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新星爆発の瞬間、初観測 ISS搭載のX線監視装置「MAXI」が発見

» 2013年11月14日 19時09分 公開
[ITmedia]

 理化学研究所(理研)は11月14日、新星爆発の瞬間を観測することに初めて成功したと発表した。国際宇宙ステーション(ISS)に搭載した全天X線監視装置「MAXI」(マキシ)が、22万光年離れた位置の「火の玉」を検出。新星爆発の理論に修正を迫る観測結果が得られたという。

photo 爆発の瞬間(矢印)を捉えたMAXIの撮像画像=理研のニュースリリースより

 観測したのは、天の川銀河の伴銀河の1つである小マゼラン雲の東端。MAXIの研究グループは2011年11月11日、ここに極めて明るい軟X線を放射する天体を発見し、「MAXI J0158-744」と名付けた。同天体は大質量星(Be型)と「白色矮星」との連星系で、軟X線閃光の明るさや温度、増光速度などを計算した結果から、白色矮星で起きた新星爆発の「火の玉フェイズ」を観測したと結論した。

 活動を終えつつある恒星の姿である白色矮星と別の恒星との連星系では、主星からの水素ガスが白色矮星の表面にたまり続け、これが白色矮星の強い表面重力で高温・高圧の状態となることで爆発的な核融合反応が起こる。これが新星爆発で、その初期段階には紫外線や軟X線の閃光が放出されることが理論的に予想されていた。これを「火の玉フェイズ」と呼ぶが、起きる頻度が少なく、軟X線に感度が高い全天監視装置がなかったため、これまで観測されたことはなかったという。

photo MAXI J0158-744の想像図。ガス円盤を伴う大質量星と白色矮星の連星系=理研のニュースリリースより

 MAXIは理研と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同開発した全天X線監視装置として、ISSの日本実験棟「きぼう」の船外実験プラットフォームに搭載されている。ISSが地球の周囲を約92分で1周するのを利用し、同じ周期で全天を監視しており、さまざまなX線源を発見した実績がある。

 MAXI J0158-744の軟X線閃光の明るさは、通常の新星爆発の約100倍に達していた。またネオン輝線が検出されたことから、この星が酸素とネオンで構成された大質量の白色矮星であることが示されたという。これらは既存の新星爆発理論では説明できず、理論の書き換えが必要になるとしている。

 成果は米専門誌「Astrophysical Journal」(12月1日号)に掲載されるのに先立ち、オンライン版で近く公開される。

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