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変わる「中国的幸福論」 「2ちゃんねらー」「干物女」的な「ディャオスー」現る(1/3 ページ)

» 2013年04月22日 11時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

 中国で経済が失速していることは、新聞でもよく言われてきている。人件費も必要以上に上昇することで企業経営が難しくなり、中国株でも不動産投資でも儲けることは一層難しくなってきた。また花形職の公務員においても、脱腐敗の声が高まっていて、あまり表だってぜいたく三昧なことはやりにくくなっている。特に工場が集中する広東省では、工場が続々と閉鎖したことで周辺のショッピングセンターに閑古鳥がなくという連鎖反応が起きていて、不景気を感じるところだ。

 また目に見えて環境も悪化している。北京大学とグリーンピースが共同で発表した、「PM2.5」の健康への危険と経済損失に関する調査レポートによれば、2012年の1年間にPM2.5が原因で計8571人が死亡したという(北京・上海・広州・西安でそれぞれ2589人、3317人、1926人、739人)。各都市のPM2.5濃度が分かるWebサイトやアプリがリリースされ多くの人に使われるようになったが、沿岸部だけでなく、中国人の間で空気がいいと評されてきた内陸部の雲南省昆明市も「本日の中国空気汚染都市ランキング」にランクインするなど、どこにいようと大気汚染と向き合わなくてはならなくなった。

 あまつさえ新型インフルエンザが流行。この新型インフルエンザもかつてのSARS同様に情報を隠ぺいしていたのではないかと現地メディア「南方都市報」は報じている。インフルエンザの予防には換気が効くとはよく言われるが、窓を開ければ大気汚染、窓を閉めればインフルエンザと、のっぴきならない状況になっている。

photo NASAが公開した1月14日の北京上空。下半分の白い部分は雲だが、半透明の部分は大気汚染によるもので、北京の街はうっすらと見える程度

幸せって何ですか? 「GDPの高さは直結しない」というムード

 ネット論壇では「金持ちを目指した結果、環境は悪くなり、生活が苦しくなっている」というコメントが、ニュースの感想掲示板や「微博」(ウェイボ:中国版Twitterとも言われるマイクロブログ)で書かれるこのご時世。中国政府や中国の、変えられず変えようのない現状に対し愚痴るコメントも数年前に比べて目立つようになってきた。こうした中、政府当局が「幸せの定義」の路線修正を行おうとしているのではないか、と思える動きが続々と出てきている。

 昨年10月の中秋節・国慶節に、権威ある国営テレビ局「中央電視台」が中国全土の庶民に「あなたは幸せですか?」「幸せとはなんですか?」とインタビューするニュース番組の特集を放映し、大きな反響を呼んだ。今年に入っても、8億のアクティブユーザーを抱える大手ポータルサイト「騰訊」(Tensent)が多数のニュースサイトと連携し、中国ネットユーザーに幸せについて再考してもらう「中国幸福地図」という特集ページを公開した。

 大手ポータルサイト「網易」(NetEase)は「GDP(国内総生産)の高さが幸せに直結するわけではない」という記事を載せ、万を超える感想コメントが書き込まれた。中国政府関係者や地方政府関係者は「あなたは幸せですか」の番組以降、しばしば「GDPの追及が幸せに直結するわけではない」というコメントを出している。

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