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AMDのトリプルコアCPUを探る

» 2008年03月14日 14時14分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 米AMDのトリプルコアプロセッサはまだ世界で登場が待たれている状態だ。

 AMDは2007年9月に、3つのコアを持つデスクトップPC向けマイクロプロセッサという独自のコンセプトを打ち出したが、Phenomのこのバージョンをいつ、どこの市場で出荷するかについては口を閉ざしたままだった。

 だが、そのトリプルコアプロセッサの一端が明らかになりつつある。AMD広報はメールで、同プロセッサのPCメーカー向け大量出荷が始まったと説明。Dellは第一陣のメーカーとして(最初ではないにしても)、デスクトップPCの「Optiplex 740」にこれを採用するもようだ。

 トリプルコアPhenomのスペックについて、AMD広報のジェイク・ウィットマン氏は一切コメントしなかったが、Dellの文書から判断すると、2次キャッシュは1.5Mバイトになるようだ。クアッドコアPhenomの2次キャッシュは2Mバイトだった。Dellは2008年第2四半期にトリプルコアとクアッドコア搭載モデルの両方を発売する予定。

 DellのWebサイトに掲載されたBIOSパッチアップデート情報によると、Dellのマシンに搭載されるトリプルコアPhenomは、8600、8700という連番で販売される。DellはOptiplex 740シリーズで、クアッドコアPhenomの9500と9600もサポートする。

 Dell広報のジェレミー・ボレン氏は、同社の今年の計画についてそれ以上のコメントを避けた。

スケジュール問題

 AMDは2007年後半にデスクトップPC向けクアッドコアプロセッサを発表したが、最初これを採用したのはゲーム用や高性能マシンを手掛ける一握りのPCメーカーのみだった。しかし今年に入り、Hewlett-Packard(HP)とAcer傘下のGatewayが同プロセッサ搭載のゲーム用および高性能デスクトップPCを発表し、風向きが変わった。

 Dell Optiplex 740で、AMDはもう1つ大きな勝利を手にしたことになる。

 AMDがいつトリプルコアプロセッサを出荷するかをめぐっては、一部で混乱もあった。2月に立ち上げると一部幹部が述べる一方で、AMD広報はeWEEKに対し3月12日、第1四半期に提供を開始するという全般的なスケジュールに変更はないと語った。

 AMDが全般的スケジュールにこだわるのは、2007年に起きた問題が一因となっている。同社はサーバ用のクアッドコアOpteronと、デスクトップPC用のクアッドコアPhenomを発表したが、不具合が原因で出荷延期を強いられた。その後不具合を解消し、新しいプロセッサをパートナー向けに出荷している。

 AMDは昨年トリプルコアPhenomを初めて発表した時点で、フル機能を発揮するクアッドコアプロセッサと、古くなったデュアルコアAthlonからのアップグレードの間を埋める妥協点として、トリプルコアを売り込む計画だった。

 このやり方なら、デスクトップPCの処理能力を強化したいがクアッドコアは高過ぎるというPCマニアと、コンテンツ制作アプリケーションを使った作業用にもっと堅固なデスクトップPCを求める企業ユーザーの両方にトリプルコアをアピールできる。

製造の仕組み

 トリプルコアPhenomを組み立てるに当たり、AMDはこのようなプロセッサをどうやって開発したのかについて完全な説明はしてこなかった。ウィットマン氏のメールによればこのPhenomは、コア同士を直接つないで統合メモリコントローラとI/Oの通信を向上させる同社のDirect Connect Architectureを活用している。

 「AMDのDirect Connect Architectureと真のネイティブマルチコア設計により、コア、統合メモリコントローラ、I/Oの間の直接通信が可能になり、不必要なボトルネックが削減される。このアプローチにより、デュアル、トリプル、クアッドなどさまざまなコア設定が可能になる」(ウィットマン氏)

 業界アナリストの中には、AMDが単にクアッドコアPhenomのコアの1つを無効にして、新しいプロセッサとして作り直しただけだと見る向きもある。もしそうであれば、不具合(この場合はクアッドコアプロセッサ内部で少なくともコアが1つ機能しないという不具合)が常態化しがちなプロセッサの製造工程で、生産高を上げる一助となるはずだ。

 Mercury Researchのアナリスト、ディーン・マカロン氏は、トリプルコアPhenomはAMDのマーケティングとして興味深いだけでなく、挑戦的な価格付けを通じて同社の戦術的地位が形成されるかもしれないと指摘し、次のように述べている。

 「これによってAMDの柔軟性は大いに高まる。AMDという会社はこの種の戦術的製品を打ち出してきた歴史があり、それをIntel対抗上のメリットとして利用してきた」

 IntelがAMDに対抗して高性能のデュアルコアプロセッサ提供に踏み切ったり、どこかの時点でデスクトップ向けクアッドコアプロセッサの価格を大幅に引き下げても不思議はないとマカロン氏は話している。

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