月17日、ネット広告市場での競争力強化を狙って発表した「Platform A」戦略は、Google、Yahoo!、Microsoftのプラットフォームに比べると未熟だ。

 このプラットフォームには、動画広告プラットフォームのLightningcast、第三者配信のAdvertising.com、コンテキスト広告を手掛けるQuigo Technologies、行動ターゲティング広告大手のTacoda、携帯電話広告を専門とするThird Screen Media、グローバル広告配信会社Adtechの資産が含まれる。

 Advertising.comとAdtechの広告配信技術はGoogleと重複するかもしれない。Googleが31億ドルで広告配信会社のDoubleClickを買収する計画にはゴーサインが出る見通しだ。

 しかしGoogleは、携帯電話、動画、コンテキスト、行動ターゲティング広告技術に関心を示しており、Platform Aのほかの資産は十分魅力的になる。

 そして最も重要なのは、Googleはテキストベース広告は独占しているかもしれないが、ディスプレイ広告のシェアはたった1%だということだ。comScoreの統計によると、ディスプレイ広告市場でAOLのシェアは5%。MicrosoftがYahoo!を買収した場合、25%のシェアを握ることになる。Googleにとってはすぐにでもシェアを獲得できるなら、たとえ合計で市場の6%にすぎないとしても、プラスになる。

 AOLの広告収入は過去数四半期で減り続けており、Googleの膨大な資金と技術リソースはメリットになるだろう。

 問題は――これはAOLと並んで業績不振のYahoo!にも言えることだが――AOLがGoogleの求婚を受け入れるかどうかだ。

 GoogleもAOLもこの質問に答えなかった。しかし業界の専門家は、業界再編の可能性に対し不安をのぞかせる。

 「もしMicrosoftがYahoo!を買収すれば、Google、AOLなどを巻き込んだ新たな業界再編の引き金となる公算は大きい」。オープンソースの広告配信会社OpenAdsのCEOで、元Yahoo!幹部のジェイムズ・バイルフィールド氏はeWEEKにこう語った。

 「しかし統合によって、さまざまなネットワークの中から選択する自由を欲し、OpenAdsが提供しているような柔軟性とイノベーションの道が開けることを望んでいるパブリッシャーの不安は増すばかりだ」

 そのような合併話に異議を唱えるのはバイルフィールド氏だけではないが、反対理由はほかにもある。今から20年後には、ネット広告事業は知的財産で大きな差がつくだろうと話すのは、IDCのアナリスト、カーステン・ワイデ氏。Time WarnerはAOLの魅力的な広告資産を手放さない方が賢明だと指摘する。

 「経験、技術、広告主との間で確立されたデジタル広告契約を持つAOLのような資産があれば、どんな企業でも膨大な利益を出せるだけの好位置に立てる」とワイデ氏は話している。

Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.