一方、継続調査が必要とした問題点は4点ある。そのうちの1つは「脾臓の造血系細胞から作成したSTAP細胞」としてNature論文に掲載されていた画像が、小保方氏が早稲田大学に提出した博士論文に掲載された画像と酷似していた問題だ。調査委は両方の画像について、「われわれが見る限り、同じものである」と認めた。
「脾臓の造血系細胞から作成したSTAP細胞」の画像については、調査の早い段階で小保方・笹井両氏から「骨髄由来のSTAP細胞の画像を間違って掲載してしまったので差し替えたい」との申し出があり、調査委は差し替え用の画像を受け取っているという。取り違えた理由は、脾臓と骨髄をともに「hemato」(hematopoietic)とラベリングしていたためと説明。ただ、画像が早大の博士論文に掲載した画像と同じとの説明はなかったという。
また、Nature論文に掲載したSTAP細胞画像は「酸処理で作成した」と説明していたが、博士論文では、細いピペットを通過させるという機械的な刺激で作ったSTAP細胞(当時は「STAP細胞」という名称はなく、「スフェア」と呼ばれていた)であり、作成方法は異なっていた。
調査委はこうした画像の取り違えは不自然と見て、引き続き調査する。
論文1「Figure 1i」の電気泳動の画像についても、3番目のレーンのコントラストがほかの画像と明らかに異なっており、画像を切り貼りしているのではという指摘がある。
小保方氏は調査委に対し「画像を切り貼りした」と説明。3番目のレーンのリンパ球バンドが薄かったため、電気泳動の時間が異なる別のジェルで流したレーンを切り貼りして挿入し、電気泳動の時間を合わせるために縦方向に引き延ばしたと説明したという。
調査委が小保方氏の説明通りにやってみたところ、小保方氏が作成した画像からは少しずれたという。ずれについて小保方氏に尋ねると「自分でも分からない」と回答。調査委は引き続き調査している。
小保方氏は、電気泳動画像の切り貼りについて「やってはいけないことだという認識がなかった、申し訳ありません」と話していたという。「切り貼りに抵抗がないのか、倫理観を学ぶ機会がなかったのか……」(石井氏)
論文1「Method」の核型解析に関する記載で、他人の論文をほぼ丸ごとコピーした疑いのある部分について、調査委は「コピーであることが間違いないと確認した」という。小保方氏は「自分が書いた」としており、核型解析について詳しい文献を参考にしたが、引用の記載を忘れ、文章をどこから取ってきたかも「よく覚えていない」と話したという。
この文章の前半は小保方氏による実験、後半は若山研スタッフによる実験について説明しているが、後半の実験は記載内容とは異なっていた。若山氏は「小保方氏は実験の方法をよく把握しておらず、思い込んで書いたのだろう」と推測。調査委はこれらの問題についても調査を続ける。
また、同じ「Methond」の「Bisulphite sequencing」にも他論文と似た記述があったが、「こういった実験では通常よく使う方法で、誰が書いてもほぼ同じ文章になる」(石井氏)ため、「剽窃や盗作には当たらないと判断した」としている。
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