「見通しは明るいと、僕らは思ってるんですけどねぇ」――「ニコニコ動画」が1000万ユーザーを突破し、人気は健在だ。
その一方で運営は赤字続きで、月間1億円の赤字が出ているという。世界同時不況はネット業界も例外ではなく、ニコ動を取り巻く環境は厳しいはずだが、ニワンゴの取締役の西村博之(ひろゆき)氏は冒頭のように強気だ。
12月12日にスタートする新版「ββ」(ダブルベータ)では、パートナーのコンテンツ企業を121社に増やしたほか、コストをかけて新機能を大量に詰め込み、「だれも欲しいと言っていないサービス」まで投入した。ββの発表会「ニコニコ大会議2008冬」には前回の4割増しという7000万円もの予算を投入している。
パートナー企業強化やββの新機能の狙いは何か、赤字続きの運営の見通しは、ニコ動は何を目指すのか――ひろゆき氏に聞いてみた。
――赤字なのに大丈夫ですか? 「ニコニコ大会議」もまた予算が増えていたようですが、あんなに派手にやっちゃって(ひろゆき胸像、トルシエ登場、桜庭PV――赤字でも豪華なニコニコ大会議)。
まずいんじゃないですかね。僕は来年は質素に行った方がいいと思うんですよねぇ。ドラゴンボールみたいなもんで、強い敵がいたらもっと強い敵、みたいなのになってる。
そのループにはまっても仕方がないじゃないですか。本業それじゃないのに。あれは余興なんで。前回を超えなきゃいけないという思い込みがみんなにあって。黒字になるまでは細々とやったほうが……。
――それなのになぜあんな派手に。
何だかんだ言ってドワンゴという会社がお祭り好きですからね。あといろいろ思惑はあるんです。例えば“ネット上で流行ってる感”を出したいとか。
「ニコニコチャンネル」(パートナー企業などの公式動画チャンネル)に入ってる企業さん向けに、「ネット上ではこんなふうに流行ってるんですよ、いろんな会社さんも興味持ってるんですよ」と分かりやすく世間に伝えるには、ああいうのをやった方が伝わりやすいのではないかという。
まぁ、費用対効果は考えなかったんですけどね。
――「車が買える値段」というひろゆき氏の胸像まで展示していましたね。
僕に焦点当てて僕が有名になっても仕方ないのになぁ……。ユーザーやコンテンツが人気を博したり、一般のスタッフが評価されるのはアリだと思うんですが、僕は別に出さなくてもいいじゃないですか、といつも思ってるんですけど。
――ββの目玉機能として、数十万人で集まってチャットしたり、「ニコニコ生放送」会場に誘導する「ニコニコ広場」が発表されました。このサービスの狙いは。
受動的な人でもそれなりに面白がれるものを作りたいというのがそもそもの発端だったんです。
ニコ動って「特定の動画を見る」という目的のままに動いちゃってるんで、動画を見終わった後、検索能力が高い人は面白い動画を見つけることができると思うのですが、そうでない人には難しい。
そういう人もランキング見に行ったりはしてると思うんですけど、いまのニコ動のトップページ見てもどこにランキングがあるかよく分からない状態で、トップページ見たけどよく分かんないよね、とか、公式動画を見ても面白いのが探せないで帰ってしまう人がいたと思う。
ニコ動は、ネットの情報に詳しい人はすでにわりと押さえたと思うので、そうでない人がどうやったら面白さを見つけるか、どうすれば使いやすいと感じてもらえるかという段階。一般化を目指すなら「『ニコニコ動画』というのが最近話題になっているから見てみよう」と初めて来て「で、何すればいいの?」という人を拾っていかないと。
で、「とりあえず来たら面白いものが見られるし、面白い動画を教えてもらえるよ」という……人が大勢いてぺちゃくちゃしゃべっているような感じで暇つぶしできる場を作ろうと思って。Yahoo!JAPANのトップページに行ったらニュースが並んでるみたいな感じで。
あとは「大勢いるものを作ると面白いんじゃね?」という。生放送の同時接続ユーザー数が1万人、2万人と増えていって「これ増やしたらもっと面白いんじゃね?」って、技術者にある、スペックを上げたら面白くなる競争。
動画を見るという経験だけでいうと「テレビでいいじゃん」というのが根っこには残り続けていると思うので、大勢の人がメッセージをリアルタイムでやりとりしていて、ぼーっと表示しているときに地震が起きたら「わー地震だ」というふうに、人がざわざわ動いている感じを実現しているネットメディアってほかにないと思うんですよ。大勢がリアルタイムに反応しているというメディアはほかにないので、それが面白いと思う人がいるとすれば、ニコ動の「広場」しか満足は得られないので。
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