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NVIDIA、携帯ネット端末市場でIntelと激突

» 2008年06月12日 15時47分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 米NVIDIAのモバイルビジネス事業部門のジェネラルマネジャー、マイケル・レイフィールド氏がMID(モバイルインターネットデバイス)の将来性を検討していて思うのは、この分野が可能性を秘めた5億ドル未満規模の市場、いわゆるゼロビリオンダラー市場なのではないかということだという。

 レイフィールド氏の見解には確かに一理あるかもしれない。MIDは6月初旬に台湾で開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2008カンファレンスでも大いに注目を集めたにもかかわらず、今のところ、MIDの市場ははっきりとは確立されていない。だが、この分野に将来性があるのは確かだ。そしてNVIDIAとその強力なライバルであるIntelはそれぞれ、この市場を明確に定義する最初のベンダーとなることを目指している。

 NVIDIAはCOMPUTEXにおいて、初めてのMID向けのプラットフォームとして新プロセッサファミリー「Tegra」を発表した。同プラットフォームには、ARM11 CPUのほか、超低消費電力のGeForce GPU(グラフィックス処理ユニット)、イメージプロセッサ、高精細(HD)ビデオプロセッサなどが実装されている。一方のIntelは今年、「Atom」プロセッサを発表している。Atomは「Silverthorne」という開発コード名で呼ばれていたもので、Intel Architectureと新しいチップセットを併用するx86プロセッサだ。

 両社は目下、それぞれ自社プロセッサを採用したMID製品の第1弾を2008年下半期中にベンダー各社に製造してもらうべく、激しい競争を展開中だ。ただしレイフィールド氏によると、本当の意味での勝負は2009年下半期にIntelとNVIDIAがそれぞれ新版を投入するときまで持ち越されることになりそうだ。

 今のところ、NVIDIAが照準を合わせているのは、Wi-Fi、WiMAX、3Gのいずれかを介してインターネットに接続し、4〜12インチのディスプレイを搭載する199〜250ドル程度のデバイスだ。恐らくこうしたデバイスの多くはコンシューマー市場に投入されることになるのだろうが、200ドル前後の価格帯であれば、メールやVoIPなど各種の用途でエンタープライズ市場にも受け入れられるかもしれないとレイフィールド氏は考えている。

 レイフィールド氏は米カリフォルニア州サンタクララのNVIDIA本社で取材に応じ、「ARMベースのTegraプラットフォームはMIDが市場で成功する上で必要となるであろうバッテリー持続時間を提供し、その一方では、ビデオ、ゲームのほか、メールや表計算といった軽量のプロダクティビティアプリケーションもサポートする」と語った。

 「デバイスが2時間しか稼働しないようでは、収益性の高い市場の構築は見込めないだろう。2時間ごとに充電しなければならないようなデバイスは誰も望んでいない」と同氏。

 またTegraプラットフォームがARMプロセッサをベースにしているということは、NVIDIAがMID市場とスマートフォン市場を自由に行き来できるということでもある。実際、同社は今年に入り、スマートフォン向けのアプリケーションプロセッサ「APX2500」をリリースしている。こうしたクロスオーバーは双方の最良の要素を組み合わせた興味深い製品の登場につながる可能性もある。

 「何十億ドル規模に成長する可能性のある市場だ。正しく取り組めば、何十億台ものデバイスが市場に投入されることになるかもしれない。スマートフォンがナビゲーションデバイスと統合され、それが今度はMID端末と統合されるといった具合に進めば、非常に巨大な市場になるだろう」とレイフィールド氏は語っている。

 一部のアナリストはこうした見通しに賛同しており、また一部からは、IntelがAtomプロセッサの熱設計枠をAppleの「iPhone」などのスマートフォンだけでなくMIDでも使えるレベルまで抑えるのにはまだしばらく時間がかかるだろうとの意見も聞かれる。

 だが一部のIntelプロセッサは既に1ワット以下の熱設計枠を提供しており、NVIDIAもARMプロセッサによって1ワット以下の熱設計枠のプラットフォームを提供している。また一部の業界観測筋は、Microsoft WindowsかLinuxがフルにサポートされるのであれば、アプリケーション開発者はIntelのx86ベースの方がコードの開発が楽だろうと指摘している。

 今のところ、TegraはWindows CEとWindows Mobileをサポートしている。レイフィールド氏によると、将来的にはLinuxのサポートも追加される見通しだが、「大半の消費者はWindowsベースのデバイスを望むだろう」と同氏は語っている。またサードパーティーのアプリケーションに関しては、Windows上に構築できるほか、ハンドヘルド端末用のオープンAPIセット「OpenKODE」を使ったソフトウェア開発も可能という。

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