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» 2008年04月28日 07時45分 UPDATE

指でなぞって曲作り “ニコニコ時代”の手のひらシンセ「KAOSSILATOR」 (1/2)

手のひらサイズのコルグ製シンセサイザー「KAOSSILATOR」が人気だ。タッチパッドをなぞるだけの新しさと気楽さが、初心者から上級者まで惹き付ける。

[松尾公也, 岡田有花,ITmedia]
画像 KAOSSILATOR

 指でなぞるだけで、音楽を奏でられる――手のひらサイズのシンセサイザー「KAOSSILATOR」(カオシレーター)が人気だ。開発元のコルグ(KORG)によると、昨年11月の発売以来生産が追いつかない状態で、販売店でも入荷次第完売という状態が続いている。

 KAOSSILATORは、なんとなくいじっているだけで“音楽らしきもの”を奏でることができる。「楽器を弾けない人にも、作曲の一番楽しい部分を体験してほしい」――そんな思いで設計した。

 文庫本大の四角いボディに、たばこの箱くらいの大きさのタッチパッドと、黄色いボタンが3つ。指でタッチパッドをなぞるだけで演奏でき、作った音を重ねながら複雑なフレーズを作成することもできる。鍵盤なし、音楽知識も不要だ。

 「いろんなことを割り切って、音楽の楽しさの一番大事なところだけ経験させたかった」と、商品企画を担当した同社の坂巻匡彦さんは言う。楽器の練習や、機材の設定など音楽の辛い部分を全部省略し、音楽の楽しさだけを味わってもらえるよう工夫した。

ただ触るだけで音楽が鳴る

 KAOSSILATORは、電源を入れてヘッドフォンをつなぎ、タッチパッド「X-Yパッド」を適当に指でなぞるだけで“音楽”が響く。

 X-Yパッドは左右のX軸で音階が、上下のY軸でエフェクトの強さが変わる。指を左から右にスライドさせると、低い音から高い音に変わっていき、下から上にスライドさせると、音色(おんしょく)ごとに設定されたエフェクト(ビブラートなど)がだんだん強くなる――といった調子だ。指を斜めに動かしたりぐるぐると回転させたりすると、意外な音の変化を楽しめる。

 つまみを回して選べる音色は100種類。ピコピコした電子音やドラムサウンドから、ピアノやギター、トランペットの音まで。「こんな音が出るなんて、すごいですよね」――社内の音作り専門家が作り上げたというその音色は、坂巻さん自身が驚くほどの豊かさだ。

 スケール(音階)も31種類から選ぶことができ、沖縄民謡風やハワイアン風、ブルース風の音階などを設定できる。

 短いフレーズを保存し、繰り返し再生できる機能「LOOP REC」を備えた。LOOP RECボタンを押しながら演奏すれば、2小節(8ビート)までのフレーズを保存できる。録音したフレーズは繰り返し再生(ループ再生)でき、その上にさらに音を重ねて録音を繰り返すことで、多重録音できる。

 例えば、ドラムのビートを録音し、その上にピアノ音で作ったメロディーを重ね、ギターを重ね――といった調子で、指先1つで“合奏”ができてしまう。

(※:動画は坂巻さんの演奏)

 「指で触ってフレーズを作り、『あ、かっこいい』と思えば録音して重ねていって、“なんちゃって曲作り”とか“なんちゃってソロ”ができる。適当に好きな音を組み合わせれば、曲らしくなる」(坂巻さん)

 指でなぞって演奏する電子楽器。一見突飛なこのアイデアは、同社のユーザーインタフェース(UI)研究の進化の系譜上にある。独自のUIで音楽の楽しさを広げた2つの製品シリーズ、「KAOSS PAD」と「ELECTRIBE」の簡単で面白い部分だけを切り出し、小さなボディに詰め込んだのだ。

音楽の楽しさを、もっとたくさんの人に

 「音楽を作る楽しさを、もっとたくさんの人に」――同社は1990年代ごろから、シンセサイザーのユーザーインタフェースの研究を重ねてきた。1つの集大成が「X-Yパッド」だという。

