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「アプリ開発とアートは似ている」――「俺の校長」20万DL突破 開発歴4カ月の個人が制作(1/2 ページ)

» 2012年12月14日 08時46分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 「もし、朝礼で校長の話が止まらず、生徒がバタバタ貧血で倒れだしたら……」――そんな妄想から生まれたiPhoneアプリ「俺の校長」(無料)が、11月15日の公開から1カ月弱で20万ダウンロードを超えるヒットを飛ばしている。

 ユーザーは、校長の長話のテーマを決め、テキストで入力するだけ。話が長〜いほど高得点だが、退屈すぎると生徒たちがバタバタと貧血で倒れ、点数が下がってしまう。どの話題なら高得点が狙えるのか、校長が変身する隠しキーワードは何か――TwitterやApp Storeのレビューで情報共有も盛り上がっている。


画像画像画像 ユーザーが入力した話題を、校長が朝礼で長話する

画像 話が長いほど、生徒が倒れず残っているほど高得点。校舎の外で聞いている人がいるとボーナスも

 「プレイしていただいた方に感謝の気持ちでいっぱいです」――開発者のSHUJI NAKANISHIさん(34)は今年7月、アプリ開発をゼロから学び、4カ月で「俺の校長」を生み出した。今でも「分からないことだらけで胃がキリキリする」ほどだが、「頑張ればなんとかなる、そう教えてくれたのが俺の校長でもありました」と振り返る。

異業種から一念発起、3作目でヒット

画像 初作品の「Light touch 10」。当初は海外ユーザーがほとんどだった

 以前は、アート作家を目指して絵を勉強したり、会社員としてDTP制作に携わっていたNAKANISHIさん。「自己表現したい」「人に喜んでもらいたい」という思いが強く、「iPhoneアプリなら自己表現しながらユーザーに喜んでもらえ、アート表現に近いことができる」と今年7月、iPhoneとMacBook Airを購入。本やWebサイトで、ゼロからアプリ開発を学び始めた。

 初作品は、8月12日にリリースした「Light touch 10」。点灯するライトを10秒間で何回タッチできるかを競うシンプルなゲームで、海外を中心に2000ほどダウンロードされたという。その後開発した2作は審査が通らず、11月15日に「俺の校長」と、牛丼を食べ終わるまでの時間を測るタイマーアプリ「牛丼スタックタイマー」を公開。俺の校長が初のヒットアプリとなった。

妄想をアプリ化 ユーザーの話題が“宣伝”に

 「もし、朝礼で校長の話が止まらず、生徒がバタバタ貧血で倒れだし、しまいには誰も残らず、猫だけ見てたら……」。俺の校長は、ふくらむそんな妄想を、ゲームの形に落とし込んだアプリだ。当初は、長話が延長する「校長ルーレット」や、校長の話を体育館で聞く「体育館バージョン」なども作ったが、複雑すぎてユーザーの負担になると判断。機能を極限まで削り、丸々作り直したという。


画像画像画像 「校長ルーレット」や体育館バージョン、朝礼前に校長室で気合いを入れるアニメーションなども作ったが、正式版ではすべて削った

画像 上位キーワードをTwitterで共有できる

 あるキーワードを入力すると、校長が燃え上がって「超校長」に変身するなど、特定のワードで画面が大きく変化する“裏技”も仕込んだ。「その昔、ファミコン誌の裏技コーナーや噂だけを頼りに、裏技を見つけて友人に自慢するといったことが、ネット上で起きれば楽しい」。そんな狙いからだ。

 2カ月ほどで開発を終え、11月15日にリリース。「シュールさが独特で、好き嫌いがはっきりするだろう」と考えていたが、想像以上に多くの人に受け入れられ、App Storeのファミリーゲーム部門とアクションゲーム部門でそれぞれ1位を獲得。1カ月足らずで20万ダウンロードを突破した。

 得点が高い順に長話の話題を3つツイートできるTwitter連携機能が口コミ拡大に一役買ったほか、アプリレビューサイトやブログなどにも多数取り上げられて評判が広がった。裏技の情報もApp Storeのレビューやブログなどで盛んに共有され、盛り上がりに貢献。開発時の狙い通りだが、情報伝達のスピードが予想よりもはるかに速かったのは「誤算だった」という。

 今後、ユーザーが入力した話題がまとめサイトなどに集積していけば、ゲームとしてだけでなく、“読み物”としての面白さも演出でき、飽きずに遊び続けてもらえるのではとNAKANISHIさんは期待している。

英語が苦手でも、世界に打って出る

 これまで開発したアプリはすべて、英語版も公開。俺の校長は「The School principal」という名で英語版を出しており、約1割が海外からのダウンロードだ。海外のユーザーから、英語のレビューが投稿されることもある。

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