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AndroidとLiMo、2つのオープンソース携帯は共存できるか

» 2008年02月15日 13時04分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 スペインのバルセロナで今週開かれたMobile World Congressで、おかしなことが起きた。

 米Googleのモバイル用オープンソースOS「Android」は、半導体メーカーの米Texas Instruments(TI)ARMがこれを搭載した携帯電話の試作機を披露して大いに注目を集めた。一方、オープンソースの携帯電話OS組織LiMo Foundationは、市販準備が整った電話機15機種を披露したが、その発表は地味だった。

 Androidを支持するのはGoogle、Samsung、MotorolaなどOpen Handset Alliance(OHA)の加盟企業。そしてSamsungとMotorolaは、同様の理念を掲げるLiMoにも加盟している。OHAとLiMoは、Symbian、Microsoft、Apple製のプロプライエタリなスマートフォンOSの代替となるオープンソースOSを、コンシューマーに提供したい考えだ。

 同じような目標を持つこの2つのオープンソース組織が衝突し、互いに相手を打ち消し合うことにはならないだろうか。

 Googleにコメントを求めたが返事はもらえなかった。一方、LiMoはそうなるとは思っていないようだ。

 LiMo Foundationのエグゼクティブディレクター、モーガン・ギリス氏は2月14日、LiMoのR1プラットフォームはミドルウェアにすぎないとeWEEKに語った。この上で実行するユーザーインタフェースとアプリケーションは、携帯電話機メーカーやキャリアが好きなものを選択できる。これに対しGoogleのAndroidはミドルウェア、ユーザーインタフェース、アプリケーションの完全なOSスタックを提供するもので、「オールオアナッシング」のアプローチだとギリス氏は言う。

 Androidの強みはユーザーインタフェースにあり、LiMoのR1の中核はミドルウェアにあるのかもしれない。しかし結局のところ両プラットフォームとも、Symbian、Windows Mobileといった主要なモバイルOSの代替となるオープンソース版として、果たす役割は同じだということは、ギリス氏も認めている。

 「われわれは本当の意味で競合はしていない」とギリス氏は言い、LiMoはGoogleと協力する用意があると表明した。「LiMoの上にGoogleのユーザー体験を導入することを、もしGoogleが選べば非常にうまくいくだろうが、向こうはまだ自分たちの技術をどう導入するかを説明していない」

 一方、英調査会社Ovum Researchのアダム・リーチ氏の見方は異なる。

 「LiMoのメンバーがAndroidのサポートを口にしていたとしても、この2陣営の間には利益の衝突があると思う。確かに目標は同じだが、やり方には微妙な違いがある。両陣営とも、Windows MobileとSymbianが占める同じ場所を狙っているのだ」。リーチ氏はeWEEKにこう語った。

 米調査会社Enderle Groupのロブ・エンダール氏も同じ見方を示した上で、LiMoは一群の企業が作成した不完全なセットであり、加盟社のどこもユーザー体験を持っていないため、別のどこかが仕上げをしなければならないと指摘した。これに対しAndroidはハードウェアの調整が必要なだけの完全なものになることが想定されるという。

 電話機メーカーにはユーザー体験を完成させる能力も意思もないため不完全キットの提供は厳しいが、AndroidならSymbian OSやWindows Mobileのような成功が見えて好意的に受け止められるかもしれないとエンダール氏は言う。

 「Googleはオープンソースの勝負の仕方をわきまえており、誰かがユーザー体験を持っていなければどうにもならないと分かっている。わたしの見方では(AndroidとLiMoは)競合するが、詰まるところ実行力と資金の問題だ」(エンダール氏)

 Googleは競争上の優位性を守るためオープンソース技術を活用し、実行力、資金力ともにLiMoをしのげるはずだと同氏はみる。

 それでも先に市場に出るという点はLiMoの強みになる。LiMo加盟社のMotorola、NEC、Samsung、パナソニック・モバイルコミュニケーションズは2月11日、全社がLiMo R1搭載の携帯電話を発表した。Androidは公式には、同日の時点で試作機の段階だ。

 商業的にはLiMoが先行しているように見えるが、SymbianおよびMicrosoftに対抗するという大きな戦略の中で、これは問題にならないかもしれない。現行製品に対抗して勢力を伸ばすには何年もかかる可能性があるからだ。

 Google側は新しいAndroid SDKを発表した。これには新しいユーザーインタフェース、レイアウトアニメーション、住所と座標の相互変換ができるジオコーディング、企業検索が含まれる。

 Android搭載の携帯電話がSamsung、HTC、Motorolaなどのメーカーから登場するのは2008年下半期になる見通しで、オープンソース携帯を早く試してみたいユーザーにとってのOSはLiMoになる。

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