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» 2008年10月27日 09時36分 UPDATE

「得体の知れないものになった」――「pixiv」急成長、社名も「ピクシブ」に

「ネットの世界にこんなにイラストがあるのか」と驚いてから半年。イラストSNS「pixiv」が急成長を続けている。運営会社は社名をとうとう「ピクシブ」に変える。

[宮本真希,ITmedia]
画像 上谷さん(左)と片桐社長。11月にはなくなるクルークのロゴは「貴重です」

 「得体の知れないものになった」――イラストSNS「pixiv」の急成長ぶりを見て、運営元クルークの片桐孝憲社長はこんな感慨をもらす。pixivに参加し、自ら楽しみ方を作り上げていくユーザーのパワーに圧倒されているという。「『こうしたい』と運営側が思ってもコントロールできない」

 昨年9月のオープンから約1年で、月間ページビュー3億、会員数30万を突破した。今年3月に10万ユーザーを突破した時は「ネットの世界にこんなにイラストがあるのか」と驚いていたが、半年でさらに3倍に増えた。

 pixiv開発者の上谷隆宏さんは「ユーザーが多すぎて実感がわかない」と、ピンとこない様子。サーバ担当のエンジニア・店本哲也さんも「3億PVをさばいている実感はない」というのが素直な感想で、「サイトの雰囲気や楽しさは開設当初と変わらない」と話す。

 3人とも、1年間ほとんど休みなく働き続け、サイトの運営やインフラ増強に追われてきた。アクセスが増える土日は特に忙しい。追加したい機能もあるが、忙しすぎて開発が後回しになっている。

 「どこに行っても“ピクシブさん”と呼ばれ、訂正するのが面倒」(片桐社長)だから、社名を11月1日付けで「ピクシブ株式会社」に変更する。同社の主な事業はpixivとシステムの受託開発。社員は10人で、年内にあと4人増やす予定だ。

pixivなぜ人気

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 pixivは、自分で描いたイラストを投稿したり、投稿されたイラストに評価・コメントを付けられるサービス。イラストは1日に8000〜1万枚投稿され、累計投稿数は約180万枚に上る。

 投稿しているのは会員の約3割で、残りの7割は「イラストに評価やコメントを付けて、お気に入りのユーザーを応援して楽しんだり、ランキング入りするのを喜んでいる」(片桐社長)という“ROMオンリー”のユーザーだ。

 トップページに表示されるランキング上位の作品は質が高いため、イラスト初心者は気後れして投稿しにくそうにも見えるが「そんなことはない」(片桐社長)。「企画」を見れば、初心者も数多く参加していることが分かるという。

 「企画」とは、特定のテーマのイラストを投稿し合って楽しむというもの。ユーザーが自主的に発案し、頻繁に行っている。例えば、pixivを擬人化したキャラを創作し合う「ピクシブたん」、宇宙人や惑星、ロケットなどSFっぽいイラストを描いて遊ぶ「pixivスペースオペラ」などで、片桐社長も「すべては把握しきれない」(片桐社長)ほどだ。

画像 ピクシブたん

 ユーザーはイラストを使ってコミュニケーションしており、ほかのユーザーのオリジナルキャラと自分のキャラを戦わせたイラストを投稿するユーザーもいる。

 「pixivはイラストを展示するだけのツールではなく、コミュニティーになっている。ユーザー同士がイラストをコラボしたものなど、pixiv上で新たな作品が生まれるから面白い」――片桐社長はpixivの人気の秘密をこう分析する。

 pixivはユーザーが作り上げていると実感している。「面白いサイトにしようと運営してきたが、実際に作り上げていくのはユーザーのパワー。『こうしたい』と運営側が思ってもコントロールできない。得体の知れないものになった」

「結構、衝撃を与えられたんじゃないかな」

画像 片桐社長と社員犬・チョビ。サーバが落ちたら吠える……なんてことはなく、サーバルームに毛が舞い込むため、店本さんは困っているという

 pixivの1カ月の売り上げは300万円ほど。バナー広告や企業の協賛を受けた「公式企画」などが収入源だが、運営費をまかない切れず、赤字が続いているという。「300万円じゃ全然無理。1000万円くらいあるといいんだが……。いいサイトにしていきたいので、開発費くらいは稼ぎたい」(片桐社長)

 ビジネスモデルを考えるのは得意ではないという。「ユーザーが考えてくれないかな」と片桐社長は冗談を飛ばしつつ、「いいWebサービスというのは、ビジネスとサービスが両立しているものだと思うから、黒字化したい」と真剣だ。

 「日本にとどまるようなサービスにしたくない」――目標は世界で、今もアクセスの約5%は海外からだ。「サイトの規模や影響力が大きい方が面白いでしょ? 日本のイラストや漫画は、映画で言うとハリウッドのようなもので、世界最高峰。日本のカルチャーが世界に広がればいい」(片桐社長)

画像 ハロウィンのイラストを投稿する公式企画は、スクウェア・エニックスなどが協賛

 10万会員を突破した今年3月、開発者の上谷さんは米Appleのスティーブ・ジョブズCEOの言葉を引いて「宇宙に衝撃を与えるサービスにしたい」と話していた。半年たち、「結構、衝撃は与えられたんじゃないかな。pixivによってイラストの流れが変わった」と自信を持っている。

 自信の裏付けとなっているのは、あるユーザーからもらったこんな言葉だ。「pixivが流行る前は、イラストが漫画よりもないがしろにされていたが、pixivによって1枚のイラストが持つ魅力が理解されるようになった」

pixivコモンズ、pixivブログ……新機能は?

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 追加予定の機能やサービスはたくさんある。イラストを使ったユーザー同士のコミュニケーションがより活発になるよう、イラストの利用ルール「pixivコモンズ」を11月にスタート。クリエイティブ・コモンズ(CC)や、ニコニコ動画の「ニコニ・コモンズ」のようなイメージだ。

 pixiv上の作品を使ったユーザー同士の2次創作が盛り上がるよう、CCの「改変」に焦点を当てたルールを定める予定。「作者が投稿したキャラをほかのユーザーが描いてもいい」「イラストを使って動画を作ってもいい」「転載してもいい」など、改変の範囲を細かく選べるようにする。

 「pixiv IDがあれば、ネット上の絵描き活動がすべてまかなえるよう、サービス群を構築していく」(片桐社長)計画だ。その第1弾が10月に公開したばかりの手書きイラストサイト「drawr」(ドロワー)で、第2弾はブログサービスになる予定だ。

 drawrは、pixivにイラストを投稿しないような人にも、「イラストは誰でも描ける」と知ってもらう狙いで開設した。イラストに慣れてもらい、今後pixivにも投稿してもらえれば――と考えている。約2万人が登録している。

 pixivのイラストを書籍化したり、DVD化できるようなサービスの提供も検討している。「会社の収入にはつながらなさそうだが、ユーザーの作品を流通に載せたい」(片桐社長)

 有料会員制度も今年中に導入したい機能の1つ。月額300〜500円ほど払えば、無料会員よりもイラストが閲覧しやすくなる予定だ。

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