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» 2008年03月17日 21時26分 UPDATE

映像・音楽配信を許諾不要に 「ネット権」創設、有識者が提言

過去に上映された映画などを許諾不要でネット配信できるようにする「ネット権」の創設などを柱とする特別法の制定を有識者団体が提言。煩雑を極める権利処理をネット限定で簡素化し、ネット上でのコンテンツ流通を活性化するのが狙いだ。

[ITmedia]

 角川グループホールディングスの角川歴彦会長らが参加する「デジタル・コンテンツ法有識者フォーラム」(代表:八田達夫政策研究大学院大学学長)は3月17日、ネット上での利用に限り、過去の映画や音楽などを事前の許諾なしで映画会社などが配信できるようにする「ネット権」の創設を柱とした特別法の制定を提案した。

 過去のコンテンツをネット配信する場合、改めて権利者全員から許諾を得る必要があり、手間と時間がかかることからネット上での利用が進んでいないのが現状。提案では、配信を行う事業者に著作権者への対価支払いを義務付けるのを条件に、ネット限定で著作権者の許諾権を制限する。このため事後的な対価支払いで過去のコンテンツ資産をネット配信できるようになり、デジタルコンテンツの流通と活用を加速できるとしている。

photo 都内で発表したフォーラムメンバー

「デジタル・コンテンツ法有識者フォーラム」のメンバーは、相澤英孝一橋大学大学院教授、映画プロデューサーの一瀬隆重氏、西村あさひ法律事務所パートナーの岩倉正和弁護士、角川グループホールディングスの角川歴彦会長、GMOインターネットの熊谷正寿社長、キヤノンの田中信義専務、ジャパン・デジタル・コンテンツ信託の土井宏文代表取締役、八田達夫政策研究大学院大学学長(代表)、シネカノンの李鳳宇代表取締役ら。


 公表した案によると、著作権法や民法などに優先するネット配信限定の特別法として「ネット法」(仮称)の制定を提言。新法で(1)映画会社などがネット上でデジタルコンテンツを配信できる「ネット権」を創設し、その権利と義務を明確化、(2)フェア・ユース規定の明文化──をするものとした。

 ネット権は「インターネット上での一定のデジタルコンテンツの流通に関する権利」であり、「映画の製作、レコードの録音、放送についての同意をえている場合には、(1)ネット上に限定し、そのデジタルコンテンツを流通させるための複製、譲渡その他の使用を行う権利と、それをほかの者に行わせることを許諾する権利を専有する」と定めた。

 具体的には、上映・公開された映画、発売されたレコード、放映されたテレビ番組などは「映画の製作、レコードの録音、放送についての同意をえている場合」とし、権利者の許諾不要でネット配信を行えるようにする。現在はネット配信を行う際には全権利者から改めて許諾をえる必要があるが、これを不要とするのが特徴だ。

photo

 例えば映画やアニメ作品で活用される「製作委員会」方式の場合、参加した企業各社が作品の著作権を共有する形になる。このため、過去の作品をネット配信で利用する場合、参加した全企業の許諾を取り直す必要がある上、1社でも拒否すればネット配信は断念せざるをえない。古い作品の場合は相続などで権利関係が不明の場合もあり、こうした作品もネット配信は難しい。

 こうした課題を解決するため、新法の案では各権利者の著作権などをネット上に限って制限し、映画会社などに「ネット権」という集中的な使用権を付与することで、ネックとなっている権利処理を簡単にし、コンテンツの流通を活性化するのが狙いだ。

権利制限の代わりに収益配分を法的義務化

 その代わり、ネット権を付与された「ネット権者」は、著作権を制限された権利者に対し、配信でえた収益を公正に配分する法的義務を負うとした。対価については当事者間での協議で決めるとしているが、実務的には日本音楽著作権協会(JASRAC)のような管理事業者を複数設け、ガイドラインやルール作りを集約する方法などを想定している。

 「ネット権者」は義務を果たす能力がある者、つまり配信に対する収益配分を実務的に行える能力がある事業者などに限定する。また、既存コンテンツのネット上での利用を活性化する目的から、対象とするコンテンツを映像と音声などに限る。このため、現時点では映画は映画会社など、放送は放送局、音楽はレコード会社──を「ネット権者」として想定している。

 またフェアユース規定の明文化では、コンテンツの性格などを考慮し、「その使用が公正であるといえる場合には適法に使用が可能であることを明記する」とした。ドラマやドキュメンタリー映像などに通行人として写った人の権利(写り込み問題)への対応に加え、新しいネットサービスの登場などに柔軟に対応できるよう、公益性などの観点から法改正を待たずに権利制限できることを定める。

 現行法の改正で対応せず、特別法での解決を提案する理由は「同じ著作権法の中で伝統的な著作物とデジタルコンテンツを別々のカテゴリーにすることは、法技術的には可能であっても、実務的には大きな困難が伴う」などと説明。同フォーラムの岩倉正和弁護士(西村あさひ法律事務所パートナー)は「現行法のもとで色々な実務のフレームワークができており、現行法の改正は難しいと実務家として思う」と話した。

より広く作品に出合えるように

 同フォーラム代表の八田達夫政策研究大学院大学学長は「100人権利者がいた場合、1人でも拒否すればネット上の配信はできないという不合理な状態になっている」と現状の問題点を指摘。権利処理を簡易化することでネット配信ビジネスの活性化につなげたいとした。

 メンバーの1人、シネカノンの李鳳宇代表取締役は「映画では製作委員会方式が通常だが数十社が参加することもあり、さらに原案や原作、俳優まで創作に関わる人数は膨大。ネット配信などの2次使用の許諾は課題になっており、業界の力だけでは処理できないところまできている」と説明。「一番幸せな映画とは、何度も見てもらい、記憶にとどめてもらえる映画だ。ユーザーがより広く映画に出合え、制作者が対価ももらえるようになるよう、業界として期待する」とした。

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