ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >

デジタル革命の原動力となる7つの「破壊的トレンド」

» 2008年10月24日 16時49分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 コンサルタント会社のComputer Sciences Corporation(CSC)が、注目すべき技術トレンドをリストアップした。その多くは既に実用化されているが、中には舞台裏でひそかに開発され、市場に出るべき時をじっと待っているものもある。

 もちろん、現在のような景気後退局面では、新しい技術トレンドがいつ登場しようと安全とは言えない。それでも1年がかりで報告書を作成したCSCの研究者アレックス・ファス、ポール・ガスタファソンの両氏は、インターネット経済推進の原動力となるのは何かについて論じている。こうしたトレンドは、世界にとって何を意味するのか。

 「これは新しい産業の形成を促し、インターネットによってもたらされた著しい生産性向上を拡大し、現存する社会的、経済的、政治的、文化的規範に挑戦する」と両氏は記した。

 96ページのCSC報告書(PDF文書)はこちらで参照できる。または以下で概略をチェックしてもらってもいい。

ニューメディア

 インターネットはコンテンツ消費と作成(時に同じ人々が担うこともある)のための格好の土壌となった。一部の人たちがWeb2.0と称するものは、RSSフィード、ブログ、MindTouchやSocialtextが提供するWikiなどの形でわれわれの身近に存在している。

 YouTubeは親会社のGoogleに次いで2番目にホットな検索サイトになった。Cisco Systemsなどの企業が従業員教育や情報提供にビデオを利用している。Brightcoveのビデオソフトを利用する企業もある。

 こうしたツールすべてに触発され、企業コラボレーションの新しい手法が登場している。

ソーシャルソフトウェア

 FacebookやMySpace.comといった新しいメディアソーシャルネットワークは2億を超すユーザーを集め、勢いが止まる気配はない。Twitterのようなバイラルなマイクロブログサイトは「つまみ食いできる」コンテンツを好むコンシューマーが相手だ。

 企業もこの流れに加わりつつある。ただしFacebookやTwitterではなく、IBM Lotus Connectionsやビジネス指向のマイクロブログのYammer、SocialCastなど、セキュアなソーシャルソフトスイートを使っている。

拡張現実

 こちらの方が進展のペースは遅い。確かにSecond Lifeには熱烈にハマっているユーザーがいるが、アバターがデジタル世界でもう1人の自分になってくれる仮想現実は、3次元コラボレーションをLotusに組み込もうとしているIBMの取り組みにもかかわわらず、登場が遅れている。

 CSCは、いずれ仮想現実と物理的現実が混ざり合い、拡張現実(AR)が浮上するとみる。例えばTC2が製造している身体スキャナのIntellifitは、ブースの中に入ると身体を360度の角度からスキャンし、自分に合った服を探す手助けをしてくれる。

 このスキャナはシリンダー状ホログラフ画像技術を使って全身をスキャンし、その人物と同じサイズの3Dアバターを作成する。インターネットで買い物をする時に、このアバターを使って試着できる。

情報の透明性

 つまり、どこにでもセンサーが存在するようになる。Google Androidの開発者、アンディ・ルービン氏はこれを歓迎している

 人々は薬のパーソナライズなど自分に合わせたサービスを使い、自分に関係した情報をすべて「見る」ことができるようになる。Google Health、MicrosoftのHealthVaultRevolution Healthはすべて、ユーザーがネットを使って自分の医療記録をもっとコントロールできるようにするのが狙いだ。しかしこれには長所も短所もあって身動きが取れないジレンマも見えてきた。

 透明性が高まる世界にあって、Webカメラを使えば自分のチームが何に取り組んでいるかをチェックでき、雇用主はこの透明性を利用してソフトウェアのコードを検査している。職場では、適切な措置を講じなければプライバシーが侵害されかねない。どこでも誰でも在宅勤務、だろうか。

新しい波の波

 無線技術、すなわちAppleのiPhoneやGoogleのAndroidのことだ。世界中のあらゆるデバイスでどんなアプリケーションも実行できるオープンアクセスだ。

 ファス、ガスタファソン両氏はこれについて次のように記している。「ワイヤレスの新境地で抜きん出ようとする競争は、確立された通信事業者であるラジオ、CATV、衛星放送事業者と、インターネットサービスプロバイダー、新興企業の間の周波数争いを巻き起こした」

 このバトルはワイヤレスが勝ち、位置情報Webサービスおよびコマースが台頭するだろう。どのプレイヤーが生き残れるかは分からない。Googleは既に700MHz帯の競売を混乱させ、VerizonをCブロック周波数帯の獲得に走らせた

 Googleはデスクトップを制したように、モバイルWebの支配権もライバルから奪取するのだろうか。それともMicrosoft、Nokia、あるいは別のどこかが主導権を握るのか。いずれ動的デジタル波はオープンアクセスであふれると、CSC研究者は予想する。

プラットフォーム刷新

 1台のマシンでソフトウェアを飛躍的にスケーリングして複数のOSを実行できるようにする仮想化は、着実に進化してきた。

 ユーザーがコンピューティングインフラとアプリケーションの料金を払い、ベンダーが自社のサーバとストレージアレイに顧客のデータを保存するクラウドコンピューティングも、コンピューティングモデルを変化させつつある。

 今はクラウドブームで、Amazon Web Services、Salesforce.com、IBM、そしてもちろんGoogleが台頭している。コンシューマー向けではMicrosoftのLive Meshも無視できない。

 さらに先に目を向けると、ナノテクノロジー、分子コンピューティング、量子コンピューティング、光コンピューティングがシリコンをしのぎ、ムーアの法則は時代遅れになるとファス、ガスタファソン両氏はみる。半導体に代わってはるかに小型で軽量な物質、すなわち原子、DNA、電子スピン、光が活躍する見通しだ。

スマート化する世界

 セマンティック技術により、コンピュータ機器が人間のようにテキスト、音声、状況に応じた手段を通じてパターンを解釈することが可能になる。

 例えば天気予報が雨ならユーザーにレインコートを着るよう勧めるなど、コンピュータが学習し、合理的な予想と助言を行う。

 両氏は現存するセマンティックWeb検索としてHakiaとMicrosoftのPowerset、およびデータとITシステム間の関係を見極めるエンタープライズアプリケーションを挙げている。予想行動ソフトは従業員の実績向上を支援するだろう。

 Web3.0では、ユーザーの入力とシステムの環境認識を通じてシステムが実行時に学習できるようになり、Web4.0の基盤が形成される。これは人とマシンが共に考え意思疎通する環境の中で、インテリジェンスに結び付く。

 「われわれが今後数年で向かう方向は、セマンティック技術と人々のネットワークの組み合わせになりそうだ。興味のある適切なデータをセマンティック技術で見つけ、それを自分で特定のプロジェクトに取り組んでいる人物に結び付ける」とファス氏は語った。

 これはいずれ恐ろしい人工知能、例えば心を読むソフトなどにつながるかもしれない。

Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.