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中国のネットユーザーもジョブズ(喬布斯)氏追悼

» 2011年10月06日 18時02分 公開
[山谷剛史,ITmedia]
photo ジョブズ氏死去を特集する「太平洋電脳」サイト

 中国でもスティーブ・ジョブズ氏の死去が話題となっている。スティーブ・ジョブズは中国語では「史蒂夫・喬布斯」。短く「喬布斯」で表記されることも。中国のナンバー1検索サイト「百度(Baidu)中国」でこの単語をキーに検索すれば多数のサイトがこのニュースを紹介するのが見えてこよう。

 この日は中国では「国慶節」という、現体制を祝う大型連休のまっただ中であり、各ポータルサイトをはじめとして祝賀ムードを前面に押し出していた。それにもかかわらず、スティーブ・ジョブズ氏の死去を哀悼するニュースは、各ポータルサイトや著名なニュースサイトのトップページの見やすい場所に配置され、また氏の功績をたたえる特集ページが瞬く間にできあがった。個人的には、連休中で中国国内のニュースが少なく編集スタッフも少ないはずなのに、それでも外国人であるジョブズ氏の偉業を称え、コピー記事は少なくオリジナルの記事を書き上げ、中国の著名人からコメントをもらいまとめ上げた努力には頭が下がる。

 ここに中国のポータルサイトのジョブズ氏死去の特設ページを紹介しよう。早くも本当か嘘か、ジョブズ氏の死去の話を大きく扱うことを禁止するという通達が出ているという話も出ているが、今のところはいずれのサイトもあるようだ。

ポータルサイト

photophoto

IT系サイト

 Twitterをインスパイアした複数の微博(ミニブログ)サイトで、次々に哀悼のコメントがつぶやかれている(中国ではTwitterは特別な方法を利用しない限り使えない)。

 著名な微博サービスのひとつ「騰訊微博」では数秒〜数十秒おきに微博利用者による追悼コメントが流れているのが確認できる。また早くも北京のオシャレスポット「三里屯」などにあるApple Storeに関するつぶやきも多数あり、Apple Store前で献花が行われているようだ。これは騰訊(Tencent)社の検索サービス「捜捜」のリアルタイム検索で確認でき、「喬布斯」や「三里屯 献花」など日本語入力で漢字を入力することで検索結果が表示される。

 日本におけるApple認知向上のトリガーはカジュアルなiMacの登場だったように思うが、中国では振り返ればiPodがトリガーだったように思う。もちろん上海や北京などでのDTPの現場ではそれ以前からMacによる作業もあるにはあったが、中国全土から見ればそのようなユーザーは極めてマイナーであった。

 日本ではiPodの登場は「革新的に安くてカジュアルなAppleのポータブルプレーヤー」として迎えられたが、当時既に安価すぎるポータブルプレーヤーが乱立していた中国市場では「ショーケースで飾られた高価なポータブルプレーヤー」として捉えられた。その後iPodからiPhone登場時までは、Apple製品は「持てばステータスを表現できる」ということで若者の支持を得た。持てばモテるiPhone、そんなiPhoneが世界で発売後も中国で未発売だったころは、100万台ともいわれるiPhoneが日本や香港や米国から中国市場に流れた。

 中国人の所得が向上し、iPhoneやiPadは身近になった。Apple Storeもできた。iPhoneやiPodをきっかけにMacBookユーザーもよく見かけるようになった。iPhoneやApple自身の人気ゆえに模倣品はおろか、模倣店まで登場した。だがガジェットマニアはニセモノには目もくれず、本物のiPhoneが発表される度に中国メディアの速報記事を読んで一喜一憂した。だから日本のAppleファンに比べれば、彼らがApple製品に触れた時間は短い。(ジョブズ氏が不在の間だが)「Mac互換機」とか「ColorClassic II」とか、そういったうんちくは彼らは知らない。

 多くの中国人は「美しいモノ作り」よりも「如何に賢く儲けるか」ということを注視するからか、ジョブズ氏は神格化してはいない。昔からの中国メディアの取り上げ方やiPod以降の認知の経緯を見るに、「なんとなくすごいらしいと聞いているので哀悼」という雰囲気ではある。iPhoneを創った創造者というよりもiPhoneを売った会社の経営者として見る人が圧倒的に多い。今後Appleからリリースされる製品のアイディアやコンセプトを見て、ジョブズ氏の生前生後の違いを感じ、ジョブズ氏の存在を再認識するのだろうか。

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