日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の橋本孝之社長は2月19日、2009年の同社方針を説明した。景気低迷が続く中、迅速で即効性のある企業支援に加え、「トンネルを抜けた後の世界」の新ビジネスを創造・支援する「Smarter Planet」戦略を推進する。橋本社長は「厳しい経済情勢が続くが、前向きにとらえている。変化のある時に新しいビジネスが生まれるからだ」と話した。
橋本社長は今年1月1日に就任したばかり。2008年は金融危機が深刻化した10〜12月期にハードウェア販売が落ち込むなどして売り上げが落ち込んだ一方、史上最大級のプロジェクトと言われた三菱東京UFJ銀行のシステム統合を完了、日本航空の新整備業務システム「JAL Mighty」の全面稼働といった大型プロジェクトを成功もあった。橋本社長は「負の遺産があるわけではなく、前向きに進めていける」と話す。
当面は不況が続くとみられる中、待ったなしの対策を迫られている企業向けに、IBMビジネスコンサルティングサービスと共同で「緊急オファリング」(対策提案)を提供する。抜本的なコスト削減や全社規模での経営資源の再配置など、損益に短期間かつ直接効果があるコンサルティングとサービスを体系化するもので、最短2週間で提案するという。迅速なコストカットを支援する「引き算のソリューション」だ。
一方で、IBMが打ち出した新コンセプトが「Smarter Planet」。金融危機が株主資本主義と利益至上主義を揺るがし、不況を脱したその先に、環境問題などを強く意識した「新しい価値観」が醸成される──との見通しのもと、この「トンネルを抜けた先の世界」でのビジネスを展開・支援する。
Smarter Planetでは、インターネットの普及で世界が「スモール化」「フラット化」し、さらに世界は「スマート化」しつつある、とみる。スマート化とは、RFIDなどの浸透により人の周囲がデジタル化されていく「機能化」(Instrumented)、ネットワークにより「相互につながる」(Interconnected)、モノやプロセスの「インテリジェント化」(Intelligent)──という、進みつつある「3つのI」として現れる。「これらすべてをつなぎ、ある洞察を導いて新しいビジネスを作り出していく」という。
例えば日本の道路渋滞で失われるのは38億時間、GDPの2%分に相当する12兆円という試算があるなど、解決すべき非効率は多い。Smarter Planetは、デジタルインフラと物理インフラをITで一体化し、こうした非効率をあらゆる分野で改善していくことで「より賢い地球」を目指していくもの。例えばロンドンやシンガポールで、朝のラッシュ時に都心部に乗り入れる車に課金することで渋滞を緩和する対策が採用されているが、これにはETCを導入することでスムーズな課金を実現している──といった例を挙げている。
Smarter Planetに基づき顧客企業を支援する拠点「Japan Business Solution Center」(JBSC)を3月2日に大和事業所(神奈川県大和市)に開設する。世界の拠点と連携し、IBMが持つ「スマート」なソリューションや技術を紹介する。
企業の経営環境は厳しく、未来に向けた戦略的な投資もしづらい状況にあるが、橋本社長は「われわれとしては強い確信を持っている」と話す。社長就任1年目の2009年を「次代への礎(いしずえ)を築く年にしたい」と意気込んでいた。
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