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» 2011年06月23日 08時00分 UPDATE

わが座右の書:「経営にバイブルなんてない」 サイバーエージェント・藤田社長 (1/2)

成功者は書物とどのように関わり合い生きているのか。新連載の第1回は、サイバーエージェントの藤田晋社長。本は何度も読み返し、さらに自分の言葉でアウトプットすることで、初めて自身の血肉になると説く。

[取材・文/伏見学,ITmedia]

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 子どものころ、将来は作家になろうと思っていましたから、本は昔からたくさん読んでいます。現在読むのは月に5、6冊程度でしょうか。主に寝る前や出張時の移動中に読みます。それ以外の時間だと、そばにあるPCや携帯が邪魔になって集中できません。ゆっくり本を読みたいという願望はあり、意識的に本を読む時間を作るようにしていますが、中毒的にインターネットをチェックしてしまうので、どうしても時間は限られてしまいます。

サイバーエージェントの藤田晋社長。「本を読んでしっかりとした感想をブログなどにまとめるのは大変。でも得るものは大きい」と語る サイバーエージェントの藤田晋社長。「本を読んでしっかりとした感想をブログなどにまとめるのは大変。でも得るものは大きい」と語る

 電子書籍はまだ利用していません。例えば、iPadで電子書籍を読もうとしても、やはりTwitterやブログが気になってしまい落ち着きません。本を読まざるを得ない状態に自分を追い込まないとなかなか集中できないのが現状です。

 本は知人から紹介されたものを読むこともあれば、自分で探して買うこともあります。新刊にはこだわらないし、流行に左右されることもありません。たとえ古くても良い本であれば何度も読み返し、折り目をたくさんつけます。そうすることで、本を咀嚼し、自分のものにすることができるからです。

 自宅の書棚はビジネス書や小説が中心で、定期的にいらない本は処分しているため、ブラッシュアップされたものだけが残っています。ちなみにリビングにも巨大な本棚があるのですが、こちらはインテリアとして漫画だけを並べてあります。

経営は自ら考え決めるもの、バイブルなどない

 僕にはバイブルという本はありません。経営は自分の頭で考えて、自分で決めなくてはいけない。バイブルなんてどこにも存在せず、自ら作っていくものだと思います。本をバイブルにすると、「私はこの本の通り経営しています」と言っているようなものです。

 もっとも、経営の参考にした本はいくつかあります。最近読んだ「MADE IN JAPAN―わが体験的国際戦略」(盛田昭夫著、朝日文庫)もその1冊です。この本は、サイバーエージェントの海外事業を強化すべく、腹をくくって昨年10月に家族を連れて米国に渡ったCOO(最高執行責任者)の西條(晋一氏)から貰ったものです。

 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という言葉に代表されるように、ソニーが最も称賛を浴び、世界的な影響力を持っていた時期に書かれた本で、自信に満ちあふれた内容になっています。ソニーという会社の成り立ちから、事業が育ってきた背景など、ここから日本的経営を学ぶことができます。結果的に、その後、日本的経営が否定され、実力主義・成果主義が叫ばれるようになりましたが、今はまた日本的経営の良さが見直されつつあるように感じます。過去の日本的経営の何が正しくて、何が駄目だったのかということを知り、僕なりに正しく把握する上で参考になります。

 日本的経営の秘けつについて、本書では「人間がすべての原点になる」と述べられています。米国流のビジネスでは、人間関係よりも組織論やビジネスモデルなど、合理的でドライな考え方が強調されますが、日本という狭い社会の中では組織の和や帰属意識によって個々の能力をいかに一つの力とするかが重要なのではと思います。

 サイバーエージェントは21世紀の会社ですが、日本的経営をすごく参考にしています。僕たちが創業した90年代は、合理化や実力主義という風潮が強く、今までのような終身雇用が崩壊したと言われていました。しかし、会社をつくって感じたのは、日本社会には日本的経営が適応するということです。そこで、時代と逆行して過去の日本的経営を学び始めました。戦後のボロボロの時代から日本企業が成長してきた過程というのは、インターネットという成長産業で、若い人たちが中心になっているサイバーエージェントが学ぶべき点は大きいのです。

 そう考え、実際に、6、7年前から大きく人事制度を改革しました。終身雇用を打ち出し、福利厚生も強化しました。長く働く社員を奨励するというメッセージを明確に打ち出しています。その一方で、年功序列は徹底排除するなど、過去の日本的経営と全く同じにするつもりはありません。最後は自分たちの頭で考え、オリジナルとなる「21世紀型の日本的経営」をつくることが大事だと思っています。

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