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ソーシャル雑誌アプリ「Flipboard」に日本語版 「日本の出版社と協力したい」

» 2012年05月16日 10時00分 公開
[ITmedia]

 米Flipboardは5月16日、SNSやニュースサイトの写真や記事を取り込み、雑誌のようなレイアウトで閲覧できるiPad&iPhoneアプリ「Flipboard」(無料)の日本語版をApp Storeで公開した。ユーザーインタフェースを日本語化したほか、日本のニュースサイトの記事を簡単に読めるようにした。


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 日本語版リリースに合わせて来日したFlipboardのマイク・マッキューCEOは、「Flipboardのユーザーは日本が4番目に多い。日本での取り組みは始めたばかりだが、多くの日本の出版社と協力していきたい。Webコンテンツを印刷媒体同様、美しくしたい」と意気込む。近く日本にオフィスを構え、本格的にコンテンツ提携を図っていく考えだ。

世界800万ダウンロード、月間15〜20億フリップ

画像 日本語の「こだわり」という言葉が好きだというマッキューCEO。日本のデザインの美しさを評価しているという

 Flipboardは、TwitterのタイムラインやFacebookウォール、InstagramやFlickrの写真、Google Readerに登録したRSS、ニュースサイト──などネット上のさまざまなメディアから写真やテキスト、リンクを取り込み、雑誌のようなレイアウトで閲覧できるアプリ。タッチパネルを十分に活用し、さまざまな媒体のコンテンツを雑誌のページをめくるような感覚で斜め読みできる。記事のリンクやコメントをSNSに投稿して共有することも可能だ。

 マッキューCEOはシリアルアントレプレナーで、最初に起業した3Dブラウザ技術開発会社Paper Softwareを1996年にNetscapeに売却。99年、音声コミュニケーションネットワークTellme Networksを創業し、07年、Microsoftに8億円で売却した。2010年初頭、元AppleのiPhoneアプリエンジニア、エヴァン・ドール氏とともにFlipboardを設立。同社は従業員55人の企業に成長した。

 Flipboard開発の背景には、「ソーシャルWebの時代、すべてのSNSをカバーできるアプリが欲しい」「雑誌など印刷メディアのように、美しく見やすいデザインでWeb記事を読みたい」という思いがあったとマッキューCEOは言う。iPadの登場で「デジタルでありながら、印刷媒体の美しさとソーシャルの力を組み合わせたものを作れる」と考えた。

 10年7月に公開したiPad版は、iPadのキラーアプリの1つとも評された。昨年12月にはiPhoneアプリをリリース。今年2月時点で世界で合計800万ダウンロードされており、ユーザーの40%が米国以外から利用しているという。同月時点のフリップ数(ページをめくった数)は月間15〜20億。ユーザー数、フリップ数ともに順調に伸びているという。Android版のリリース予定も発表している。

 日本語版では、ユーザーインタフェースを日本語化。レイアウトやフォントも日本語向けに調整を重ねたという。「ニュース」「ビジネス」「テクノロジー」などジャンルごとに、日本のニュースサイトの記事をチェック可能だ。

日本の出版社と協力 まず「日経ビジネスDigital」から

 「わたしは出版社のコンテンツを愛している。Flipboardの成功は、出版社とともにある」――マッキューCEOはこう断言する。

 これまでに、「USA TODAY」「National Geographic」「The Guardian」「Vanity Fair」など世界75以上のパブリッシャーとパートナーシップを締結。各社が納得いく形でコンテンツをFlipboard上に表示できるようにしてきたほか、Flipboard上に全面広告を展開し、広告収益をシェアする取り組みを進めてきた。

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 日本の一部出版社とも協業を始めているという。第1弾として「日経ビジネスDigital」と協力し、記事レイアウトや広告出稿について検討を進めている。今後、さらに多くの出版社と協力していきたいという。日本の広告代理店とパートナーシップを結ぶことも検討しており、来日中に広告代理店とも協議するという。

 出版社がFlipboard上で広告を配信し、その収益の一部をFlipboardとシェアするのがビジネスモデル。雑誌の全面広告のように、ディスプレイ全体を覆う全面広告を配信することができるのが売りだ。「ニュースサイトはナビゲーションバーや広告に押しやられてコンテンツが小さくしか表示できず、読者にとっては不満だし、バナーなどの広告効果も薄い。Flipboardの全面広告なら、印刷媒体の全面広告同様の効果を出せ、読者の満足度も上げられる」とマッキューCEOは自信をみせる。

 パートナーシップを結んでいない出版社や新聞社の記事も、RSSフィードやWebサイトから直接取り込み、Flipboard上で閲覧できるようになっている。マッキューCEOは「著作権は大切」と語り、「RSSフィードから取った見出しをタップすると、Webサイト全体を表示する仕組みにしている。どこまで表示するかは、出版社に同意を取るようにしている」と、コンテンツホルダーに配慮をみせる。

 数カ月後には日本にオフィスを作り、本格的に日本でビジネス展開していく。

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