東京・池袋の雑居ビルの5階。ステンレス製の入り口ドアを開け、記者は面食らった。なんだここは!?
薄暗い砂壁の廊下にオレンジ色の間接照明が光る。廊下の両脇には砂利が敷き詰められている。よく見ると、壁際の竹の柱には手裏剣が突き刺さっている。
「NINJA TOOLS」ブランドでアクセス解析サービスなどを提供しているITベンチャー・サムライファクトリーのオフィス……のはずだが、まるで和風居酒屋のような雰囲気だ。
訳が分からぬまま、廊下の奥にある会議室に通された。会議室はごく普通。大きな窓があり、10人ほどが囲める机が置かれている。
ようやくオフィスらしい場所に案内されてほっとしていたら、金髪の男性がやってきた。「お納め下さい」と巻物を差し出す。時代劇じゃあるまいし……と思いつつも「頂戴します」とうやうやしく両手を前に出し、受け取った。
固く縛られた茶色のひもを解き、巻物を広げる。中には「サムライファクトリーは、Webサービス業の向こうに世界平和を見ています」「プログラミングは3度の飯の次に好き」などと書かれ、事業内容が説明されている。どうやら会社案内のパンフレットらしい。
さて、どこからツッコむべきか……
訪問する前から“変な会社”の予感はしていた。会社サイトは黒バックのバンド風。会社沿革のメニューは「DISCOGRAPHY」だし、社員紹介ページ「MEMBER」にはビジュアルバンド風のコスプレをした社員の写真が掲載されている。
スキンヘッドに「侍」と書いた男性や、ピンク色の髪の毛の女性など37人の写真がずらり。社員数は40人というから、そのほとんどがコスプレ写真を公開していることになる。
なぜコスプレ写真なのか。巻物をくれた金髪の男性――大柴貴紀経営企画室長――によると、バンド経験のある社長がバンドのWebサイト風のデザインにしたいと言ったためという。
コスプレを嫌がる社員はいないのだろうか。大柴経営企画室長は「普通の写真の方が目立って恥ずかしいから、コスプレを嫌がる社員は少ない」と話す。写真は、自分で持ち込んだり、社内でメイク・撮影したものを使っている。
サイトの効果か、自然と音楽好きが集まってくるといい、社員の約半分はバンド経験者という。
同社は「NINJA TOOLS」ブランドで、ブログやWebスペースのレンタルサービス、アクセス解析サービスなどを提供しているITベンチャーだ。NINJA TOOLSの登録ユーザーは約145万人。毎月2万ずつ増えているという。
忍者アクセス解析が特に人気で、100万ユーザーが利用している。個人サイトなどでよく見かける手裏剣のマークの小さなバナーは、忍者アクセス解析のものだ。
サムライファクトリーという社名には、日本の技術で世界を目指していきたいという思いを込めている。「もの作りから世界平和を実現する」がスローガンだ。
オフィスは、2年前に現在の場所に移転した際、居酒屋風の内装を取り入れた。「社員同士が居酒屋で飲んでいたとき、オフィスを和風にしたいと盛り上がったのがきっかけ」で、畳のベンチが並んだ会議室もある。
「初めて来られた方との話題に尽きない。最初はやりすぎじゃないかと思ったが……」。ちなみに前のオフィスは「普通」だったというが、忍者が出入りするような回転扉があったそうだ。
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