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» 2008年08月08日 11時36分 UPDATE

「じぶん銀」――ケータイ専業新銀行、なぜ必要だったのか (1/2)

KDDIと三菱東京UFJ銀行が設立した「じぶん銀行」は、PCネットバンクのおまけではなく、ケータイ専業だからこそできることにこだわった。

[西川留美,ITmedia]

 モバイルで金融サービスを提供する“ケータイ銀行”「じぶん銀行」が7月17日にサービスを開始した。KDDIと三菱東京UFJ銀行(以下、BTMU)が折半出資した銀行で、モバイルに特化した銀行は世界的に見てもまれだ。

 なぜ通信会社であるKDDIとメガバンクであるBTMUが手を組んだのか。実のところ、これは自然の流れだった。

 時は3年前にさかのぼる。

 「モバイルによる銀行サービスの提供」という話は、実は旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行が合併前から話を進めていたプロジェクトの1つであった。当時東京三菱銀行は、リテール業務の拡大の流れから金融チャネルの充実を図っていたところ。その中でモバイルバンキングも当然取り入れていたのだが、利用者数は伸び悩み続けた。理由は、あくまでもPCによるネットバンキングの補助的な役目しかなかったためだ。

 「PCと違ってできることが限られていたり『ボタンを押す回数が多い』『過去履歴を画面で一明細ずつでしか表示できない』など、携帯電話ユーザーフレンドリーではなかった」と、じぶん銀行代表取締役社長の中井雅人氏は振り返る。その後も、携帯電話の普及率は増加の一途をたどったにもかかわらず、同行のモバイルバンキングの利用者はそれと連動しないまま横ばいであった。

携帯電話に特化するために 準備は2年がかり

画像 中井社長

 中井氏は旧東京三菱銀行のIT事業部の出身だ。モバイル事業に携わったのは3年前。規制緩和による銀行のリテール分野のビジネスの激変と携帯電話の技術の急速な進歩を、ちょうど目の当たりにしてきた。

 第三世代携帯電話(3G)が主流になったころでもあり、KDDIは顧客利便性向上のために銀行サービスを導入できないかと考え始めていた。そこでパートナーとして選んだのがBTMUだったわけだ。

 「銀行から見れば組める相手はもともと3社ですから(笑)。KDDIさんが声をかけてくれたタイミングが、ちょうど当行がモバイルについて考えていた時期と重なったわけです」(中井氏)。

 「ITの世界で銀行が単独でできることはもう限られています。銀行が行う決済とは『お金を使った時に払う』『お金を借りる』という、取引の最後の場面で出てくるもの。だから、金融機関から見れば、もっと上流にあるサービスを持つパートナーと組んでやっていくのが必須なんです」

 とはいえ、単に出資するという方法もあったはずだ。なぜわざわざ2年もかけてまで新銀行を設立することにしたのか。

 「単純に提携してBTMUのサービスをauの上でやるということはできました。しかし、われわれは『いかに操作性が優れたサービスにするか』『安全な形で金融サービスを提供するか』という点にこだわったんです。そのためには新銀行を作ったほうがいいという結論になりました」(中井氏)

 モバイルバンキングを使ってもらうには、(1)使い勝手の向上、(2)セキュリティー面を整備し、利用者の持つ「漠然とした不安」を解消すること、この2つをクリアする必要がある――そんな思いが中井氏にはあった。

 だがBTMUのサービスをそのまま持ってくるとなると、どうしても現行のシステムや顧客に引きずられてしまう。メガバンクのシステム統合に相当時間がかかることはご承知の通りだが、そこから考えても現行システムを利用することの負担の大きさはうかがい知れる。

 顧客から見ても、例えば新しいサービスを始めようとするとき、BTMUが持つ既存顧客のすべてが利用できなければならなくなるため、あまりにも効率が悪い。「2年かけてでも携帯電話に特化したものを作ったほうが柔軟性が生まれ、あとあと新しいものが作りやすいと考えました」(中井氏)

 また、カード会社など別の業態での会社設立という方法もあったが、総合的な金融サービスのプラットフォームとなるためには日本では「銀行」というステータスが、一番何でもできると判断したのだという。

 こうして世界的にも類を見ないモバイル利用を前提とする新型銀行の準備はスタートした。2006年の夏のことだった。

「携帯銀行」ではなく「じぶん銀行」

 さて、銀行名の「じぶん」はずいぶん個性的であるが、いったいどんな由来があるのか。

画像

 もちろん当初は「携帯銀行」という案もあった。だが、「携帯電話の中にある自分の銀行」というコンセプトはありではないか、という議論が銀行を作っていく過程で行われたのだという。

 かつての黒電話(固定電話)はみんなで使う電話であり「家族」の象徴であった。一方、携帯電話は1人1人が持つパーソナルなもの、すなわち「自分」の象徴だ。

 では、それを銀行に置き換えた時はどうか。今までは「家族」の口座を使って利用していた銀行が、携帯を利用することで「自分」だけの銀行になるのだ。

 ネーミング案としては「わたし銀行」「マイ銀行」などさまざまなものが出たが、その中から最終的に「じぶん銀行」に落ち着いたのだという。

形にこだわりたい

 じぶん銀行のサービスは、もちろん携帯電話を使うことが柱となる。決済など通常の銀行サービスはもちろん、電子マネーへのチャージなど携帯電話独自の取引もある。「しょせん銀行のサービスなんてどこがやってもそんなに変わらないんです。それをどのような形でお客様に提供するかにこだわりたい」(中井氏)

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