 シンセサイザーは、ホイールやつまみなど、鍵盤以外のユーザーインタフェース(UI)で音を変えられる。だが、鍵盤を押さえながらつまみを1つ1つ回すのは難しく、演奏のハードルが高い。「もっと先に進んで、表現力を高めたかった」(坂巻さん)

画像 Z1

 1つの答えが、鍵盤でもホイールでもつまみでもない「X-Yパッド」だったという。初めて導入したシンセは「Z1」(1997年発売)で、鍵盤の左に、ノートPCのタッチパッドのようなX-Yパッドを搭載した。

 Z1は、ホイールもつまみも鍵盤も、X-Yパッドも搭載したシンセだ。鍵盤を押さえながらX-Yパッドを触ると、エフェクトを変化させられる。「例えばトランペットなら、変に息を吹き込んだような風に変わり、トランペット“らしい”表現ができるようになった」(坂巻さん)

X-Yパッド単体のエフェクター「KAOSS PAD」がDJにヒット

画像 「KAOSS PAD」初代機

 X-Yパッド単体で、何か面白いことができるのではないか――Z1の成功から生まれたのが、X-Yパッドとつまみ×2、ボタン×6だけでできたエフェクター「KAOSS PAD」初代機(1999年発売)だ。

 エフェクターといえば、複雑なパラメーターを設定しなくてはならずハードルが高かったが、KAOSS PADなら「X-Yパッド」で指1本でコントロール可能。誰でも感覚的にエフェクトをかけられる。これまで同社の主要顧客だったミュージシャンだけでなく、楽器が苦手なDJにも歓迎された。

 「KAOSS PAD KP2」(2001年発売)、「KAOSS PAD KP3」(06年発売)には“おまけ”的な機能としてシンセ音源も内蔵。単体で音が出せるようになった。「『あいうえお』としゃべるような音もあり、鍵盤ができないDJの方が曲のつなぎ目『ああいい』なんてプレイしたりしていた」(坂巻さん)

人間にできないフレーズを弾いてくれる「アルペジエーター」

画像 「KAOSS PAD mini-KP」

 ボディは、07年に発売した小型の「KAOSS PAD mini-KP」とほぼ同じ。KAOSS PADシリーズは外部から持ってきた音にエフェクトをかけるエフェクターだったが、KAOSSILATORは音をゼロから作り上げ、エフェクトや多重録音でループを作ることができる「シンセサイザー」を目指した。

 横方向にスライドすると音階(スケール)が変わり、縦方向だとモジュレーションホイールをいじったようにエフェクトが変わる。鍵盤のシンセサイザーだと、右手で演奏しながら左手でホイールを回す、といった高度な技が必要だった演奏が、X-Yパッドだけでできる。

 音階のコントロールだけではなく、発音のタイミングも簡単にした。「ゲート・アルペジエーター」(ゲートアープ)。多くの鍵盤型シンセサイザーには、「アルペジエーター」という機能が備わっている。これは、複数の鍵盤を同時に押さえておくと、そのコードでアルペジオ(和音を構成する音を、1音ずつ順番に弾く奏法)を奏でてくれる機能だ。

 ゲート・アルペジエーターは、そのうち、タイミングの部分だけを切り出したようなもので、音を鳴らすパターンだけを「タッタッタッタッ」とか「タッタカタッタカ」とか変えていくことができ、うまく使えば「速弾き」もできる。

画像 ELECTRIBE SX

 「アルペジエーターは、人間ができないフレーズを代わりに弾いてくれる。ピアノなんかでも、鍵盤を前にどういうリズムで何を弾いていいか分からないが、そういう状況を補助するものにしたかった」(坂巻さん)

 ヒントとなったのは、「ELECTRIBE」シリーズに搭載して好評だった「リボンコントローラー式アルペジエーター」だ。アルペジオを自動演奏するための機能で、フェーダーでキーとスケールを上下させながら、「リボン」と呼ばれる長方形のタッチスペースを触ると、そのスケールを勝手に“連打”してくれ、リボンの位置で連打のリズムが変わる、というものだ。

刹那的な楽しみを――録音機能もMIDIも省く

 2小節(8ビート)までを録音し、繰り返し再生できる「LOOP REC」機能では、パッドをいじってお気に入りのフレーズができれば録音し、その上に別の音を重ねて……と繰り返しながら、短いフレーズを多重録音で作曲できる。

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