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「違法ダウンロード刑事罰化」にMIAUが反対声明 「子どもが摘発対象に」

» 2012年06月05日 14時31分 公開
[ITmedia]

 違法にアップロードされた音楽ファイルなどをダウンロードする「違法ダウンロード」に対し刑事罰を導入する著作権法改正案の修正案を自民・公明が提出する見通しになり、インターネットユーザー協会(MIAU)は6月4日、刑事罰化に反対する声明を発表した。「摘発されるのは違法化を理解していない子どもたちだ」と問題点を指摘し、必要な議論も欠いていると批判している。

 違法にアップロードされた音楽ファイルなどを違法と知りながらダウンロードする行為を禁じた、いわゆる「ダウンロード違法化」を盛り込んだ改正著作権法は2010年1月に施行された。この際に罰則規定は見送られたが、「違法ファイルの流通がCD売り上げ減少につながっている」と主張する音楽業界は、「大量に流通している著作権侵害ファイルの総量を減少させるため」(日本レコード協会)などとして刑事罰の導入を強く求めてきた。

 これを受け、自公が「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」(親告罪)を盛り込んだ案を準備。政府が今国会に提出した著作権法改正案の修正案として、6日の衆院文部科学委に議員立法として提出する見通しだ。民主党内ではこれを容認するという報道もあり、行方は予断を許さない状況になっている。

 MIAUは違法ダウンロードの刑事罰化について、「権利者側が違法ダウンロードの主体と見なしているのは主に中高生だが、その約半数はいまだダウンロードが違法になったことを知らない」と日本レコード協会提出の資料を基に指摘。この状態で罰則が導入されれば違法であることを知らない子どもが摘発の対象となり、「子どもに教育を受けるチャンスを与える間もなく刑事罰化へと進むのはあまりにも拙速」としている。

 また(1)ネット上の音楽ファイルや映像ファイルは一見して違法アップロードされたものかどうかが分からない、(2)著作権法を口実にした別件捜査に利用される余地が生まれ、捜査権の乱用を招くおそれがある──という問題点も指摘。文化庁の審議会を通じた有識者・当事者間の議論やパブリックコメント募集といったプロセスを踏まずに、野党の議員立法による修正案で罰則導入を図ることについて「常道を逸脱していると言わざるを得ない」と批判している。

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