英語に苦心 大人なVOCALOID「巡音ルカ」ができるまで(1/2 ページ)
「初音ミク」「鏡音リン・レン」に続いて1月30日に発売された、音声合成ソフト「キャラクター・ボーカルシリーズ」第3弾の「巡音ルカ」は、VOCALOID初の日本語・英語バイリンガルで、シリーズ初の「成人」だ。
ミクが16歳、リン・レンが14歳だったのに対して、ルカは20歳という設定。声も大人びている。「お酒やたばこもOKの年齢。ディスコ、ナイトクラブといった、ミクやリン・レンでセーブされていた夜の大人の曲も作ってもらえれば」と、開発したクリプトン・フューチャー・メディアの佐々木渉さんは期待する。
イメージは、アジアのエキゾチックな歌姫。ルカの歌を英語で聴いてくれるであろう欧米のユーザーに受け入れてもらえるよう、ミステリアスなキャラクターを目指した。
カタカナ英語の限界を打破したかった
ルカの構想を始めたのは、「初音ミク」考案前の2007年初旬。ヤマハが「VOCALOID2」を発表した直後で、「日英バイリンガルのVOCALOIDを作るにはどうすればいいだろう」と考えていた。
「VOCALOIDのカタカナ英語に限界を感じていた」――ミクやリン・レンのような日本語データベースのVOCALOIDに英語歌詞を歌わせたい場合、「it」なら「イット」、「the」なら「ザ」と入力するなど発音の“日本語化”が必要。英語としては不自然なカタカナ発音になってしまう。
英語を自然に発音させるには、日本語データベースとは別に英語データベースを持たせればいいのだが、英語データベース制作は日本語よりも手間と労力がかかり、実現までのハードルは高かった。
英語版VOCALOIDの歌手が「怒っていた」ほど大変
英語でも日本語でも、データベース制作の際は、声を提供する人が呪文のような歌(非言語スクリプト)を歌って音声を収録する。日本語の場合は、母音、子音から母音、母音から子音、母音の終わり方という音声パターンを歌って録音。収録は6~8時間ほどで終わる。
だが英語は、日本語と同じパターンに加え、子音から子音、子音の終わり方というパターンも必要。音のバリエーションも多く、音声データの総量は日本語の4~5倍に上り、録音には「果てしなく時間がかかる」。
録音は日本語版より早口で行う必要があり、声の提供者の負担は日本語版よりずっと大きい。「英語版VOCALOID『SWEET ANN』の録音時の生データを聞いたことがあるが、途中で歌手の方が怒っていた」ほどだ。
声を誰に提供してもらおうか――歌手の起用も検討したが、声優のほうがふさわしいと判断した。アニメやゲーム音声などさまざまな収録に慣れているキャリアのある声優なら、長時間の収録でも耐えられると考えたため。英語を話せる声優を探し、数人いた候補から浅川悠さんを選んだ。
当初は浅川さんの声の日本語VOCALOIDを発売し、その後英語ライブラリを追加するという計画だったが、スケジュールの関係などで「初音ミク」「鏡音リン・レン」を先に発売。ルカは、企画から2年越しの09年1月に、日本語英語両対応で発売されることになる。
「広い自由さを持つ声に」 音の調整は難航
ルカは「ミクやリン・レンよりも、広い自由さを持つ声にしたかった」という。成人に設定してミクやリン・レンと差別化。「日本人の声が10歳ぐらい若く聞こえる」ような欧米の人からも受け入れてもらえるよう、「大人びているがかわいいとも思える、オリエンタルな魅力のある声」を目指した。
浅川さんには「キャラを作ってもらうのではなく、できるだけリラックスしたダウナーな声」をリクエスト。最初の収録は07年12月ごろ行っていったん中断し、08年の4月に再開。その後9月まで5回に分けて収録した。収録は計15~16時間にわたったという。
英語VOCALOIDの制作は初めて。収録後の調整――音素や波形の調整、ノイズ除去などの作業――にかなり手間取ったという。
最も大変だったのは、英語の“鳴り方”を確認しながら調整していく作業だ。英語辞書から約2200語の英単語と発音記号を抽出し、使用頻度でランク付けした資料を作成。まずは常用単語できれいな鳴り方を固め、さらに使用頻度の低い単語でも鳴り方がおかしくならないよう調整するという作業を繰り返し、時にスタッフ間でもめながら、発売直前の12月中旬まで何度も方向性を補正した。
「ACT2がなければ、ルカはできなかったかもしれない」――調整には、ルカの前に開発したリン・レンの修正版「ACT2」の経験が生きた。
リン・レンは、ミクより早口に録音した声から音を切り出していたが、英語版はもっと早口。「発音Aから発音Bへ切り替わる際に現れる、一瞬の変化を0.5秒以上の長さで切り出す」など日本語よりシビアな条件が付くこともあり、ACT2の経験が役立った。ACT2制作時に作業効率を上げるためにまとめていたガイダンスなども利用し、開発期間を短縮した。
巨乳で“大人”を表現
キャラクターデザインは従来通りKEIさんが担当。クールな表情と白い肌、凜としたまなざしという冷たいイメージと、情熱を感じさせるピンク色の髪を共存させた。VOCALOID初の巨乳キャラであることも注目を集めた。
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