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» 2009年11月25日 22時45分 UPDATE

ノーベル賞受賞者らが仕分け批判で集結 「世界一目指さないと2位にもなれない」

科学技術予算の削減を判断した事業仕分けについて、利根川進氏や江崎玲於奈氏などノーベル賞受賞者らが緊急声明を発表。東大で会見し、見直しを訴えた。

[岡田有花,ITmedia]
画像 左から発起人の石井紫郎氏、江崎玲於奈氏、利根川進氏、森重文氏、野依良治氏、小林誠氏

 「事業仕分け結果は、科学技術に関わる人材を枯渇させ、取り返しのつかない状態を引き起こす」――利根川進氏らノーベル賞を受賞した科学者など6人が11月25日、政府・行政刷新会議による事業仕分け結果を批判する緊急声明を発表した。6人は東京・本郷の東京大学で記者会見を開き、慎重な議論と科学技術の重要性を訴えた。

 6人は利根川氏と江崎玲於奈氏、小林誠氏、野依良治氏、フィールズ賞受賞者の森重文氏、発起人で東大名誉教授の石井紫郎氏(法制史)。益川敏英氏も賛同している。

 事業仕分けでは、次世代スーパーコンピュータ開発や大型放射光施設「SPring-8」、研究への補助金、国立大学法人の運営費など、科学技術・学術関連予算の多くが削減・凍結と判定された。

 声明は、仕分け結果が「現政権が目指す科学技術立国とは逆の方向を向いている」と強く批判し、若者の科学技術離れや研究者の海外流出を懸念。仕分け結果をそのまま予算に反映するのではなく、科学技術の専門家の意見を聞いた上で適切な配慮するよう要望。「将来に禍根を残すことのないよう、強く望む」としている。


画像 会見は東大の「小柴ホール」で開かれた。176席は学生や教員、マスコミなどで満席。立ち見もあふれ、会場に入りきれない学生などは外のディスプレイで動画のライブ中継を見ていた
画像 遅れて入った江崎氏が「いっぱいですからもう入れませんと言われて帰ろうとした」とジョークを飛ばすと登壇者も会場も爆笑

「世界一を目指す意気込みでやらないと、2位にも3位にもなれない」


画像 「テレビでは、信じられない非科学的なことをやってる。科学者と称しているけど科学者じゃない人が大衆をたぶらかしている」と利根川氏。科学者の海外流出を懸念する声明の内容については「研究はどこでやっても構わないと思う」とチクリ

 発起人の石井氏は、「仕分け作業で日本の科学技術を支える若い人に『科学者はやっかい者』という負のメッセージが進行している」と懸念し、声明を作成して賛同者を募ったという。

 江崎氏は日本人にノーベル賞受賞者が少ないことを引き合いに、「日本の科学技術は一流ではない。ここでお金を出さないとますます悪くなることは明らか」と皮肉交じりに話した。

 理化学研究所が開発を進める次世代スーパーコンピュータについて、事業仕分けの際に「本当に世界一になる必要があるのか、2位ではだめなのか」という意見が出たことに対し、利根川氏は皮肉を交えて反論。「世界一を目指してもなれないもの。世界一を目指す意気込みでやらないと、2位にも3位にもなれないことを理解すべきだ」


画像 野依氏(手前)

 理研理事長も務める野依氏は「科学技術や教育は短期的な費用対効果で評価されるべきではない。もう少し見識ある議論があって然るべき。スパコンや加速器はインフラ。国として整備が必要だ」と訴えた。

 理研が天下りを受け入れているという批判には、利根川氏が「国の研究機関に役人が天下る必要はないと思っているが、天下りがあるからスパコンはストップすべきというのはおかしい」と反論。天下り問題とスパコン開発は「仕分けしてもらわないといけない」と切り返した。

画像 江崎氏は、科学と技術は分けて考えるべきという持論を展開。「科学は未来をたずねて新しい知識を得ようとする。技術は国民の生活水準を上げる。そういう“仕分け”もきちんと考える必要がある」(江崎氏)

 科学と技術の必要性を社会に訴えていくことも「科学コミュニティーの責任」と江崎氏は指摘する。「日本の科学者も米国のように産業界と協力し、スパコンがどういう風に使われているかなどをPRする必要がある」という考えだ。

 利根川氏は「日本の大新聞の科学部は米国と比べて専門知識がない」と指摘。科学の重要性を広く理解してもらうためには「マスコミにもっと科学を理解してもらわないと」と注文を付けていた。

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