ITmedia NEWS > ネットの話題 >

LINEは世界一になるか──多様なアジア市場を俯瞰する(1/2 ページ)

» 2013年11月01日 09時30分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

 ユーザー数が全世界で2億7000万を抱えるLINEが東証に上場する方針が報じられている。LINEに問い合わせると「経営戦略上、様々な選択肢を持っておりますが、現段階で何も決まったことはありません」という。

photo タイ・バンコクのLINEユーザー

 LINEは日本国内でも利用者が多いのはもちろん、海外でも多くの人に受け入れられている。アジアではタイで1800万人超、台湾で1700万人超(全人口の半数を超える)、インドネシアで1400万人超(それぞれ10月1日時点)、インドで1000万人超(10月5日時点)となっているという。LINEは特に成長著しい地域として、インド・ロシア・ブラジルを挙げている。

 LINEのようなメッセンジャーアプリは、世界中で受け入れられており、LINEだけではなく数多くがしのぎを削る。LINEより早くに登場した有名どころでは、この手のメッセージングアプリの先駆けである「WhatsAPP」(3億5000万ユーザー。リリースは早いが今夏ボイスメッセージング機能を搭載した)、韓国発のKakao Talk(1億ユーザー超)や、中国発のWeChat(中国名は微信。6億ユーザーを抱えるという噂も)があり、ほかにもBlackBerry専用のBBMというメッセンジャーや、Talkbox、Viber、Tangoといったメッセンジャーの利用者も増えつつある。

 現在もっともインターネット利用者が多いのがアジアだ。人口約43億人のうち10億人超がインターネットを利用している。アジアのネット利用者の絶対数は多く、それでいてインターネット利用率はまだ4分の1程度にとどまっており、まだまだ成長余地は大きい。筆者自身アジアのインターネット事情をチェックしていることから、アジア市場でのメッセージングアプリのゆくえについて考えていきたい。

中国で6億人?が使う「WeChat」

 アジアといっても広すぎるので、もう少し分類すると、まずネット鎖国をしている中国でのインターネット利用率は4割。少ないようだが、数字でいうと6億人に上る。

 中国市場でリードするWeChat(微信)をリリースする騰訊(Tencent)は中国屈指のネット企業で、同社のチャットサービス「QQ」のアカウント数は10億を優に超える。つまり1人2アカウント以上持つことが普通なのだが、彼らを同じアカウントで利用できるWeChatに誘導している。QQでのつながりがWechatに持ち越せることもあり、多くの中国人がWechatを選んでいる。

photo 日本語版もあるWeChat

 当初こそICQにそっくりだったQQがどんどん機能を拡張していったように、WeChatもビデオメッセージやグループチャットなどを加えて最も多機能化している。周囲のWechat利用者とランダムにつなぐ機能は、海外在住の中国人から「同胞とつながりやすい」と評価が高い。またFacebookなどで出会った人を誰でも登録しよういう人が多いインドやベトナムでもこの機能は好評だ。騰訊は20億ドルをWeChatなどの海外進出向けに投資すると先日発表しており、プロモーション活動はますます目につくことになるだろう。

 LINEは中国では、騰訊と競合する「奇虎360」が運営している。ただ、最近はあまり現地のITニュースではLINEを名前を聞くことがない状況だ。LINEによれば「中国本土のサービス展開については慎重に判断し展開しながらではありますが、順調にユーザー数を伸ばしている」という。中国国内でもWeChatに対抗する「易信」「飛信」という類似サービスがシェアを獲得しようとしている。

有望な東南アジア

photophoto マレーシアでラマダンの時期に発行されたLINEキャラクターのラマダンスタンプ (C) LINE Corporation

 東南アジアのネット使用率は、7割を超えるシンガポール、6割超のマレーシアが高く、タイ、ベトナムがそれに続き4割程度。3割超のフィリピン、2割超のインドネシアはこれから伸びていくだろう。人口が2億4000万人と多く、日本からも有望視されているインドネシアは、フィーチャーフォン(従来型携帯電話)とBlackberryが普及しているが、そんな中でAndroidが普及しつつある。今後本格的にメッセージングアプリが普及していく。中国に並ぶ人口大国のインド(12億人超)では今夏、インターネット利用者が日本を超えた。

 国の人口と別に考えたいのが、民族の人口だ。日本ではあまり実感がないが、アジア諸国(特にインド)では家族や親族の誰かしらが国を越えて出稼ぎに行くのが珍しくない。彼らにとって、いかに安価に母国の親族や友人などと連絡が取れるかというのは死活問題となる。マレーシアやシンガポールなどの多民族国家では、深いコミュニケーションのためにそれぞれの民族同士でネット環境が築かれている。国の人口ではなく、同じ民族で計算したほうがいい。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.