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» 2011年08月18日 18時09分 UPDATE

「鉄」は無関係。擬人化で盛り上がる上海地下鉄 (1/2)

日本より20年遅れ、鉄道網が急速に広がる中国でも「鉄道擬人化」の風が吹き始めた。しかし、そこには「鉄」の姿が見られなかった。きっかけとなったのは……。

[方静,ITmedia]

 豆乳を常に手にする優しい長男。ポーカーフェースにチェーンソーのクール系次男。上海地下鉄13線の中で最も歴史の長い1号線と2号線を擬人化したオリジナルイラストが中国最大のミニブログサービス「新浪微博(ウェイボー)」で1月に発表され人気を集めている。(早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース 方静)

この記事は早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコースの「ニューズルームJ」の受講生が執筆しています。ニューズルームJは、ブログ「ガ島通信」を執筆するジャーナリストの藤代裕之氏の指導により、日本で初めてインターネットを活用したライティングを学んでいます。


上海地下鉄家族 参上!

photo 上海地下鉄擬人化11線(リニア、13号線除き)左から6、5、4、3、2、1、7、8、9、10、11(双子)号線(作者:シャワーにお湯が出ない)

 車体の形を残さず完全に人間化した描き方は、近年日本でもはやっている萌え擬人化に近い。好評を得たため、設定を補完しながら短編や4コマの不定期連載も始まった。地下鉄の歴史や雑学をキャラクターの人物関係、性格及び好物で表現し、上海語など、地域の特徴満載のディテールも見られる。

 1号線の大好物である豆乳は、上海伝統的な朝ご飯に不可欠。次男の2号線は、空港やハイテク産業開発区を走るため、ポーカーフェースのエリートとして登場。時に使うチェーンソーは、駆け込んできた乗客を挟んだまま発車してしまい、人身事故を起こしたことに由来している。普段はちゃんとしているが、乗車マナーを守らない人に暴走しやすい。

 他に、環状運転で方向音痴とされる4号線や、ラッシュアワーのダイヤ混乱や満員電車で苦しむサラリーマンの苦情を受け、ずっと包帯に包まれたけが人姿の8号線など、既に運行し始めた総計13線が出そろい、一般ユーザーの熱烈な書き込みを得た上に、運営会社・上海メトロにも注目された。

 家族で「兄」と呼ばれる1号線の歴史を回顧した短編では、16年の運行で疲労がたまって、時に故障が起こったりする苦労をどうか理解して欲しいという作者の思いに「兄さんお疲れ!」「毎日兄と一緒だ。兄大好き」とのコメントが殺到。上海メトロも「負傷したのにまだ走れるよと微笑んでくれた兄を見て本当につらいです。でも皆が共にいてくれるからそれぐらいの傷はきっと大丈夫」とコメントした。

作者も読者も「鉄」ではない

 人気作を創り出したのは6人の若い女性。最初のイラストをアップロードした「シャワーにお湯が出ない」さん(中国語表記:洗澡不出热水)は、今年の9月からカナダに留学する予定の20代。友達と地下鉄駅で知り合いを待ちながら話していて、ピンと思いついた。最初のイラストを発表した直後、同じ興味を持つユーザーにネット上で声をかけられて、最終的に大学生5人に社会人1人となった。美大生の1人を除き、残り5人は美術と関係ない専攻や仕事をやっている。

 鉄道趣味で集まってきたのかと思いきや、意外なことに「鉄子」は1人もいなかった。「よく地下鉄を使い、そして地下鉄に乗るのが好きな人たちだけだ」とチャットでのインタビューに即答したシャワーさんは、鉄道よりアニメや漫画に興味があるという。幼いころからセーラームーンなどを模写するためにスケッチブックを何冊も使いきった彼女が、一番好きな作者は「DEATH NOTE」の作画を担当した小畑健。地下鉄擬人化以前にも、飲み物やカナダ各省の擬人化イラストをネット上で発表し、国擬人化アニメ「ヘタリア」の同人誌を手がけたこともある。

 突然巻き起こった地下鉄擬人化ブームに、シャワーさん自身も「びっくりした」。もともと1000人しかいなかったミニブログのフォロワーが、2月に4000、3月に6000、そして今は7000人以上になった。最初のイラストを発表した翌日から、北京、広州、南京などの地下鉄擬人化作品や、擬人化キャラクターのコスプレも次々とネット上で現れた。

 筆者は中国のネットサービスのアンケートを利用して年齢、性別、関心を尋ねた。247人から回答があった。女性が圧倒的に多く、年齢は16〜25歳が特に多い。アニメと鉄道の関係についても聞いてみたところ、アニメ・マンガ好きが圧倒的で70%以上、鉄道ファンはたった7%しかいなかった。残りの2割弱は、両方にも興味を持っている。鉄道擬人化と鉄道ファンとの関係は、意外に薄い。

photo 【アンケート結果】(ネット上で地下鉄擬人化ファンの247人に実施)
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