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グリー・KDDIによるDeNA提訴の訴状(一部要約)

» 2011年11月21日 18時21分 公開
[ITmedia]

 グリーとKDDIがディー・エヌ・エー(DeNA)に対し、11月21日に東京地裁に起こした訴訟の訴状(骨子)は以下の通り。

請求の趣旨

1.被告(DeNA)は、原告グリーに対し9億円及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2.被告は、原告KDDIに対し1億5000万円及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3.訴訟費用は被告の負担とする。

GREEのオープン化

 グリーは自社開発ゲームのみを「GREE」で配信していたが、その後オープン化し、ソーシャルアプリプロバイダー(SAP)に対し、GREEを通じてソーシャルゲームの提供を開始させることにした。グリーは2010年6月29日(第1次リリース)、同年8月10日(第2次リリース)、同年9月中旬(第3次リリース)の3段階に分けて、段階的にオープン化を図る計画だった。

 グリーは8月の第2次リリースでのソーシャルゲーム提供を希望するSAPに対し、6月下旬にゲーム提供を依頼し、準備を進めていた。

不利益措置の告知と実行

 被告(DeNA)は同年7月ごろ、「モバゲータウン」(当時)における売り上げ額が多いなど、ソーシャルゲームの提供において有力な事業者であると判断して選定したSAPに対し、GREEを通じて新たにゲームを提供した場合には、モバゲーを通じて提供するゲームのリンクをモバゲーのWebサイトに掲載しないなどの方針を決めた。

 被告はこうした方針に基づき、7月下旬〜8月上旬にかけ、ほぼ連日のように、多数のSAPの代表者や役員らを本社などに個別に呼び出すなどした上、これらの者に対し、GREEを通じてソーシャルゲームを提供する行為を妨害する目的で、不利益措置を次々と告知し出した。すなわち、被告は、もしSAPが第2次リリース以降GREEを通じて新たなゲームを提供した場合、そのSAPは今後「被告との取引ができなくなる」「SAPがモバゲーを通じて提供するゲームのリンクがモバゲーのWebサイトに掲載されなくなる(リンクが外される)」「モバゲーで既に提供している(あるいはこれから提供する予定の)ゲームの広告ができなくなる」「ゲーム紹介がモバゲーのWebサイトに掲載されなくなる」などとSAPに対して伝え、第2次リリース以降のGREEを通じてソーシャルゲームを提供する行為を妨害するための不利益措置を告知した。

 被告から不利益措置の告知を受けた多くのSAPは、8月10日以降、被告が許可したゲームを除いて、GREEを通じてソーシャルゲームの提供をしなかった。そのうちには、GREEを通じて新たにソーシャルゲームを提供するためにゲーム開発をしていたにもかかわらず、被告による不利益措置を恐れてGREEを通じてのゲーム提供を断念したSAPや、当初の提供予定から大幅に遅れてGREEを通じてのゲーム提供を行うSAPがあった。

 被告は10年8月10日以降、GREEへのゲーム提供をしないように要求したSAPのうち、被告の要求に従わずにGREEを通じてゲーム提供を行ったSAPを発見すると、そのSAPがモバゲーを通じて提供しているソーシャルゲームのリンクを、モバゲーのWebサイトにある「イチオシゲーム」「新着ゲーム」「カテゴリ検索」などに掲載しないなどの措置をとった。

 その一方で、SAPがいったんGREEを通じてゲーム提供を行っても、被告から不利益措置を受けたことにより、翻意してGREEを通じてのゲーム提供を中止するに至ったSAPに対しては、被告は、一度は課した不利益措置を取りやめ、削除したリンクを復活させるなどした。

違法行為の継続

 これに対して公正取引委員会は同年12月にDeNAを立ち入り検査し、11年6月には独占禁止法違反(不公正な取引方法)で排除措置命令を出した。命令は8月に確定した。

 公取委の認定では被告は10年12月15日ごろ以降、こうした措置を取りやめ、さらにSAPに対し不利益措置を課すことをしないなどの取締役会決議を11年6月16日にしたことを、グリーに対して通知した。

 しかしながら被告は、10年7月に違法行為を行う以前の現状に回復させることを積極的に行っていない。多くのSAPが同年8月10日の第2次リリースあるいはそれ以降のリリースにおいて、GREEを通じて自社ゲームをユーザーに提供しようとしたところを、被告の違法行為により、SAPらにGREEを通じての提供を断念などさせた。被告はこうした先行行為を犯していながら、排除措置命令が不利益行為を取りやめたと認定した10年12月15日以降も現状を回復させるための十分かつ積極的な措置をとることをせず、依然として多くのSAPはGREEを通じてのソーシャルゲームの提供を再開させていない。

 これに加えて、被告は10年12月15日以降も、取締役会決議があった11年6月16日以降も、モバゲーでゲームを提供しているSAPがGREEでもゲームを提供しようとすると、これを妨害している。

損害額など

 被告は、公取委の排除措置命令の対象期間及びそれ以降、GREEを通じてソーシャルゲームを提供する行為を妨害する目的をもって、組織的かつ計画的に、多数のSAPらに対して不利益措置を加え、あるいは不利益措置を加えることを告知し、GREEを通じてソーシャルゲームを提供することを妨害するなどの不法行為を犯し、その結果、原告らは重大かつ深刻な被害を現在も被っている。

 被告の不法行為によって、10年8月10日からこれまでの間、GREEを通じて配信されるSAPのソーシャルゲームの売り上げが失われ、少なく見積もっても現在までにグリーには9億円の、KDDIには1億5000万円の逸失利益が生じており、両原告の被害額は今後さらに拡大することが強く予想される。

 以上から、民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき、被告はグリーに対して9億円、KDDIに対して1億5000万円と、訴状送達日の翌日から各支払い済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金をそれぞれ支払うことを求める。

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