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「削除要請、拒否したことはない」 JASRACに提訴された「TVブレイク」が反論

» 2008年08月07日 14時23分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 TVブレイク

 「JASRACのプレスリリースにあるような『削除要請を拒否』したことは一度たりともございません」――動画共有サイト「TVブレイク」を運営するジャストオンライン(パンドラTVから8月1日に社名変更)の今崎善秀社長は8月6日、サイト上に文書を掲載し、同社を著作権侵害で提訴した日本音楽著作権協会(JASRAC)に反論した。

 同社はこれまで、JASRACと3回にわたって文書でやりとりしてきたという。今崎社長は「平和的な解決を望んでいたが、抑圧的に突然提訴という決断をされたことは大変残念」とコメント。裁判の判決は「今後のインターネット著作権を考える上で非常に重要な判例になると考えている」とし、法廷で争う構えだ。

「削除要請あればすぐに削除してきた」

 JASRACは6日、管理楽曲の著作権が侵害されたとして、同社に対し、約1億2800万円の損害賠償と、JASRAC管理楽曲の利用禁止を求めて6日に提訴した(JASRAC、動画共有サイト「TVブレイク」提訴 1億2800万円賠償求める)。

 JASRACのプレスリリースには「昨年6月以降、同社に対して、サイト上のJASRAC管理著作物を含む権利侵害の投稿を防止するため具体的な対策を講じ、権利侵害動画の配信を停止するよう要請してきたが、同社は、サイト上で発生する著作権侵害について責任を負わないと主張して要請を拒否し、何ら対策もとらずに現在も事業を継続している」と書かれている。

画像 JASRACのプレスリリース
画像 TVブレイクの反論文

 今崎社長このリリースに反論。「当社はプロバイダー責任制限法(ISP法)に基づいて適切に運営してきており、権利者から削除依頼があれば、即座に削除してきた。多い時には1度に50〜100の動画を削除したこともある」と話す。ただJASRACからの削除要請は「2年前に数回あり、その時はすぐ削除した。その後は要請が来ていない」とする。

 JASRACとはこれまでに3回、文書でやりとりし、動画共有サイトでの包括利用許諾条件(収入の1.875%をJASRACに支払う)受け入れなどについて前向きに検討してきたが、合意に至らなかったという。JASRACは契約の前提として、動画が送信可能になる前にシステムで監視する体制を求めてきたというが、「当社にはそのような技術も人的リソースもない。この要請は非現実的で受け入れられない」と今崎社長は話す。

 「平和的な解決を望んでいたが、抑圧的に突然、提訴という決断をされたことは大変残念」――今崎社長はこうコメント。「今後のインターネット著作権を考える上で非常に重要な判例になると考えており、法廷で明らかにしていく」と話している。

 パンドラTVは06年2月にスタートした動画共有サイト。「誰もが自分の放送局を持って情報発信できるようにしたい」という思いで作ったという。

 「当初から著作権関連の問題が起きる可能性を想定し、弁護士とも契約した上で国内にサーバを置いて運営を始めた。ネット上の著作権のあり方にも疑問を持っており、一石を投じるサービスにしたかった」と今崎社長は話している。

JASRACの話 食い違う主張

 JASRAC広報部は「同社に対してこれまでに3回、文書で、JASRAC管理楽曲の配信停止を求めてきた。最初の1回は、JASRACの管理楽曲リスト(一般的なリストで、TVブレイク上の侵害動画を指定したものではない)をCD-ROMで送ったが、同社からは代理人の弁護士名で『当社はISP法に則って運営しており、サイト上で発生する著作権侵害について責任を負わない。責任があったとしても物理的に対応できない』と回答があった」と話している。

 JASRACは「管理楽曲の権利を侵害した動画全般について、削除や未然の投稿防止を含む対策を要請したが、対応がなかった」と主張している一方で、同社は「権利を侵害した動画を具体的に指定した削除依頼は来ていない。そういった依頼ならすぐに削除している」と反論しているところに、主張の食い違いがあるようだ。

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