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» 2009年06月01日 14時25分 UPDATE

日本のWebは「残念」 梅田望夫さんに聞く(前編) (1/3)

「ウェブ進化論」から3年。梅田望夫さんは日本のWebが「米国とはずいぶん違うものになっちゃった」と残念がる。Twitterの“はてブコメント事件”についても聞いた。

[岡田有花,ITmedia]

 2006年2月、梅田望夫さんが著した「ウェブ進化論」(ちくま新書)は、インターネットの可能性やGoogleの力をポジティブに語り、国内の「Web 2.0」ブームに火を付けた。

 その後も「フューチャリスト宣言」(新潮新書)、「ウェブ時代をゆく」(ちくま新書)などWeb関連の本を立て続けに出版。テレビやネット媒体、新聞などの取材にも精力的に答えていた。

 だがここ最近は、Webについて語ることは少なく、昨年11月にはTwitterに書き込んだコメントが炎上するという“事件”も起きた。

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 一方、今年5月には、最新刊「シリコンバレーから将棋を観る」(中央公論新社)を出版。その名の通り、将棋観戦の魅力を語った本で、帯にはこうある。

 「わたしが本当に書きたかったのはこの本でした」

 同書で彼は、“指さない将棋ファン”として将棋を語り、羽生善治さんなど第一線の棋士の努力と天才性を「シリコンバレーの技術者と通じる」と賞賛。リアルタイム観戦記を自ら執筆し、Webを将棋という日本文化を広げる媒体として位置付ける。

 3年前、Googleを賞賛し、Webの可能性を力強くに語った梅田さんが今、Webについて語ることを休み、一流の棋士たちに魅了されている。

 梅田さんは日本のWebに絶望し、将棋に“乗り換え”てしまったのだろうか――記者は新刊からそんな印象を受け、梅田さんに疑問をぶつけた。

「ずいぶん違う物になっちゃった」

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――最近梅田さんは、日本のネットについてあまり語っていらっしゃいません。新刊を読んでいると、「日本のインターネットはGoogleのようにはなれないから、今度は日本の将棋に期待する」と思われているような印象を受けました。

 1つ誤解があるのは、僕は去年、「私塾のすすめ」(ちくま新書)という本を出したとき、「サバティカル(長期研究休暇)に入る」と宣言しました。

 ウェブ進化論から7冊の本を出し、累計80万部出た。その間、取材も受けるしブログも書いた。2年半ぐらいたくさん書いた。取材もたくさん受けた。対談も山のようにした。誰と会っても何を書いてもどっかでしゃべったことと同じになっちゃうという危機感があって。

 その時点で考えたこととかは相当書いた。何を書いてもどこかで書いたことのリフレインになってしまうというぐらい、完全燃焼と言うぐらいに激しく仕事したので、しばらくものを書かないと。

 僕はかなり長期的なトレンドや議論に興味があるんです。「この会社が出てきて面白いですよ」という個別の話は、僕以外の人が書けばいいと思ってます。今もサバティカルで、お休み中。この本(シリコンバレーから将棋を観る)が出たので「サバティカルに入っていない」と勘違いする人もいるんだけどこの本が出たのが間違いなんです。

 今のネット空間について、意図することがあるから語ってないわけではありません。

 とはいうものの残念に思っていることはあって。英語圏のネット空間と日本語圏のネット空間がずいぶん違う物になっちゃったなと。

 僕自身あんまり評論家ではないからね。評論家と思う人もいるかもしれないけど、僕自身ははてなの経営にも関わっているし、基本的には行動する中で思考していく人間なので。

 客観的にものを見ているようで、自分の好みとか、こうなってほしいなぁという願望とか期待を込めたものの書き方をする人間でありますから。

 仮に今のWeb空間がネガティブなものになったとしても、それを分析しようというモティベーションがそもそもないんですよ。

日本のWebは「バカと暇人のもの」?

――日本と米国のWeb空間は何が異なり、梅田さんの言う「ネガティブ」とは、何を指しているんでしょう。

 そうですね……。「ウェブはバカと暇人のもの」(光文社新書、中川淳一郎著)という本が出たでしょ。まだ全部は読んでいないんだけど、前書きを読んだら僕のことばかり書いてあってね。

 「梅田さんのウェブ進化論を否定するわけじゃないけど、彼が書いているのは頭の良い人の世界。わたしがこれから書くのは普通の人とばかな人の世界」という書き方があったの。その上で、日本語圏のインターネット空間で、著者の方が経験した物語みたいなのが書いてあって。

 ウェブ進化論が出て以来、アンチの本とかずいぶんたくさん出ていて。全部は読んでいないんだけれど、彼の書き方はフェアだなという感じはちょっとしたんですね。そう言われればそういう切り分け方はあるんだろうなと思った。

 そういう意味で、ぼくが将棋に魅せられるというのも、ものすごく優れた人たちが徹底的に切磋琢磨するプロフェッショナルな世界に惹かれるから。そういうところでやってる人がものすごく努力して至高の世界に行く。そういう中で最高峰の世界をみせてくれるじゃない。そういうのに惹かれるから。

 英語圏ネット空間は地に着いてそういうところがありますからね。英語圏の空間というのは、学術論文が全部あるというところも含めて、知に関する最高峰の人たちが知をオープン化しているという現実もあるし。途上国援助みたいな文脈で教育コンテンツの充実みたいなのも圧倒的だし。頑張ってプロになって生計を立てるための、学習の高速道路みたいなのもあれば、登竜門を用意する会社もあったり。そういうことが次々起きているわけです。

 SNSの使われ方も全然違うし。もっと人生にとって必要なインフラみたいなものになってるわけ。

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