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色覚障害者の色の見分けにくさを眼鏡で体験 「カラーユニバーサルデザインの第1歩に」

» 2008年04月10日 19時26分 公開
[宮本真希,ITmedia]
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 さまざまな利用者が使いやすいよう配色された“カラーユニバーサルデザイン”が注目されるようになってきた。カラーデザインの展示会「COLOR SESSION 2008」(4月12日まで、東京ビッグサイト)では、色覚に障害のある人にとって色が見分けにくいことを体験できる世界初の眼鏡や、色覚障害者の見え方をシミュレーションするソフトが展示されている。

 眼鏡用レンズメーカーの伊藤光学は、色覚に障害のある人にとって色が見分けにくいことを体験できる眼鏡型フィルター「バリアントール」(3万4500円)を出展した。豊橋技術科学大学と連携し、二酸化チタンと二酸化シリコンを交互に30層蒸着した光学フィルターを開発。色覚障害者の色の見分けにくさを再現して体験できるようにした。

 記者もバリアントールをかけてみたところ、黒地の看板に赤色で書かれた「交通死亡事故現場」という文字が読みづらかったり、ピンクと水色で色分けされたグラフがどちらも同じような色に見え、分かりづらかった。

 昨年4月に発売し、800本を販売した。製品やパンフレット、ポスター、標識などをデザインする際に利用されている。導入した日本航空は、CSR報告書や、空港の案内標識を色覚障害者も見やすい配色に改善するのに活用しているという。販売は大平印刷が行っている。

 日本では、男性の20人に1人、女性の500人に1人、全体では300万人以上の色覚障害者がいる。色覚障害者向けに色覚を補正する眼鏡は従来からあるが、色覚障害者の色の見分けにくさを体験できる眼鏡は世界初という。

 5月にはルーペ型の「バリアントール パンケーキ」(1万9500円)を発売する予定だ。「色覚障害者が矯正用の眼鏡をかけるのではなく、誰でも最初から使いやすい製品を作っていくことが大事。見分けにくい色使いに気付くことが、カラーユニバーサルデザインへの第1歩」(同社の説明員)


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画像 バリアントール パンケーキ

 地図メーカーの地理情報開発は、色覚障害者の見え方をシミュレーションする「Adobe Illustrator」用プラグイン「PlugX-カラーUDパレット」を2006年から販売している。

 ドキュメント全体や選択した部分について、色覚障害者がどのように見えているかを確認できる。確認しながら色を選択し、編集することも可能だ。ダウンロード版とパッケージ版があり、価格は2万4150円。色数が多い路線図などをデザインする際に利用されている。


画像 路線図でシミュレーション
画像 右が色覚障害者の色の見え方をシミュレーションしたドキュメント。ピンクと緑で表示された路線が同じような色になり、見分けづらくなっている

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