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「P2P技術は不可欠、安心して開発できる環境を」――「P2P基本提言」発表

» 2008年09月22日 15時54分 公開
[ITmedia]

 NPO法人ブロードバンドアソシエーションのP2P関連問題研究会はこのほど、「P2P基本提言」を発表した。「P2Pは今後のインターネット社会に不可欠な技術だが、情報漏えいや著作権侵害などネガティブなイメージでとらえられることが多く、技術者が萎縮して開発が遅れている」と指摘。「安心して開発するために、立法を含んだ環境構築が必要」と訴えている。

 P2P関連問題研究会は、P2P技術の健全な活用を目指して今年3月に設置。東京大学大学院の江崎浩教授が委員長を務め、元米Microsoft副社長の古川享さん、IT・音楽ジャーナリストの津田大介さん、弁護士の壇俊光さんなど参加している。

 提言では、P2P技術はネットワークの効率性を高められるほか、耐故障性やスケーラビリティに優れ、負荷分散や資源割り当て最適化によってコスト削減や省資源につながるなどとメリットを強調する。

 P2Pファイル交換ソフトを通じて著作者に無断でアップロードされたファイルが流通したり、ユーザーが暴露ウイルスに感染し、機密情報が漏えいした例も多く、P2P技術へのマイナスイメージは根強い。

 提言では「著作権の侵害はP2Pによってもたらされたわけではない」と強調。コンテンツの無断複製はP2P固有の問題ではなく、DRMを利用し、コンテンツホルダーの認証を得たものだけをP2Pネットワークで流通させることも可能で、著作権問題は解決できるとする。

 さらに「情報漏えいをもたらすウイルスはP2P技術に由来するわけではない」と指摘。P2Pアプリに情報漏えいの恐れがあると分かった場合は速やかに修正・再配布が行える環境を作っていく必要があると訴える。

 P2Pファイル交換ソフト「Winny」の開発者が著作権法違反ほう助の罪で逮捕・起訴されたことなどで技術者が萎縮し、P2P技術の開発が世界的に遅れていると指摘。「技術者に責任を負わせる現状の法律実務は誤り」とする。

 P2P技術の健全な発展のために「硬直的な著作権法を含む法律や規定の改善など、日本の国際競争力向上のために立法を含めた諸制度の改善を行うべき」としている。

 また日本の産業界には「技術の発展が効率のいい流通インフラを実現し、コンテンツホルダーに多くの利益をもたらすということに対する理解が不足している」とし、理解を求めている。

画像 シンポジウムの様子

 研究会は9月22日、提言に関するシンポジウムを開催。江崎教授は「この提言はあくまで第1弾」とし、今後、コンテンツホルダーや司法関係者などさまざまな分野の視点も加えながらバージョンアップしていきたいと述べた。

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