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「ギャップ萌え」でフォロワー増加中 警視庁初Twitterの中の人「本職」氏に聞く、日々とその思い(3/4 ページ)

» 2013年04月18日 11時00分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「決まりがない中で、このまま続けるのはよくないだろう」。3月4日、本職氏はTwitterで、個人的なツイートを休止すると宣言した。

画像 中止から再開までの経緯をつづった一連のツイート

 「警察広報のスタイルを破る新たな実験でしたが、本職ひとりでは力不足でした」「制約された条件の下で継続する可能性もありましたが、ツイッターを利用するメリットをすべて減殺するような条件の下では、継続する意味を見いだすことができませんでした。フォロワー2万名を目前に姿を消さなければならないことは、非常に残念でなりません」

 ……こんなツイートとともに、本職氏のつぶやきは中断。振り込め詐欺関連情報だけが流れるbotアカウントに戻った。

 だがこの後すぐ、本職氏は再開を決断した。休止のうかがいを立てた際、上司から「ひとりで辛い思いをさせてすまなかった」と言ってもらい、「この人の下でならまだやれる」と思ったこと。辞めると宣言したツイートに対して、惜しむリプライが大量に寄せられ、メールやハガキでも再開を望む声が寄せられたこと。この2つが、背中を押したという。

 「やるしかないなと思った。これだけ応援していただける方がいるなら、ルールを変えればいいだろうと。ルールが全くない状態だったが、なければ、作ればいい」


画像 新ポリシーはWebで公開している

 上司と相談し、警視副総監の決裁を得てTwitterの運用ポリシーを修正。再開に向けた検討会で上司は、「Twitterは公のアカウントであっても担当者個人のメディアだと思っている。ただし、担当者個人に責任は負わせない。担当者が代わって後を継ぐ人がいなければやめてしまってもいい」と発言してくれたという。

 新ポリシーには、「担当者の発言は、警視庁としての公式見解、方針等を示すものではなく、担当者の日常における経験、感想等を述べるものである」と明記し、3月8日に公開。つぶやきも再開した。休止からポリシー修正、ツイート再開までわずか4日間という「ありえない速さ」。これを実現できたのは、「上司が腹のすわった方で、決定が早かった」おかげだという。

「え? そんなことやっていいの?」を実現したい

 再開直後の3月14日。温めていた企画を発動した。2万2222フォロワー達成記念の特別企画。「テワタサナイーヌ」という謎のキャラクターが、副総監に突撃インタビューするというものだ。

画像 警視副総監室に向かうテワタサナイーヌ

 テワタサナイーヌは、女の子のキャラクターに犬の耳を付け、ピンク色の帽子をかぶったシュールな“ケモノ娘”。企画では、スーツを来た女性がテワタサナイーヌのお面をかぶるといういでたちで、総監室にインタビューに行く様子を写真とともにリポートした。

 テワタサナイーヌは、本職氏が以前、葛飾署に勤務していた際に考えていたキャラクターだ。同署で本職氏は、振り込め詐欺撲滅のために戦う謎のヒーロー「防犯戦隊フリコマン」を企画。“戦隊もの”参入は、全国の警察でも初だった。

 本職氏は「誰もやっていないことをやる方が好き」だという。警察やお役所には、「前例がないことはやらない」というイメージが強いが、「『前例がない』は、やらない判断をするために使いやすい方便」とみており、自身は「3つのキカク」が好きだと話す。

 「“キカク”はいろんな漢字で書ける。私は、“奇画”“鬼画”“危画”が好き。そう来ましたか、という奇妙な『奇画』、そこまでやりますか、という『鬼画』、そんなことやっていいんですか、という危険な『危画』。その方向で、ずっとやってきた」

 Twitterを使った振り込め詐欺新名称の募集も、前例のない「キカク」だった。

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