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「僕、全然才能ないので」 サイバーエージェント子会社“23歳新卒役員” アプリにかける1年目(1/2 ページ)

» 2010年08月02日 07時00分 公開
[斎藤未来,ITmedia]
photo アプリボット・取締役の卜部宏樹さん

 「僕、全然才能ないので」──サイバーエージェントに新卒で入社して2カ月で、子会社の取締役に抜てきされた卜部(うらべ)宏樹さんは言う。23歳という若さで役員を任されるほどなら、自分に大きな自信を持っていてもおかしくなさそうなものだが──。

 子会社は、今年7月に設立されたアプリボット(東京都渋谷区)。卜部さんは、サイバーエージェントグループで最も若い役員だ。だが自分に特別な能力があるとは思っていないという。同期の社員を見ても、専門的な知識やリーダーシップを自分より持っていると感じる。

 そんな卜部さんの学生時代からの目標は、組織をつくる仕事をすること。1人ができることは小さくても、チームでやれば大きいことができると、これまで信じてきた。役員という肩書きを背負った今も、気持ちは同じだ。

組織つくる真っ最中「休んでいる場合じゃない」

photo アプリボットのオフィスは、東京・渋谷のサイバーエージェントビルに入っている。フロアはサイバーエージェントグループの他社と合同。アプリボットに割り当てられたエリアは、8つの机がまとまった島1つ。今は卜部さんと兼務のエンジニアの2人が座っている

 アプリボットは、アプリケーション開発などスマートフォン関連事業を行う会社だ。サイバーエージェントの既存の事業から離れた専門部隊を子会社として作り、スマートフォン事業に力を入れていく考え。ビジネスモデルの詳細は非公開だが、今年9月には第1弾のアプリを公開する予定だ。

 社名はTwitterのBOTに由来している。「BOTがたくさんの情報を発信するように、自分たちもたくさんのアプリを生み出していきたい。世の中の人々からたくさんフォローしてもらえるような企業になりたい」という思いを込めている。

 社長には、サイバーエージェントの日高裕介専務が就いた。藤田晋社長も取締役を務める。兼務なしでアプリボットでフルタイムで働いているのは卜部さんだけ。肩書きは“社長”ではないものの、社長に負けないくらい「自分が会社に対して責任を持っている」と思って働いている。

 実際に卜部さんは、アプリボットのあらゆる業務に携わっている。事業計画や経営戦略を立てたり、アプリをプロデュースしたり、ユーザーインタフェースを考えるなど「プログラミング以外のすべて」にだ。

 卜部さん自身が人材の採用にもあたっている。Twitterやブログを経由して出会った人に連絡をとり、何か一緒にできることはないかと直接メッセージを送ったこともあるという。

 最近は起きてから寝るまでずっと仕事のことを考える毎日。今はオフの時間もつくらない。「組織がまだ全然つくれていないので、自分が休んでいる場合じゃない」

世界を目指せるチームで0から事業つくりたい

 卜部さんは京都大学出身。高校生までやっていたサッカーに影響を受けて組織づくりをしたいと思うようになった。サッカーには、個人の実力が高いチームでも勝てなかったり、逆に個人に実力がなくても共通の目標を持ったチームなら勝てたりする場面があるという。才能のある人を集めるだけでなく、その人たちが活躍できるように考えてつくったチームなら世界だって目指せると信じている。

 組織をつくるといっても、起業することが必要だと思っていたわけではない。社内のプロジェクトでも組織をつくることはできる。人事でもマネージャーでも、立場は何でも構わないと感じていた。

 まずは社会を見てみないと始まらない、と大学3年生の春に就職活動をスタート。サイバーエージェントを選んだ理由は、一緒に働きたいと思える同期がいたことと、ビジョンに共感したことだ。

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