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» 2008年08月28日 11時27分 UPDATE

「Googleストリートビュー」は何が問題か――MIAUがシンポ (1/2)

街並みの写真を詳細に見られる「Googleマップ」の「ストリートビュー」が、プライバシーや肖像権を侵害しているのではないかと議論になっている。MIAUがシンポジウムを開き、問題点を話し合った。

[岡田有花,ITmedia]
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 全国の主要都市の街路を360度カメラで撮影した「Googleマップ」の「ストリートビュー」について議論が起きている。住宅が詳細に写っていたり、道を歩く人や車のナンバーまで写り込んでいることもあり、「プライバシーや肖像権を侵害しているのでは」とも指摘されている。

 インターネット先進ユーザーの会(MIAU)が8月27日、ストリートビューを考えるシンポジウムを開き、問題点を議論した。主婦連合会常任委員の河村真紀子さん、弁護士の壇俊光さん、専修大学准教授の山田健太さん、OpenTechPress主筆の八田真行さんが参加。モデレーターは多摩大学情報社会学研究所研究員の中川譲さんが務めた。

「ストリートビュー問題」とは

 Googleは、公道をパブリックな空間ととらえ、ストリートビューの写真を「公道から撮影したため問題ないはず」という見解だ。ただプライバシー保護への意識も強調。顔認識技術で人の顔にぼかしを入れたり、車のナンバーは写さないようにしたりといった配慮をしているほか、不適切な写真が公開されている場合に、ユーザーがネット経由で通報する仕組みも備えた。

画像 住宅街の様子も詳細まで分かる

 だが実際には私道から撮影した画像があるという指摘があるほか、「自分の家が写っていて気持ち悪い」「空き巣やテロに悪用されるのでは」といったユーザーの懸念も噴出。撮影は、車の屋根の上に搭載した360度カメラで行っているが、カメラの高さが人間の目の高さよりも高いため、一般住宅の塀越しに部屋の中まで見えてしまうこともある。

 日本に先行してサービスインした海外では訴訟に発展した例も。米国では、自宅内の写真を撮らた人がプライバシーを侵害されたとして提訴。カナダでは「プライバシー保護法」に抵触するおそれがあるとし、サービスイン直後に公開停止に追い込まれた。

 イギリスやフランスでは、顔にぼかしを入れるなどプライバシー対策を表明したことでサービスインにこぎ着けたものの、フランスでは、大通りや観光地の街路のみをカバーし、住宅街には入り込んでいないという。

本当に問題なのか? 会場は半数以上が「問題ない」

 中川さんが、会場に集まった50人ほどに対してストリートビューへの賛否を尋ねたところ、半数以上が「賛成」(あっていい、問題がない)と答えた。

 パネリストの間では意見が分かれたが、明確に反対したのは河村さんだけ。山田さんは「法律や社会合意を含めて詰めた上で、慎重に始めるべきだった」とやや反対寄り。八田さんは「問題ない」とし、壇さんは「中立的に法律論を考える。善し悪しの評価はしない」という立場だ。

画像 河村さん

 河村さんは「営利企業が住宅街の路地にまで入り込み、インターネットを使わないような人の家まで撮りに行っているのが嫌」と話す。

 「ネットは自由であるべきだと思うが、自覚的に参加していくことが大切。個人の生活地をカメラが網羅するのはネットの自由とは逆だ。住所が知られることが、家の写真が見られるということにつながり、住所録の意味も変わってくる。『嫌』『気持ち悪い』という人の気持ちを大事にしてほしい」

 八田さんは逆の意見を述べる。「結構面白いし、明確に違法ではないだろう。明確なデメリットも今一つ見えない。社会的なコストを強いる技術は規制の対象となるべきだろうが、そうでなければ試してもいい」


画像 八田さん

 「『ベンツがあるような高級住宅街がひと目で分かり、空き巣に狙われる』『テロの下見に悪用される』という意見もあるが、ベンツのありそうな地域はみんな知っているし、現地を下見しないテロリストは失敗する。ストーカーに利用されるという意見もあるが、ストーカーはストリートビューがあろうがなかろうがストーカーするだろう」

 デメリットも明確ではないが、メリットもあまり見えないという指摘もあった。メリットとして会場から挙がったのは、初めての場所に行く時下見しておけば道に迷わないとか、広告プラットフォームとして魅力的――といった程度。一度犯罪に使われればつぶれてしまうだろう、という指摘もあった。

 壇さんは「『このサービスでこんないいことがある』というのが見えない。技術者にはそういう予測があるかもしれないが、一般の人にそれが見えないのがコンセンサスを生む際の障害になる」と指摘する。

法律的に問題は

 ストリートビューが社会的・法律的に受け入れられるかどうかについて壇さんは「まだコンセンサスがない」と話す。

 「例えば、根拠なしに人の家を盗撮するのは社会的にも法律的にもアウトだが、犯罪行為を行っている人を見つけて証拠保全するための撮影はOK――という基準になっている。だがストリートビューは機械的に撮っており悪意はない。何の意図もないものについて、どうするかのコンセンサスは、おそらくない」(壇さん)

 民事訴訟でどうなるかは「撮影されることによる被る不利益と、撮影によって起きるいいことの比較衡量で決まる」という。似た例としては、写真週刊誌の記事がプライバシー侵害で問題になることもあるが、「一定の主観的な編集方針が問題になることが多く、ストリートビューは無機質に全部とらえるという点で異なる」と壇さんは話す。

 山田さんは「ストリートビューの写真は絶対秘密の情報ではないだろうし、誰にでも公開していい情報かというと、そうでもないだろう。“新カテゴリー”なのかもしれない」と話す。「だからといって『公道から見えるからいいじゃん』で済ますのではなく、法律や社会合意を含めて詰めていくべきだろう」

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