自身の新たな著作の解説で「人々はインターネットで愚かになる」という持論を強調しているニコラス・カー氏は、米Googleに関しても同じ趣旨の論文をThe Atlanticに投稿した。
カー氏は、ユーザーが検索しようとしているものを「Google Suggest」が予測しようとするのをうとましく感じているようだ。Google Suggestは、ユーザーがGoogleの検索ボックスに文字を入力すると、検索語の候補をリアルタイムで表示する機能だ。
ユーザーは目的のページに素早く移動するために、クエリの一部の文字あるいは単語だけを入力し、表示された検索候補をクリックすることも多い。この機能はBingとYahoo!にも用意されているが、同氏によると、これはわれわれを怠け者にするようだ。Googleに頼り過ぎるようになる恐れもあるという。
カー氏は次のように記している。
ソフトウェアプログラマーたちは、個人の代理という役割を新たな次元に移行させた。彼らはプログラムをより“ユーザーフレンドリー”にすることに血道を上げ、知的な探索、さらには社会との接触という私的なプロセスの筋書きを書いているのだ。われわれはGoogleのキーワード候補をクリックするときに彼らの筋書きに従い、Facebookで自分自身および自分の交友関係を説明するために分類リストから選択するときに彼らの筋書きに従うのだ。これらの選択肢は便利なものだが、自分で考えたものではない。これらはパーソナル化を装った一般化なのだ。
Googleのエリック・シュミットCEOはかつて、“自分が何を入力すべきか”をGoogleが教えられるようになる日が来るのを楽しみにしていると述べた。わたしの解釈が正しいとすれば、この発言は、“自分が何を考えるべきか”をGoogleが教えるようになるということも意味する。シュミット氏によると、こういったサービスは、同氏が“かねがね開発したいと思っていた”製品だという。わたしはそれを楽しみにしているとは言えない。
カー氏はGoogle Suggestのことを、何事にも干渉する“うるさい母親”のように思っているようだが、オンライン上の巨大な情報の渦の中から求める情報を照らし出してくれるスポットライトのように思っている人もいる。
例えば、観た映画の中のあるせりふが気に入っているのに、それを一語一句、正確には思い出せないとする。それが有名なせりふであれば、わたしがそれをGoogleの検索ボックスに入力し始めると、そのせりふがオリジナルの完全な形で表示されるだろう。
これは、わたしが何を考えるべきか指示しているのだろうか、それともわたしの思考を完結する手助けをしているのだろうか。読者がどう判断するにせよ、わたしは満足だ。なぜなら、正確なせりふが分かり、さらにSuggest機能を通じて、その映画について詳しい情報が載っているWebサイト(IMDbの場合もあれば、非公式サイトや大して役に立たないサイトの場合もあるが)に行くことができるからだ。
カー氏は「Google思考」と批判するが、わたしは大いに時間を節約してくれるものだと思う。Googleなどのソフトウェアプログラムは一種の道具、つまり、物事を処理するのに役立つデジタル万能ナイフのようなものだとわたしは考えている。
Googleの提案は金科玉条ではなく、わたしはあまり真剣に受け取らないようにしている。カー氏、そしてITに難癖をつけてばかりいる一部の人々の問題はそこにある。
カー氏はさらに次のように述べている。
わたしには少し気味悪く感じられる。わたしが入力中の文字に合わせてGoogleが検索語を表示するたびに、同社がわたしのあらゆる動きを監視しているのではないかという気になるのだ。
それが気味悪いと思うのであれば、わたしが何年も前から予想しているように、司法省などの取り締まり当局がプライバシー問題でGoogleにきついお仕置きをするまで待つしかないだろう。
Suggestは現在、ユーザーから最も近い都市に合わせてカスタマイズした検索結果を表示するようになっているが、いずれ各ユーザーに対してさらにローカル化されると予想される。
Googleは検索のカスタマイズ機能を提供しており、それを有効にしたユーザーが利用できるようになっている。
Google Suggest機能の一環としてパーソナライズされた検索候補がGoogle検索ボックスに表示されるのを見てみたいものだ。
そうなればものすごく便利だろう――そして、自分の思考をGoogleに委ねるのはおろか、自分の個人データをGoogleに委ねることさえためらう人々にとっては、ものすごく不気味だろう。
補完機能を組み込むのが好きなGoogleのことだから、Suggest機能と検索のカスタマイズ機能がいつかGoogleの検索ボックスの中で出会うのではないかとわたしは予想している。
企業向け情報を集約した「ITmedia エンタープライズ」も併せてチェック
Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.
Special
PR