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スラムダンクに学ぶ勝ち負けの真髄――カヤック・柳澤社長キーマン、本を語る【仕事が面白くてたまらなくなる3冊】(1/2 ページ)

» 2012年06月27日 11時00分 公開
[取材・文/伏見学,ITmedia]

 IT業界などで活躍する、注目を集めるキーマンに、それぞれテーマに基づいた書籍を紹介してもらう新連載。第1回は、面白法人カヤックの創業者であり、社長を務める柳澤大輔氏。

面白法人カヤック 柳澤大輔社長 面白法人カヤック 柳澤大輔社長

 カヤックは1998年の設立以来、周囲をあっと言わせるユニークなサービスを提供し続けている。例えば、声を録音、投稿できる音声特化型コミュニティーサイト「koebu」や、“うんこ”を使って楽しく算数が学習できるモバイルアプリ「うんこ演算」など、枚挙に暇がない。その原動力としてカヤックをけん引する柳澤氏が「仕事が面白くてたまらなくなる本」を紹介してくれた。

 なお、柳澤氏は、月に20〜30冊の本を読むそうだ。スタイルは「乱読」。自分自身をフロー型だと語る柳澤氏は、読書に関しても「パッと目に付いたフレーズや、引っかかったところが今の自分にとって大切なものだ」と考えている。本の中で覚えていることは1つか2つなので、そのときに必要なものを取り入れるスタイルが好ましいのだという。

「スラムダンク勝利学」

 「スラムダンク」(1990年〜96年に週刊ジャンプで連載された大ヒット漫画)を題材に、勝利とは何かについて書かれた本です。いろいろと読みましたが、マンガの解説本で一番だと思います。

辻秀一著「スラムダンク勝利学」(集英社インターナショナル) 辻秀一著「スラムダンク勝利学」(集英社インターナショナル)

 僕らは中学、高校、学生時代に慣れ親しんだものがマンガで、マンガから人生の教訓を学んでいる世代。カヤックも、マンガをキーワードに経営をしていきたいと考えています。この本は、スポーツがテーマなのですが、仕事もスポーツみたいなものなので、どういう考え方で勝利に向かって働いていくかというのがよく分かります。マンガが題材なので、読めばすっと頭に入ってくる本です。

 スポーツも仕事も、ある一定のルールを基に戦って、皆で勝利するのを目指しています。勝負が面白くなる世界においてどういう心持ちであるべきかを、非常に分かりやすく、丁寧にまとめています。スラムダンク自体が名作ですけど、この本も名作ですよ。

 勝負の中で、勝ちだけに向かっていっても、結果的に自滅することはよくあります。勝つためのプロセスこそが重要で、結果がすべてではない。勝利を目指さないかぎり意味はないのだけど、負けたからといってそれがまったく価値がないわけではありません。勝つために何をしたか、そのプロセスに重きを置くことが最も大切だということが描かれています。

 プロセス重視というのは、カヤックの経営においても実践していることです。その代表例が人事評価です。われわれはチームワークの会社なので、組織のほかのメンバーから認められているかどうか、チームに貢献しているかどうかで給与が決まります。企業では、個々人で目標があって、目標を達成するかによって人事評価が決まるというメカニズムが一般的ですが、カヤックでは目標の達成度を厳密に評価には反映していません。

 目標は立てないといけませんが、達成しようがしまいが評価にはそれほど関係ありません。あくまでプロセスを見て、プロセスに対して皆が成長につながっていくかどうかという部分でしか目標は使っていません。結果がすべてではないということです。

 ただし、それは個人戦の話であって、チーム戦は別です。チームとしては目標数字を達成したかどうかが1つの結果になるわけですから、それは加味して評価していきます。この本は、そうした個人とチームのバランスについて書かれているところが面白いです。

 スラムダンク勝利学は社員にも読むことを勧めています。カヤックでは新入社員に本を20冊ほど推薦図書として配っており、この本はそのうちの1冊です。本を配布する目的は、教育や研修のためです。チームワークを伝えるための本や、仕事の基本的な考え方が身に付く本、広告やクリエイティブに関する本、人間関係やコミュニケーションを円滑にするような本など、5〜6ジャンルほど用意しています。内容は職種によって異なります。

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