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“iPod課金”見送り ダウンロード違法化へ私的録音録画小委員会

» 2008年10月20日 19時41分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 iPodへの補償金課金は見送り、違法録画・録音物のダウンロードは違法に――文化庁長官の諮問機関・文化審議会著作権分科会の「私的録音録画小委員会」が10月20日、3カ月ぶりに開かれ、こんな内容の報告書骨子案がおおむね了承された。

 文化庁はこの骨子に沿って報告書案を作り、年内に開く予定の次の小委員会での議論を経た上で最終的な報告書をまとめる方針。ダウンロード違法化を盛り込んだ著作権法改正案について、来年の通常国会提出を目指す。

「iPod課金」「ダウンロード違法化」セットは断念

 文化庁はこれまで、(1)iPodやHDDレコーダーなど「記録媒体を内蔵した一体型の機器」への補償金課金(iPod課金)と、(2)違法録画・録音物のダウンロードを著作権法30条の「私的使用」の範囲から外し、違法とする(ダウンロード違法化)――という2つをセットにした著作権法改正を目指し、小委員会に制度改正案を提出してきた。

 だがiPod課金について、電子情報技術産業協会(JEITA)などメーカー側の委員が強く反対し、議論がこう着。「関係者の意見調整を図ったが、妥協点が見いだせなかった」(文化庁の川瀬真・著作物流通推進室長)ため報告書には両論を併記。「まだ調整をあきらめたわけではない」(川瀬室長)としながらも、結論は先送りする方向だ。

 その一方で、違法録音・録画物のダウンロードについては昨年10月の「中間整理」以来、「違法とすべきという意見が大勢だった」という見解を一貫して示してきた。

 委員でIT・音楽ジャーナリストの津田大介さんはダウンロード違法化に強く反対。今回の小委員会でも反対意見を述べていた。パブリックコメントも反対意見が半数以上に上った。

 だが権利者側の委員はダウンロード違法化に賛成しており、川瀬室長も「事前に非公式に意見を聞いたところ、権利者側は全員一致で賛成。メーカーや消費者団体代表は消極的賛成だった。委員会の大勢として、法改正すべきという方向」と話す。

 今回の小委員会では権利者側の委員から、iPod課金とダウンロード違法化問題を切り離し、ダウンロード違法化だけでも先に行ってほしい、という意見も出た。

 報告書には「違法録画・録音物のダウンロードは違法とすべきという意見が大勢だった」という中間整理の概要を記載。パブリックコメントの結果や、パブリックコメントを受けて行われた議論の結果なども盛り込んで今後の対策をまとめる。

来年は小委員会ナシ?

 小委員会の任期は来年1月に終了するが、今回結論が得られなかった、iPod課金を含む補償金制度についての議論はその後も続けていく方針。川瀬室長は「個人的な意見」と断った上で、任期終了後は新たに小委員会を開かず、非公式な調整の場を設けたほうがいいのでは、と話す。

 「来年以降どう継続するか、今の時点では案はないが、これまでの議論で論点は出尽くし、合意すべき点は合意でき、課題も整理できた。同じメンバーで『第2次小委員会』を開いて議論してもうまくいかないと個人的には思っている。非公式な利害調整の場を設けるのがいいのでは」(川瀬室長)

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