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Windows XPのダウングレード権延長は“都市伝説”

» 2008年10月08日 15時19分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 あちこちのブログで騒がれているのとは逆に、MicrosoftはOEM版Windows XPの「ダウングレード」ライセンスを6カ月延長していない。

 Microsoftが実際にしたのは、OEMにWindows XPメディアを来年6月30日まで提供すると同意したことだ。わたしが言葉遊びをしていると非難する人もいるだろうが、そうではない。これは報道の正確さと呼ばれるものであり、ほとんどの人は誤解をしている。

 ブログ界は週末、うわさされていたダウングレード権延長をめぐって興奮と冷笑と非難で沸いた。誰もがMicrosoftに指を左右に振って「だからVistaは駄目だって言っただろ」と言っているようだった。複数のOEMが1月31日以降もWindows XPを提供し続けたがっていることに疑いはないが、そのために延長は必要ではなかった。

 ダウングレード権については、次のようなクレイジーな都市伝説がある。

  • Vistaと一緒に新たに生まれた
  • 1月31日に期限が切れる
  • OEMを通じてしか入手できない

 これは誤りだ。Microsoftは以前からOEM版Windowsのダウングレード権をボリュームライセンス経由で提供していた。Windows XP Professional OEM版はWindows 2000にダウングレードできる。同様に、Windows Vista BusinessとUltimateはWindows XP Professionalにダウングレード可能だ。Microsoftのダウングレード権ファクトシートによると、Windows XP Proは購入者または「エンドユーザーから許可を受けたOEM」がVista BusinessまたはUltimate向けライセンス付きPCにインストールできる。

 ダウングレード権に期限切れはない。少なくとも、現行OSが提供されている間は。わたしは昨日MicrosoftのPR担当者2人と「延長」という言葉のニュアンスについて話をしたが、公式の回答は以下のような弱々しいものだった。

Windows Vistaに移行する顧客が増える中で、われわれは彼らが自信を持って、できるだけスムーズに移行を実施できるようにしたいと考えている。ダウングレードメディアを提供する期間をもう数カ月長くすることは、小規模企業顧客に1対1のカスタムサポートを提供するWindows Vista Small Business Assuranceプログラムと同様に、そうした取り組みの一環だ。

 わたしはこの回答に不服だった。市場の状況に見合うものではないからだ。多くのOEMはWindows XPダウングレードメディアをコンシューマーPC向けに提供している。そこでもう一押ししたが、その回答も同じくらい不満が残るものだった。

一部のパートナーは、顧客がWindows Vistaに移行する間、適切なメディアで彼らをサポートできるようにしたいと思っている。アップグレード前のアプリケーションテストが長引くことがあると知っているからだ。すべてのパートナーがこのオプションを提供しているわけではないため、顧客はOEMやシステムビルダーに詳しいことを問い合わせた方がいい。

 いずれのコメントも不正確で、状況を十分に反映していない。確かにMicrosoftは主に企業向けにダウングレード権を提供しており、企業は相互運用性や資産管理のためにこの権利を行使している。IT部門は通常、組織のほとんどを1つのプラットフォームに統一しており、それは古いバージョンのWindowsの方が簡単だろう。

 Windows Vistaで異なるのは――この点では批判派は的を射ているが――ダウングレード権がコンシューマーにも拡大され、長期間提供されることだ。DellなどのOEMがXPを提供するのは、顧客がそれを求めているからだ。さらにすごいのは、1月31日以後に起きることだ。新しいバージョンのWindowsが登場してから2年以上たっても、OEMがコンシューマーに積極的にダウングレード権を提供するというのは前例がない。

 Microsoftは――わたしが知るところでは、一部OEMの要求で――Windows XPのインストールメディア提供を延長することを選んだ。延長期間は6カ月で、6月30日までとなる。この延長がなかった場合、OEMは新品PCと一緒に配布するXPメディアを買いだめしておいてダウングレードを提供するか、顧客はMicrosoftから直接メディアを要求してダウングレード権を行使できるだろう。

 物流面では、MicrosoftがXPメディアの提供を延長するのは、以下の理由から賢明だ。

  • 既に機能している流通とライセンスのメカニズムがある
  • コンシューマーがMicrosoftにダウングレードメディアを要求すれば、Microsoftのサポートコストが上昇する
  • 一番人気のバージョンはWindows Vista Home Premiumであって、ダウングレード権の対象となるBusinessとUltimateではない。また、OEMはXPディスクをたくさんでも少量でも簡単に予約できる

 それから、Windows 7は一部アナリストの予測よりも早く登場する。7のリリース目標が2009年の年末商戦だとすると、6カ月というXPメディア提供の延長期間は、Microsoftが7を完成させるころに終わる。これはあくまでもわたしの予想だ。

 一部では、MicrosoftがWindows Vistaをあきらめたとの声もある。ある意味ではその通りだ。Microsoftの「Windows. Life Without Walls」マーケティングキャンペーンはVistaを中心にしたものではない。もちろん、指を左右に振って「Vista. Walls Without Windows.(Vista。窓のない壁)」と批判する人もいるだろうが。

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