「ソフトバンクがブランド製品なら、ウィルコムはLCC(ローコストキャリア)だ」――ウィルコムの宮内謙社長は7月4日、更生手続終結後初の新製品発表会を開き、親会社・ソフトバンクとの差別化についてこう説明した。新サービスとして、月額1980円からのデータ定額制や、他社端末を「だれとでも定額」化できるPHSアダプターなどを発表。「ローコストで価値あるサービスを提供する」と意気込む。
同社は7月1日に更生手続きを完了し、ソフトバンクの完全子会社となった。宮内社長によると、「再生の要因は料金満足度」だ。10年12月にスタートした月額980円の通話定額制「だれとでも定額」で契約者数が右肩上がりに伸び、同年末時点で378万件まで落ち込んでいた契約者数が直近で549万件(13年6月末時点)にまで伸長。夏に向けて新たに発表したサービスも低価格を意識し、“ローコストキャリア”としてのウィルコムを強く打ち出していく。
「支払いがガラケーと変わらないスマホを出そう」。7月18日にスタートするパケット定額プラン「ウィルコムプランLite」はそんな意図で企画した、月額2980円で1Gバイトまでの通信が可能なプランだ(1Gバイトを超えると通信速度が最大128Kbpsに制限)。通信料の高さからスマートフォンへの乗り換えをためらっているフィーチャーフォンユーザーを狙ったもので、基本料、Web接続料を合計した月額利用料(通話料除く)は4270円に抑えられる。
6カ月間限定でパケット定額料が月額1980円になるキャンペーンを実施。低価格に提供することによって誰でもスマートフォンを楽しめる「だれスマ」として打ち出し、テレビCMなどで大々的にプロモーションしてく。
「スマホ戦国時代に参戦したい」――ウィルコムプランLiteに対応したスマートフォン新端末として、(1)PHS通話とSoftBank 4G通信に対応した「DIGNO DUAL 2」(WX10K、京セラ製、7月18日発売)、(2)PHS/3Gの通話・データ通信に対応した「AQUOS PHONE es」(WX04SH、シャープ製、9月中旬発売)、(3)SoftBank 4G通信に対応したファーウェイ・ジャパン製「STREAM」(201HW、9月上旬発売)をラインアップした。
他社のスマホユーザーにも低価格で攻勢をかける。他社のAndroidスマートフォンの音声通話をウィルコム回線にできるPHSアダプター「だれとでも定額パス」を7月下旬に発売。端末の月額利用料490円に加え、月額980円の「だれとでも定額」に加入すれば、他社スマートフォンにも通話定額を導入できる端末だ。「音声通話をよく使う人は月額5000〜6000円使うこともある。結構なニーズがあると踏んでいる」(宮内社長)
「迷惑電話チェッカー」という変わり種端末も発表した。自宅の固定電話に接続する端末で、着信があると、振り込め詐欺など迷惑行為に利用されたことがある番号のデータベースと着信番号を照合。迷惑電話の可能性があるかを光や音声で知らせる。迷惑電話の番号を通報・共有する機能もあり、ユーザーが利用するほどデータベースが充実する仕組みだ。専用の料金プラン(基本使用料月額210円+オプション料月額490円)で提供する。
低価格を売りに攻勢をかける同社。ARPU(契約者1人当たりの収入)は「非常に低い」と宮内社長は認めるが、「ARPUが低くても健全に利益を出せるローコスト経営が確立できた」と胸を張る。
親会社・ソフトバンクのサービスや端末との食い合いは「若干ある」ものの、「ソフトバンクはブランド製品、ウィルコムはLCC製品」という形ですみ分ける方針だ。
この3月からはウィルコムの販売店・ウィルコムプラザでソフトバンクのiPhone 4Sを発売するなど、販売面での協力も試しているが、「正直言って、iPhone 4Sは大して売れなかった」と苦笑。「販売面ではいろんなテストをやっている。全国のウィルコムプラザを活用してシナジーを出すための販売のトライアルはいろいろできると思っている」
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