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上場のパピレス「iPadなど新端末で市場拡大を期待」──天谷社長

» 2010年06月24日 17時35分 公開
[高杉貴,ITmedia]

 電子書籍サイト「電子書店パピレス」を運営するパピレスが6月23日、大阪証券取引所ジャスダック市場に新規上場した。iPadなど電子書籍の閲覧に適した端末の登場が相次ぎ、株式市場では電子書籍関連銘柄の人気が沸騰している。パピレスへの関心も高く、この日は買い注文が先行し、売買が成立しなかった。天谷幹夫社長は上場会見の会場に2台のiPadを持ち込んでデモを見せたうえで、「新しい端末が普及すれば、市場拡大のチャンスとなる」と強調していた。

photo iPadを使い、自社サービスを紹介する天谷社長

 買い気配値は、6210円まで切り上がった。公募・売り出し価格2700円の2.3倍にあたる。取引終了直前には、売り注文が約10万株に対して買い注文が約20万株あり、差し引き10万株ほど買いが優勢だった。6210円で計算した時価総額は約80億円。漫画閲覧ソフトのセルシス(23日終値ベースで53億1900万円)や携帯電話向け電子ブック閲覧ソフトのプライムワークス(同74億4900万円)を上回る。

 天谷社長は株価について、「市場が決めることで、私どもが申し上げることはありません。ただ、みなさまがたの期待が大きいということは感じておりまして、身が引き締まる思いです」と話した。「5年以上前から上場準備しており、(電子書籍が注目される)この時期の上場になったのはたまたまです」

 会見には2台のiPadを「たまたま」(天谷氏)持参していた。自らそのiPadを操作して、「電子貸本Renta!」のデモを披露した。2年ほど前に始めたサービスで、iPhoneでもパソコンでも携帯電話でも、「一つのIDで、端末によらず閲覧できる。ダウンロードする必要もない利便性がユーザーに受け入れられている」

 iPadなどの新しい端末については、「これまで携帯電話では読んでいただけなかった30〜50代の方にも利用してもらえるようになるのではないか」と期待していた。「デバイス・インディペンデントが私たちの特徴。インターネットにつながる端末なら、どんな端末にでも対応している」と戦略を説明した。

 同社は、富士通の技術者だった天谷氏が1995年、社内ベンチャー制度を利用して設立した。「当時パソコン通信が人気で、紙の本の内容をパソコン通信に出せばもっと読んでもらえるのではないかと考えて『電子書店パピレス』を事業化した。日本で最初の電子書籍販売です」。その後、96年にインターネット、2003年に携帯電話と随時、事業を拡大していった。

photo 「電子貸本Renta!」

 現在、「出版社500社と連携し、月600タイトルの新刊を追加している。取り扱っている電子書籍は累計約18万冊と日本最大級」(天谷氏)だ。小説やノンフィクション、趣味、実用、コミック、ビジネス、教育、写真集など「書籍を総合的に取り扱っているのが特徴だ」(天谷氏)という。携帯電話でのユーザー数は3キャリア合わせて月間約260万人。また、紀伊国屋書店やヤマダ電機など32社に、電子書籍販売のシステムを提供している。

 2010年3月期の売上高は前期比10.8%増の37億6300万円、経常利益は36.3%増の3億9600万円。2011年3月期の売上高は4.0%増の39億100万円、経常利益は12.9%増の4億4700万円を見込んでいる。天谷社長は「この業績見通しには、iPadなどの新端末効果は織り込んでいない」としており、さらに上振れする可能性を示唆していた。

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