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ゲーセンの「構造不況」 タイトーが置かれた厳しい状況

» 2009年02月13日 11時17分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「ゲームセンター業界全体に、構造問題がある」――スクウェア・エニックスの和田洋一社長は2月12日に開いた決算会見の席で、子会社タイトーが運営するゲームセンターの不振の背景に、業界の構造問題があると話した。

画像 ゲームセンター事業は各社とも厳しい状況(スクウェア・エニックスの決算資料より)

 「AM等事業」に計上されているタイトーグループ(主力はゲームセンター運営)の2008年4〜12月期の業績(のれん代償却費含む)は、売上高が前年同期比15%減の437億4800万円、営業損益は8億7100万円の赤字(前年同期は16億4000万円の営業黒字)に転落した。

 他社も厳しい状況だ。セガサミーホールディングスのアミューズメント施設事業は、同期に49億7000万円の営業赤字を計上。バンダイナムコホールディングスの同事業も、同期の営業利益が前年同期比95.2%減の4800万円にとどまった。

業界の構造問題とは

 ゲームセンター不況は「Wiiなど家庭用ゲームに客を取られた」と解説されることもあるが、和田社長は、問題は客の動向とは別のところにあるとし、「業界とタイトーそれぞれに構造問題がある」と指摘する。

 業界の構造問題は「景気がいいと、全員が同じ所に走ってしまう」点に原因があるという。「これまで景気が良かったため、業界全体で、店舗や機械の供給過剰が起きていた」。店舗の家賃も“バブル状態”。「同じ場所を貸すにも、ゲームセンターに貸すのとそうでない所に貸すのとレートが違った。それでも出店競争していた」という状況だった。

 店舗については、タイトーは「2年前から整理を始めていた」。セガやバンダイナムコも店舗の整理・縮小を進めている。

 ゲーム機も供給過剰で、オペレーター(ゲームセンター経営者)の経営を圧迫しているという。「メーカーが高価な機械を多く販売してきたが、原価が大きすぎてオペレーターの損益が悪化し、ファイナンスがつかなくなったオペレーターが撤退するという悪いスパイラルに入っている」

タイトー不振の原因は

 タイトーの業績は昨年秋以降急激に悪化し、冬から底割れしたという。「昨年下期から厳しく、11月以降はつるべ落としの状況」

 ゲームセンターの運営、ゲーム機の販売でそれぞれ、業界の不況が同社の経営にダイレクトに響かないような戦略を立ててきたが奏功しなかった。「客の動向というよりは、業者にふりかかったクレジットや為替の問題」

 ゲームセンターは、オペレーターとリスクを分け合う狙いでフランチャイズ展開を推進してきたが「世界同時不況でオペレーターのファイナンスがつかなくなり、自社店舗以外への展開ができなくなった」という。

 秋口以降、OEMのゲーム機の発注がストップ。オペレーターにゲーム機の購入余力がなくなったため、自社生産のゲーム機販売も振るわず、利益に大きく影響した。

 自社のゲームセンターに他社のゲーム機を積極的に仕入れて回転を速め、その後中古市場で販売し、最終的にはアジアを中心にした海外に売り出すという計画もあったが「円高で価格競争力がなくなり、完全に出口がふさがれた」

今後は「当たり前のことを当たり前にやっていく」

 今後、タイトーを含めた業界全体が立ち直るためには、「店舗と機械の需給を是正するという当たり前のことを当たり前にやっていく」ことが必要と話す。

 「ゲームセンターは業界としてはなくならない。1〜3年かかるだろうが需給バランスを是正できれば、全体のサイズは縮むかもしれないが、事業としては十分成長できる」

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