コンシューマーのクリック履歴を分析して広告のターゲットを絞りやすくするネット行動ターゲティング広告の業界で、争いが起きそうな様相だ。
Webユーザー向けに広告を出すことで(そしてユーザーが具体的にどの広告を見たがっているかを把握することで)収益を上げている急成長中の業界が、消費者のプライバシー保護に関して自己規制を続けるべきか、それとも州や連邦政府が介入してMicrosoft、Google、Yahoo!といったネット広告業者が収集・利用できる情報の量を制限すべきか。現時点の論議はこれが焦点となっている。
これには多数の要因が絡んでいる。その1つとして、ネット広告業界は2002年に最初の自己規制が導入されて以来、劇的に変化した。企業が消費者のクリック履歴を追跡するのに使う技術も同様だ(消費者はショッピング客だけでなく、あらゆるネットユーザーが該当する)。
例えば、新興のPhorm、Nebuといった企業は、ユーザーが利用しているインターネットサービスプロバイダー(ISP)からクリック情報を収集し、1人のユーザーがネット閲覧中に行ったクリックをすべて記録できるツールを開発した。Phormは英国の通信各社との契約を通じてこれを実現し、消費者の反発を買った。同時に消費者の間では、個人情報窃盗からソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のFacebookからのショッピング情報流出に至るまで、あらゆる分野でネット閲覧にまつわるプライバシー問題の認識が高まっている。
詰まるところ問題は、ユーザーのネット利用に関して企業はどのくらいの情報を、そしてどんな種類の情報を収集・利用することが許されるのかという点に尽きる。
ニューヨーク州議会のリチャード・ブロッドスカイ議員は、行動ターゲティング広告は個人のプライバシー権を侵害しており規制が必要だと話す。同議員がニューヨーク州議会に提出した法案は事実上、消費者の権利にかかわるインターネット広告法を制定するものだ。ネット企業がほかの州の消費者との関係を変えないまま1つの州の法律を守ることは難しいため、ニューヨーク州の法律が事実上の全米標準となる可能性は大きい。
ブロッドスカイ議員によると、この法案は現在、同州の上院と下院の両方に提出されている。
「われわれはこの法案について話している。これは明白で差し迫った問題だ」と同議員。
法制定までのスケジュールを定めるのは難しいが、Microsoft、Google、Yahoo!から同議員が話を聞いた後、法案の内容は変わる公算が大きいという。「各社の考えと、どんな変更を求めているかが知りたい」
この法案には、ネット広告業者に向けた以下のような条件が盛り込まれている。
同様の法案はコネティカット州でも検討されているが、ニューヨーク州のこの法案に対しては、内容がほとんどNetwork Advertising Initiative(NAI)が提案した自己規制基準そのままであり、そもそもこれ自体が不適切だとの反対意見もある。NAIの目標は、消費者が自分のネット利用環境を把握・管理するための情報および仕組みの両方を提供し、ネット広告業者が標準とポリシーを確立するためのプラットフォームを提供することにあると、NAIのサイトには書かれている。
Center for Democracy & Technology(CDT)のチーフコンピュータサイエンティスト、アリッサ・クーパー氏は言う。「法案はNAIが推進する内容に極端に似通っている。自己規制を法律にしようとしているのだ。それが適切かどうかは、自己規制計画の現状次第だ」
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