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「一般人から許諾得るのが大変」――「NHKオンデマンド」の苦労

» 2008年12月10日 16時01分 公開
[宮本真希,ITmedia]
画像 NHKオンデマンド

 NHKの番組をネット配信する「NHKオンデマンド」が12月1日に始まった。開始から1週間の会員登録者数は8000人、動画の再生回数は7万5000回という。

 「景気も悪い上、あまり宣伝もしていない。出だしとしてはこんなものかな」――日本音楽著作権協会(JASRAC)が12月9日に開いたシンポジウムでNHKの関本好則特別主幹はこう自己評価する。

 テレビ番組をネット配信するには、出演者から許諾を得る必要がある。俳優や音楽アーティストなどプロに関しては、JASRACなど権利者団体と交渉した。「自分たちで音楽配信事業をしたいから」と許諾を断られるケースもあったが、おおむね交渉はスムーズに進み、ほぼ許諾を得られたという。

 一方、ドキュメンタリー番組などに出演した一般人から許諾を得る作業に苦労しているという。「国内では年間300万人が引っ越しする」ため、過去の出演者を探すだけで一苦労だ(「過去のNHK番組に出演した人、探してます」――CPRA、番組2次利用で)。

 出演者が見つかっても許諾を得られない場合もある。例えば、過去に出演した番組を配信されると「昔貧しかったことや不良だったことがバレるから嫌」といった理由で断られるケースもあるという。

番組配信本数はBBC「iPlayer」並み

画像 NHKの関本好則特別主幹

 NHKオンデマンドは、過去に放送したドラマやドキュメンタリーを配信する「特選ライブラリー」と、ニュースなど1週間以内に放送した番組を配信する「見逃し番組」の2つのメニューがある。特選ライブラリーではNHKスペシャルや大河ドラマ、見逃し番組では「NHK杯フィギュア 女子シングル」などが人気だ。

 テレビ番組のネット配信は日本より欧米の方が進んでいると言われており、英BBCが2007年に始めた「iPlayer」は約1200本の過去番組を配信しているという。NHKオンデマンドでもすでに約1200本の過去番組をそろえており「8カ月間ほどの準備期間でこれだけの本数を用意できたことは奇跡に近い。著作者団体の協力のおかげだ」とアピールする。将来は3000本ほどを見られるようにする予定だ。

 一方、今後については「過去の番組の2次利用だけでなく、新しい目玉を作らないと普及しない」と気を引き締める。「NHKがアナログ衛星放送を始めたとき、絶対に成功しないと言われていたが、ものすごいスピードで伸びた。知恵と工夫が必要だ」

 収益面では「3年で単月黒字にもっていき、4年で赤字を回収する」と意気込む。月額1470円の見逃し番組を見放題プランを利用する会員数が40万を越えれば単月黒字化できる見込みだ。

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